見出し画像

空気はじぶん【Tokyo, Japan】

真夏日だった日の6月の夜は蒸し暑い。クーラーをつけるほど、ではないので窓を開ける。

「東京の空気はよどんでるよね」田舎から出てきた私は、最初そう思った。緑が少ないところに住んでいるから。車の排気ガスのせい。

そんな物質的なものもそうだけど、いろんな人の思いが、笑いが、怒りが、さみしさが、感情が交差するこの都会の複雑さが生み出す空気なののかもしれない。

アメリカのガイドブックを開く。カリフォルニアから出発して、ニューヨークまで、25日間、スケジュールは自由だ。決まっているのはスタートとゴールだけ。

どこに立ち寄ろうか。迷う。ベッドに横たわって「どうしようかなー」と右と左にごろ、ごろする。

「なんか楽しいな」

そう思った瞬間、冷たい風が窓から吹き込んできた。暑い部屋が一瞬だけど、涼しくなる。東京の風も捨てたものじゃない。

「東京の空気はよどんでいるよね」と思っていた自分がよどんでいたのかな。

アメリカではどんな空気が吸えるだろう。きっと、細胞の隅まで酸素をいきわたらせられるような気がする。

そしてまた、ガイドブックのページをめくった。


おもしろかったな、役に立ったなと思われたら投げ銭をいただけると小躍りして喜びます。いただいたサポートは、本を買うお金などに使わせていただきます!