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リブアーチ型石橋に関する各種記録や資料及び史料より得られた文献1)の調査結果を基に、まだ解明が不十分な点はあるものの、石橋の技術的な評価、石橋の建設に関する評価及び石橋 の産業に対する寄与等を考察し、以下のようにまとめた。


石橋の技術的な評価
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掛橋の石橋の技術的な特徴は、従来の石橋形式である直方体の溶結凝灰岩等の石材を積み上 げたブロック型石橋でなく、花崗岩を用いたリブアーチ型石橋が江戸時代末期に架設されてい たことである。石橋の概要は、橋長 7.6m、スパン 6.7m、ライズ約 1.4m、幅員は橋の中央部 で1.8m、両端部で1.5mと多少狭くなっている。

ライズ/スパン比は約0.2で、部材に作用する 軸力が大きくなる扁平に近いアーチ形状である。アーチリブは、幅方向に 5本の石材を橋軸方向に軸圧縮力が作用するように並べている。リブ部材の断面寸法 は計測していないが、1辺25~30 ㎝、長さが約150 ㎝(約5尺)の直方体である。そして、橋軸 方向に5分割された計25本の花崗岩の石材で構成され、アーチリブ材と路面の間に川原石の 壁石で野積みされている。路面の欄干に相当する両側部分には、柱状花崗岩を一列に配置して いる。つまり、簡素であるが路面の荷重がアーチ軸力に作用する構造となっており、他に類を 見ない石橋である。

本石橋の構造形式は、リブアーチ起拱石を直接岩盤に軸力を作用させて支える形式で、アー チリブ材と路面の間を低く抑え、その間に壁石を有している。ブロック型石橋と比較した場合、 直方体の石材を積み上げてアーチ起拱部を構築する必要がなく、アーチ輪石や壁石の石材量及 び中詰材を大幅に減らせて軽量化でき、かつ石橋の路面高を高くすることが可能となる。特に、 河川上に石橋を架設する場合、ブロック型アーチ形式ではアーチ起拱石を設置する部分の工事 が必要でかつ壁石部分の面積が大きくなる。よって、河川の流水を阻害する場合が多く、洪水 時に流水力により輪石が崩壊し、石橋の崩壊に至ることもしばしばある。本石橋の架設位置は、 遠賀川の上流部であるため降水時には急流となり水位も上昇する場所である。路面高さもかな り高い場所であるが、左岸側の岩盤は必ずしも強固でなく、カーブして流水の影響を受けやす い場所となっている。このような架設環境で、軸力で支える構造のリブアーチ型形式にし、こ の軸力に耐える圧縮強度を有する花崗岩を用いることで、石材量を大幅に減らし石橋を軽量化 していることは非常に理にかなっており、かつ現在まで石橋が存続できていることにより、ア ーチリブ型構造の特筆すべき特徴が表れている。

熊本大学名誉教授 山尾 敏孝氏レポートより抜粋
※現在この橋は見学できません。

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