卑屈男子のバレンタイン【ショートショート】
「まいったなー、こんなに貰っちゃったよーー」
ケラケラとした笑い声。その声にイライラとしてくる。思えば朝から女子どもは華やかな紙袋を持参しているし、男子どももどこかそわそわしている。そう、今日はバレンタイン。みんなそんなにチョコ欲しいんですか?チョコ好きなんですか?? 元々の起源は迫害化で殉教した人を祀る日なんじゃないの??? みんなお菓子会社にハメられちゃって…。だいたい、そこの君。たくさん貰っても全部義理でしょ?ひとつでも本命あるの??ホントは仕込みで自分で用意したんじゃないの???まぁ、僕には義理も本命もないけどね。…いや、まだ可能性はあるかも。帰るとしよう。
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まぁ、廊下歩いていても誰もくれないね。くれないどころか、寄ってもこないね。義理をくれるような女子はいないし、くれるならきっと本命!恥ずかしがり屋さんなら仕方ない。きっと下駄箱だ!よし開けてみよう…
…、見慣れたへたれたスニーカーしか入ってないね。まぁさ、こんな古典的なとこには入れないよね。でも校門出るまでが勝負!
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うん、誰もくれないね。くれないどころか誰も寄ってこないね。男女ペア、男子同士、女子同士みんな楽しげに帰ってくね。いや、僕だって友達くらいはいるけど、今日に限ってみんな用事あるって…。まさか、裏切りじゃないよな…。刹那、後ろからバタバタと駆け寄る音、そして
「す、す、すいません…」
振り返るとぜー、はぁー、と息を切らした女子が立っていた。もしかして?
「あのー…」
高鳴る鼓動、張り裂けそう胸…、もしやこれは…
「これ、落としましたよ?」
あ…、ハンカチがない。いや、そもそもこの絵柄は少し恥ずかしいのでは…、み、みられたよね…。
「あ、や、これ僕のかなぁ?」
「落とすところみましたから、あなたのでしょ?」
「あー、やー、そうだったありがとう」
引きちぎるように奪い取ると下を向いて先を急いだ。
…これじゃ、僕が殉教者だ…
【了】
【女子編】
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