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映画、演劇、書籍(文学)等、文化全般にわたるレビューを書いています。ランダムにマガジンにまとめてみました。
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2022年8月の記事一覧

チャトウィン『パタゴニア』(芹沢真理子訳)池澤夏樹個人編集 世界文学全集 Ⅱ-08レビュー

チャトウィン『パタゴニア』(芹沢真理子訳)池澤夏樹個人編集 世界文学全集 Ⅱ-08レビュー

岩波ホールの閉館上映作品、ヴェルナー・ヘルツォーク監督・脚本『歩いて見た世界 ブルース・チャトウィンの足跡』鑑賞後、急ぎ購入して通読。同巻には、カルロス・フェンテスの『老いぼれリンゴ』(安藤哲行訳)も併載されているが、まずはチャトウィンの代表作についてのレビュー。
書名や、同書を著したチャトウィンが愛用していたことである種のステイタスを帯びていた「モレスキン」というブランド名はあまりに名高く、関連

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司馬遼太郎『三浦半島記 街道をゆく42』レビュー

司馬遼太郎『三浦半島記 街道をゆく42』レビュー

司馬遼太郎『街道をゆく』の第42巻『三浦半島記』を再読,読了。先週放送された岡田准一の『新 街道をゆく』(NHK BS)を観て、思うところあって初出以来26ぶりに手に取った。あらためて言うまでもないことながら、練達の司馬遼節にうっとりとして、かつ、博覧強記と称してもまるで追いつかない、そのあまりの見識の奥深さ,幅広さに歎息するばかりの読書時間となった。
最終43巻の「濃尾参州記」は、氏の逝去により

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高瀬隼子「おいしいごはんが食べられますように」レビュー

高瀬隼子「おいしいごはんが食べられますように」レビュー

今期芥川賞、高瀬隼子「おいしいごはんが食べられますように」読了。受賞後に東京新聞に掲載された寄稿が軽快な筆致だったので、少し期待して読んだが、描かれている、山田詠美言うところの「猛禽」たる女性の機微に興味をもてず、ある会社の一部署での人間関係と、その中にあっての三角関係とを通しての時代相の一端にも刺激,喚起されるものなく、残念な思いでの通読となった。文章の安定感は認めるが、語り手の揺れ具合に馴染め

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