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初の著書「おうちでできる子どもの国語力の伸ばし方」刊行にあたっての紆余曲折と想いの丈をすべて綴ります

10月8日にかんき出版より拙著「おうちでできる子どもの国語力の伸ばし方」が刊行されます。

本書について、出版に至る経緯や、どこをどんな考えで書いたのか、読んでほしいポイント、編集の方にワガママを言って入れてもらった内容、そしてボツ企画など、想いの丈を余さず語ります。

かなり長い(16,000字)ですので、読みたいところだけ読んでください笑

本の内容だけを見たい方は、前半の『僕が鬱一歩手前に陥った話』は、すっ飛ばして【本題】から読むのをお勧めします。

世の中には国語に関するたくさんの素晴らしい本があって、「それを実践できれば、使いこなせれば、すごく力が付く」と思わせてくれる『ことば辞典』や『読解法』は書店の棚にも多く並んでいます。

でも、一番の問題は保護者のところでその本が止まってしまい、どう取り組むか、に苦心することです。

本書ではそこの「どうやって子どもに“ことば”や“国語”を手渡すか」に力を入れて書きました。音読にしても、読書にしても、日記にしても、具体的な実践方法から、声かけの仕方、おすすめの参考書籍などもご紹介しています。

色々な方の協力をいただきながら、「言葉を介した親子の素敵な時間」を生み出す本が出来たと自負しております。

お手に取っていただけますと幸いです!


出版までの道のり

この本が世に出るまでには、山あり谷あり、波乱万丈で、ドラマチック?な、いきさつがありました。

今から遡ること3年。

2021年に出版を目指して書いていた企画があり、大手出版社の方にご興味をいただいて原稿を進めていました。

最終的には「ボツ」になってしまったものが、本書のベースです(詳しく書けませんが、なぜダメだったのか経緯をちょっと書きます)。

原稿がボツになった話

その企画はコロナ禍で「おうち学習」が注目されている中、おうちで「ことばの環境」を整えていくことが国語力を伸ばします、という内容でした。

よし、と腕まくりをし、深夜や早朝に原稿を書き進め、メールで途中経過などを報告したりしていました。塾の仕事も大変な時期でしたので、こちらの原稿提出が遅くなったのもありますが、「国語力アップにつながった具体例をたくさん盛り込んで」というところがうまく表現できませんでした。

それ以降も原稿を提出していくのですが、メールのレスポンスが遅く、あまり興味を持たれていないのでは……という心配はありましたが、信じて最後まで原稿を書き上げました。

原稿提出後にzoomで言われたこと。

「『これをやったら国語力(点数&偏差値)がグンと上がって、希望する学校への合格を果たしました』というサクセスストーリーを目に見える形にしてほしい」

某編集者

そんな簡単な方法は存在しないし、今どきそんな安いサクセスストーリーに乗っかる読者はいるのか、という疑問が拭えず、最後の最後までやり取りがチグハグしていて結果的に頓挫しました。

「目に見える果実(成果)を見せないと本は売れない」と言われて、そういうものなのだろうと思いつつも、嘘や創作は嫌だし、「ボヤッとしたこと」しか書けなかったからなのでしょう。

一介の国語の先生が言うことよりも本を作るプロが言うのですから、きっと真理なのだと思います。私の力不足と認識不足でした。

そんなわけで、長い時間をかけて書いた原稿は、残念ながらお蔵入りとなりました。

滝本さんのお言葉

“お蔵入り”と言いながら諦めが悪い僕は、友人の敏腕編集者であるA-works滝本洋平さんにも話をうかがうことに。優しい滝本さんは、お忙しい中、原稿を読んでくれました。

「内容は面白いけど、真実味がないというか、『で、どうなるの?』というところが見えてこないですね」

滝本さん

ズバッ。
ぐさり。

やはりそうなのか。
プロからはそう見えるのか。

信頼する滝本さんの一言は重く、「某編集者さん、ごめんなさい。僕が間違ってました」と出版を諦めたのが2022年の春でした。

色々なことへの自信も失い、コロナ禍での激務もあって、鬱一歩手前に陥っていたのがこの時期です。

連載したnoteが好評

しばらく経って「先生、家でラジオ聞いてたら語彙力が伸びた気がします」「毎日音読するの、やっぱり大事ですね。読むのが速くなりました」など保護者から立て続けに報告を受けました。

「他に家で出来ることは、何かないですか?」と。

一度は仕舞い込んだ企画ではありましたが、保護者の言葉に勇気づけられ、お蔵から取り出して「おうちでのことば環境」について、バラだったら読む気になるかな? と思い、2023年5月に連載形式でnoteで紹介することに。

すると、有料だったにも関わらず、友人たちの力強い拡散もあって、noteのマガジンがあっという間に50部ほど販売できました。

大した数ではないかもしれませんが、コンテンツとしてそれなりに興味と対価をいただき、原稿を供養することができました。良かった……

かんき出版、中野さんとの出会い

noteの閲覧も初動の勢いを失った2023年7月、ブログの問い合わせフォームから一通のメールが。

「国語力」をテーマにした本を作れないかと考えております。
中本さんの運営されている「かまくら国語塾」の取り組みや、noteに書かれている内容に興味を覚え、ご連絡させていただいた次第です。

かんき出版 中野さんからのメール

一度は諦めた企画であり、以前の経緯もありましたので、ホイキタとは飛び付けません。

そして、頭の中には、滝本さんの「で、どうなるの?」がリフレインします。

でも、中野さんのメールにあった「かまくら国語塾の取り組みに興味」を信じて、お話を聞かせてくださいと返信し、zoomで打ち合わせをすることになりました。

中野さんはとても聞き上手で、打ち合わせが存外に盛り上がり、気づけばこれまでの経緯を愚痴るように話していました(普段あまり愚痴ることはないのですが……)。

かまくら国語塾のことやブログの内容にも多く目を通していただいていて、非常に信頼できる編集者だという印象を持ったことを覚えています。

そして聞くところによると、かの森沢明夫さんから「面白い塾があるんだよ」とお話をいただいたとか。森沢明夫さんには、かまくら国語塾の小説家をお招きするイベントに以前来ていただいたことがあります。光栄!

中野さんは、森沢さんの『プロだけが知っている小説の書き方』の担当編集者さんでした。(これ、すごい本です)

今度は「ボヤッと」しないように、“そこにある現実”に想いを込めて、自分を表現する一冊を書こうと決意した次第です。

企画が通りましたよ

そこから、出版企画書を書いたり、原稿を見直したりして、かんき出版内の企画会議(企画が通れば出版GO)を待ちました。

そして迎えた2023年10月6日。

本日企画会議を行いまして無事通過いたしましたのでご報告いたします! 改めまして、刊行に向けてこれからどうぞよろしくお願いいたします。

中野さんのメール

通ったぁぁぁぁぁあ。

そして、優しい中野さんは構成案の中で一言。

以前いただいた原稿に追加修正するのではなく、今回の新構成案に沿ってイチからの作成をお願いしたいです。

中野さんの構成案

……。

鬼か。

一度アウトプットしたものをしまい込んで、新しく別の形で出していく、というのは結構大変な作業です。

読んだ時は頭を抱えましたが、結果的に大きくブラッシュアップされ、僕の想いも込められたし、編集の中野さんの意見がめっちゃ反映されてるし、生まれ変わったまったく別物と言える一冊が出来上がりました。

【本題】『おうちでできる子どもの国語力の伸ばし方』

さて、ようやく本題に入ります。
やっとか、と思った方は、心機一転お茶でも飲みながら読んでもらえると嬉しいです。

各章ごとにポイントや裏話などをお伝えしていきたいと思います。


表紙のイラスト最高すぎませんか?

まず、表紙です。
もう、大満足。1000点です。

白地に赤で「国・語・力」みたいな表紙だったら嫌だなーと思っていたんですが、編集の中野さんが最高の人選をしてくれます。

かないさん、すごい人が表紙を書いてくれました。

この男の子、かわいいんですよ。
本の中に何回か登場するので、探してみてください。

物語が飛び出してくる感じも素敵ですよね。
ところどころで出てくるかないさんのイラストは、本書全体の雰囲気を保つ上で欠かせないものです。(裏表紙にも!)

魅力的な人物だけでなく、背景の描き方も素敵ですので、イラストが出てきたらページをめくる手を少し止めて、ぜひ味わってください。

思い入れのある「はじめに」

では、本書の内容のご紹介に入ります。

この「はじめに」は、実はnoteで書いていたものからの変更が最も少なかった箇所です。noteで書く時点でかなり練っていたというか、気持ちを込めて書いていたので、そうなりました。

はじめに、って本を選ぶときに一番読まれる箇所だと思います。僕は書店で「はじめに」を読んで本を閉じることも結構あります。

だから、文体を優しく、でも説得力は持たせつつ、本書に対する期待をしっかり持って読み始めてもらえるよう、国語についての考えの根本を書きました。

国語力とはなにかについて持論を述べる、大事だけどちょっと難しい第1章

続いて第1章です。

「国語力」という言葉の定義はすごく広くて難しいので、この本において、自分としてはどう「国語力」を捉えているか、というところを説明しています。

  • 国語力はテストの点数で測れるか

  • 国語力で自分をアップデートできる

  • 共同体のルールを学ぶ

  • 限定された理解の幅

  • 国語力を分類する四技能

  • 国語力は遺伝より環境  など

読んでくださる人のことを考えて、論文の引用とかをしてアカデミックになりすぎないよう、それでいて論拠が弱くならないよう、書いたつもりです。

この辺は論じ始めると色々なご意見も出るかとは思うのですが、「国語力」についての本を書く上できちんと「立場を取る」必要があるなと思って覚悟を持って書きました。

国語力を表現する上でなるべく具体的に伝えるため、英語ではよく言われるもので、国語においても文部科学省が触れている四技能「話す・聞く・読む・書く」の領域について説明しています。

また、国語力を考えるときに「なぜ国語を学ぶか」からも逃れられません。国語の授業内での「共同体におけるルール」の習得、ということを国語という教科の一つの目的として挙げています。

本書を読み進める上で「そういうものを国語力と呼んでいるのね」、ということが伝わると嬉しいです。

すばるでの経験を活かす中学受験と国語力についての第2章

国語力を語る上で、教科としての国語が大前提にあると思いますが、立場上というか経験上、「入試国語」の文脈も無視するわけにはいきません。

「入試国語」と言葉を当てはめてしまうと「そんなものはねぇ!」「国語は国語だ!」とご指摘が入るかと思いますし、僕自身も「“国語は国語”派」ですが、説明しやすいので便宜上分けさせていただいております。

本文をお読みいただくと、国語への愛が伝わる……かな? 伝わるといいな。

  • なぜ偏差値が気になってしまうのか

  • 学歴フィルター

  • 入試問題で問われているもの

  • 受験を超えて

「学歴フィルター」の部分については、人事部で働く友人数名の意見も聞きながら、書きました。特に手厚く情報をくれたN君・T君ありがとう。

存外に結論が「国語力」に結びついて、嬉しくなりました。

「入試問題で問われているもの」の部分では、「他者理解」について触れました。ここでは、京都の福嶋先生にご助言を賜りました。ありがとうございました。

2章の最後の項目、「受験を超えて」は僕のブログのタイトルです。自分が好きすぎる人みたいで恥ずかしいのですが、僕が使おうって思ったんじゃないんです。編集の中野さんが「2章の締めは、是非これで」と言うのでそうなりました。

実はこの章には、シャワーを浴びながら思いついたキラーコンテンツが入る予定だったのですが、諸般の事情(主に著作権)により掲載できずでした。

このnoteの後半で供養していますので、ご興味がある方はご覧ください。
「開成中学校2022年度入試から考える中学入試国語」
※著作権は侵していません。

かないさんのイラストに再び萌える第2部への導入ページ

続いて第2部へのブリッジとなる見開きイラストのページが10ページ分続きます。

ここまで、硬かった本書の内容をほぐす意味でも、ここからの取り組みの章の楽しい雰囲気を伝えるためにも、ここでかないさんのイラストと共に、国語力をおうちで伸ばすための親子の気持ちの置きどころをゆるーく説明しているページです。

すべてのイラストが素敵ですが、伸びをしているお母さんと、謎に逆立ち気味の男の子のページが特にお気に入りです。

かないさんの貴重なラフ画

本書の中心、取り組みについて紹介する第3章〜第5章

さて、ここからが本書の肝となる「おうちでできる国語力アップの方法」です。

国語力を高めるためには、読書をしましょう。
国語力を高めるためには、読解問題の解き方を知りましょう。
国語力を高めるためには、文章を書きましょう。

色々ありますし、どれも正しいと思います。

で、実際どうすればいいの? というのが本当のところです。

目の前に「……うちの子、国語力があまりなさそうだぞ……」という可愛い我が子がいて、この先の人生で困らせたくないから「とにかく読書!」と言って本を勧めても、「たくさん読解を!」と思ってテキストを解かせても、そうそううまくいくことはありません。

その前段階の準備と、おうちの環境の整え方、取り組んでいる時にどう接するか、次のステップはどうするか、などをなるべく具体的に、実践例を含めて分かりやすく説明したのが第3〜5章です。

発展編である7章まで含めると18の取り組みを紹介しています。

そのすべてを試すのは、難しいですし、相性もあります。なので、興味を持ったものからやる、続けられそうなものに手を出す、など『ウチに合ったやり方』を探していただければと思います。

取り組みやすさとして、5段階の★をつけていますので、こちらも参考にしてください。

3章〜5章は結構長いので、最初はビビッと惹かれたものからつまんで読んでいただくと良いかもしれません。

では、順にご紹介してまいります。

1 テレビに日本語字幕をつけて言葉の教材に

最近はテレビ離れをしている子どもたちも増えているのですが、テレビが持つ情報媒体としての力は依然とても強いと思っています。

家族で観る、観ながらもしくは観た後に会話する、という点ではテレビはとても良いメディアです。言葉の力をテレビ視聴と共に最大限高められるように提案したのがこの項目です。

何も準備は要りません。
一瞬で取り組むことができるものを最初に持ってきました。

2 ドライブ中は「おはなし朗読」をお供に

童話や昔話は結構好きで、残酷だったり、人間の醜い部分が現れたり、仲間が増えていく感じもいいですよね。

短い話の中に起承転結や教訓が込められているので、国語の物語文や小説の構成を考える上でもすごく参考になると思っています。

本書の中では「ドライブ中に朗読音声を聴く」を紹介していますが、最近の我が家ではAppleのHome podでよく朗読が流れています。

今朝は「フランダースの犬」を聴いていて、子どもたちの間で「もっと早く助けてやれよ」とか「ネロ、持ってなさすぎ」とか心ない会話が繰り広げられていました。

Home pod以外でもAmazon echo(Alexa)やGoogle nestなどのスマートスピーカー、他でも結構便利ですのでおすすめ。2023年に家に来ましたが、ベストバイの一つです。NHKラジオのニュースも聞きたい時に聞けます。

あとこれは関係ないのですが、外国の童話はすごくルッキズムにこだわっているなって思ったりします。「あまりの美しさに王子様が身分を超えてひと目で惚れてしまう」「醜かった少女が綺麗なお姫様に」とかすごく多い。

普通に幸せになればいいのに、“美しく変貌してから幸せになる”というストーリーが妙に多いですよね。変身願望なんでしょうか。日本の昔話では少ないんですが。

余談でした。

3 ゲームで遊びながら国語力を身につける

Switchとかタブレットを使うものではなく、ここではあくまでアナログのゲームを紹介しています。

おすすめボードゲームと、進化系しりとりのやり方について書きました。おすすめのボードゲームに関しては、中学受験塾ディープグラウンドの末廣先生にアドバイスをいただきました。ありがとうございました。

ボードゲームもしりとりも、コミュニケーションをとりながら遊ぶことになります。

そこが重要だと思っているので、ぜひ試してみてください。

我が家にあるストーリーキューブ

4 学校の宿題は「あえてじっくり」で効果倍増(音読編)

音読信者です。

本書の中では、音読の効果について脳科学を中心に根拠を示していますが、それ以上に塾での授業の中で、また家で子どもたちと接している中で効果を実感しています。

集中力の向上と、脳の活性化。
少なくともこの二つの効果は絶大だと思います。

また、音読において肝心なのは、周囲のリアクションです。本人があてもなく一人で読むのではなく、保護者の方が傾聴し、毎日毎回リアクションを返すことです。

それが、音読スキルの向上と言葉の力を磨くことにつながります。

5 学校の宿題は「あえてじっくり」で効果倍増(漢字ドリル編)

漢字ドリルの学習および宿題は、完全に“作業”となりがちです。漢字は暗記項目ではなく、語彙学習のベースだということを、「学校の漢字ドリル宿題」への取り組みを工夫することで身につけます。

塾で先取り学習をしている人こそやってほしいです。「漢字が書けても、その漢字の意味は分かっていない」、そして同音異義語が出来なかったり、しばらくすると忘れてしまったり、ということが多発するからですね。

「やりたくなくても、やらなくてもいけない宿題」であるならば、そこに意味を持たせるようにうまく活用してみよう、ということです。

もちろん、最初から意義があると思って取り組んでいただくのがベストですが、ここを鍛えれば一気に語彙力が上がってくるのが、意味重視の漢字練習です。

ここでは、漢字ドリルの取り組み方や工夫の仕方などを紹介しました。

6 トイレの壁には「日めくりカレンダー」を

トイレ、学習効果高いんですよね。
妙に集中力があるというか。他のことを考えないというか。

トイレの壁を有効に使うというのは、密かに受験生の家庭でも流行っています。ただ、本書でも述べているのは、あまり詰め込み過ぎは良くないということですね。

「普段の学習の続き」になるのではなく、少し変化をつける。

本書でおすすめしているのは、俳句カレンダーだったりします。俳句について日頃考えている小学生はほぼいないはずです。季節を表す言葉、季節感、独特の言い回しを言葉の芸術である俳句から学んでいくのは、良いのではないかと思います。

家族の話題づくりにもなりますね。

7 本棚はリビングの目立つところに置く

リビング本棚はよく言われることなので、「それは知ってる」となりがちですが、その本棚に何を入れるか、どうやって本棚の中身を作っていくか、というところを書いています。

「入れ替え戦」や「おすすめ本棚」などについて触れていますので、リビング本棚を検討されている方は、ぜひお読みください。

また我が家ではマガジンラックの使用頻度が高くて、図書館で借りた本は基本的に全部マガジンラックに置かれることになっています。本棚よりも一時置きに便利ですね。

うちにある本棚はこんな感じ。
腰の高さくらいのものがおすすめですね。

圧迫感がないのと、倒れにくいのと、子どもが寝そべったりしゃがんだりしながら本を選んでいる姿が可愛いので!

2021年撮影(鬼滅の刃の存在感……)

うちにあるマガジンラック。こう見えてめちゃくちゃ収納力あります。うまく立て掛ければ、30冊くらい置けます。しかも丈夫です(こんなに値段高くなかったけど……)。

8 書店では親子で2冊買い

「本屋さん」行くのはやっぱり楽しいんですよね。だから、子どもたちにも書店に行くことが楽しいイベントである、と思ってほしいと願って子育てしてきました。

目移りしながら、あれもこれも手にとって、本当はあっちも良かったけど、「これにする!」と決めて持ってくる瞬間が愛しくて。

だから、書店でたくさんの素敵な出合いがあるといいなと思って、書きました。本の選び方や書店での過ごし方にも触れています。

書店が減っている現状は寂しいですね。
Amazonもいいのですが、もしお近くに書店があるなら、皆さんぜひ足を運んでください。

「本屋で本を買う」
それが、書店減に歯止めをかける唯一の方法です。

9 図書館では親子で貸し出し冊数限度まで

図書館で過ごす時間も素晴らしい時間です。一度に選べる冊数が多いことが何より魅力ですね。

目当ての本があって図書館に行くこともいいのですが、図書館でどう借りたらいいのか、何を基準に選んでいけばいいのか、図書館への訪問がルーティンになるような提案をしています。

逗子図書館本館と小坪分室、鎌倉中央図書館にはいつもお世話になってます。ありがとうございます。

逗子図書館本館カウンター

10 あえての「紙の辞書」で語彙を増やす

辞書引き、絶対効果あると思っています。

「紙の辞書の面倒なところがいいんだよな」、と思っていたらそれを裏付けるエビデンスが結構出てきて嬉しく思いました。

また、この項目を書くにあたって、おすすめの小学生向け辞書を調査しました。

  • 小学館例解学習国語辞典

  • 三省堂例解小学国語辞典

  • 学研新レインボー小学国語辞典

  • チャレンジ小学国語辞典

  • 光村教育図書小学新国語辞典

ぱっと見のビジュアルや、コラム欄、同じ言葉を調べた時の意味の書き方など、どの辞書も面白いと素直に思いました。

おすすめはどれですか? と聞きたいと思います。

……

……

はっきり言って「好み」です!
全部それぞれの良さがありました。

ただ、僕なら低学年から使用するのであれば、三省堂を。
理由は、見やすくてバランスがいいので。アプリで使えるのも便利です。

高学年に買い与えるなら、光村を選びます。
理由は、他の辞書は少しガチャガチャしていてある意味見づらい。大人用辞書への橋渡しとしては、光村が一番良さそうな気がします。他と比べると発行年度がやや古めなので、新語には弱いかもしれません。

小学生向け辞書比較一覧も掲載しています。これから辞書を買おうかな、と思っている方には参考になるはずです。

高校の時に使いまくっていて、最近復権を果たしている「エモい」を調べたら、一つの辞書しか載っていませんでした。でも、一つだけでも載っていてエモかったです。

11 小学生新聞は記事を「たったひとつ」読むところから

小学生新聞、面白いんですよね。我が家では毎日小学生新聞を購読していますが、話題も豊富ですし、大きなニュースについては、小学生でも分かるように細かく説明されています。

ネット記事を小学生が分かるように噛み砕いて説明するのは、保護者にとっても大変なことです。小学生新聞の整理力取捨選択力は、抜群です。

また、言葉のセレクトも相当気にしながら作られているので、大人にとっても伝え方の勉強になることがたくさんあります。

どうやって読めばいいか、保護者はどう関わればいいか、というあたりを書きました。

12 動物園や水族館で未知に出合う

「未知に出合うこと」が体験として重要なことは言わずもがなですが、出合った体験を言語化するところまでセットでやると、さらに効果が発揮されます。

動物園や水族館だけではなく、普段とは違う土地を訪れる経験やそこで出合った未知を家族でどう捉えるか、などについて触れました。

13 日記を毎日の習慣にする

僕自身、小学校六年間最低でも週一回は日記を書いていました。ネタ切れになってワンパターンになる苦しみはあったんですが、書き続けることで得られたこと、残ったことがあったと思っています。

文章を書くことへの抵抗感をなくすという意味では日記はすごくいいのですが、反面あまりに強制しすぎると文を書くのが嫌いになってしまうというデメリットもあります。

なるべく楽しく。
なるべく続けられるように。

そんな工夫について書いてみました。

14 食事の時間は親子のラジオタイムに

妻がラジオ好きで、朝6時半から子どもたちが出かけるまで、ずっとラジオ流れてるんですよ。ラジオ体操に始まり、NHKラジオでのニュースを毎朝聞くことになります。(時々朗読音声にも切り替わりますが)

でも、これがいい感じで、タイムキーパーとしても優秀ですし、天気予報や前日のニュースの復習など聞き流しながら耳に残すことが出来ます。そして何より子どもたちとの話題づくりにも最適で、ラジオニュースをきっかけに環境問題や政治・経済の話なんかも出来るようになってきました。

「さっきから言ってる『ソウサイセンキョ』って何?」
みたいな感じで子どもから質問が出てくることもあります。聞いてないようで意外と聞いているものです。総裁選について、こちらから改めて話題を振るのは難しくても、子どもの方から出てきた疑問であれば、返事にも興味を持って聞いてくれます。

うまく答えられない時は、子ども新聞の出番です。ニュースで流れるようなことは、かなりの確率で子ども新聞で解説されます。ラジオ+子ども新聞のコンボは、時事問題には相当強さを発揮すると感じています。

15 旅先にはカメラを持って出かけよう

子どもたちが撮る写真、かなりいいんですよね。思いもよらない写真をすごい画角で撮っていたりする。また、それも適当に撮るのではなく、意外と考えてシャッターを切っていたりします。

その「考え」を聞いてあげると、視覚情報に言葉が乗っかる形になって、説明する力が伸びてきます。カメラ係を任せることで、言語化スキルが身につくというわけです。

長男撮影の次男

「弟が木の影から飛び出してきた瞬間をねらって撮った」とのこと。写真の言語化、いいと思います。

やっぱり受験対策も入れようということで追加された第6章

全編を通して書いていくうちに、国語力を育む家庭での取り組みは中学受験にもちゃんとつながっていくな、ということを改めて実感しました。

技で中学受験を乗り越える、という考え方もあるようですが、国語はもっと『国語』でありたい。

良質な文章を前にして、自分の中に積み重なってきた言葉が結びついていくことで、文章を紐解く。対峙した作者や筆者、そして出題者の想いを一旦自分に取り入れて、そしてそれを答案の形で表現していく。それが、「中学受験の問題を解く」ということだと思っています。

だから、ここで紹介したのは、言葉を受け止めて自分なりに創造する三語作文と、文章と対峙する要約・あらすじの取り組みでした。

三語作文

スタジオキャンパス矢野先生の「言葉のブリッジ」を参考にして(パクらせていただき)、7〜8年前から実施しているものです。矢野先生、ありがとうございます。

テキストに出てきたものや、こちらで意図的に選んだ三つの言葉の意味を調べ、その三つを使用しながら80~120字の創作をする、というものです。

これがすごく面白くて、生徒たちの創造性が発揮されるし、文章の構成力はつくし、コミュニケーションの材料にもなります。継続的に取り組むことで語彙力と記述力の向上は確実です。

添削をうまくやることで、その効果は倍増するのですが、添削に自信がないという方のためにChat GPTやGoogleなどの生成AIの活用法も載せてあります。(←簡単です)

付録については後で触れますが、言葉のセレクトも大変だと思いますので、重要語句で作った三語作文シートを50パターンダウンロードできるようになっています。ぜひ使ってみてほしいです。毎回二部印刷して、親子で取り組んで見せ合うのもいいですね!

要約・あらすじノート

これは、すばるの伝統でもうかれこれ15年以上やっている取り組みです。

部分を読むことと、全体を読むことのバランスはすごく難しくて、問題を解いていると部分読みの方が先に身についてくるのですが、全体を通して読んだり理解したりすることが苦手な生徒をよく見てきました。

そこで、全体を通してまとめていく要約・あらすじを提出課題とすることで、文章全体を受け止める力や味わう癖がだんだんと生徒たちに定着していくということを感じています。

要約・あらすじの書き方やポイントなどについて書いてあります。

わがままを聞いてもらった第7章

「国語力を伸ばす」という本書のテーマを考えたときに、どうしても外せないことがありました。

それは、「書くこと」。
それも、「自由に書くこと」です。

かまくら国語塾での五年間で、関わった多くの人が大きな満足感を得て、また、書くことを楽しんでくれています。

書くことを楽しむことは、読むことにもつながり、言葉に多く触れる機会を生み出します。結果的にこれは、「国語力を伸ばす」と結びついていると確信しています。

決して簡単なことではありませんが、「“今”しか書けない物語」を残すことは親子の宝物を手にいれることです。だから、本書の最終章となる第7章では、「親子での創作活動」を取り組みに入れさせていただきました。

前向きでノンプレッシャーな書く営みが、結果的に子どもたちの国語力を向上させるさまを、すでに50名近くとなったかまくら国語塾のメンバーたちが証明してくれています。

中には、読み書き障害(ディスレクシア)が改善されたという驚くべき成果もありました。

「書くこと」それも「自分が好きなように書くこと」が言葉と向き合い、文章を構成する自信をつけます。書き続けることで、伝えようとしている世界観やストーリーの深さが驚くほど進化していきます。

ただ、こうして身につけた力が「点数」に跳ね返るかというと、そういう時もありますし、そうでない時もあります。

子供の力を信じて、辛抱強く待つこと。これに限ります

以前、プレジデントファミリーの取材を受けた時にお話したことです。それを受けて芥川賞作家の藤原智美さんが、こうまとめてくれました。

だが、スピード重視では、先のエピソードで紹介したような作品は生まれない。書く力をつけるには、何より本人が創作を楽しむ気持ちになること。それまでは、子供の意欲を邪魔することなく、「ひたすら待つ」という姿勢が、大切なのだ。

プレジデントファミリー2023秋号 藤原智美「書く力の現場」より

「自由に書くこと」を推奨し、「待つこと」。
これが、楽しんで書くことの必須条件だと思っています。

すべてを盛り込むことはできませんでしたが、ワークショップなどで実践しているおすすめの「物語の創作方法」について、本書の中で三つほど紹介しています。参考にしていただき、ぜひたくさんの作品がご家庭で生み出されたら嬉しいです。

DL付録、期待してください!

本書には三つの特典、ダウンロード付録がついています。

  1. 小学生向けおすすめ100冊ブックリスト

  2. マンガノートのフォーマット

  3. 三語作文50問 問題と記述用紙

特におすすめ本100冊リスト。めっちゃいいと思います。自信作です。

どこがいいかと言うと、レベル別表記をしているところです。レベル感は次の通り。スタートを「0」としています。

0.すべてひらがなの絵本

  1. ふりがなつき漢字まじりの絵本

  2. 絵が中心の本(読み聞かせ卒業レベル)

  3. 絵が多めの本

  4. 絵が少ない本も読める(文字大きめ)

  5. ほぼ活字の本を読める(文字やや大きめ)

  6. 活字だけの本を読める(ふりがな多め)

  7. 少し長めの活字だけの本を読める(ふりがな多め)

  8. 字が小さめの本を読める(ふりがな少ない)

  9. 字が小さくて長めの本(ふりがな少ない)

  10. 字が小さくふりがながない長めの本

  11. 大人の語彙レベルで小学生でも楽しめる題材のもの

いわゆる「ド定番」は外していますが、「名作」と言われている中でも「これだけは読んでおこう」というものは敢えて入れ込みました。

「十五少年漂流記」や「あしながおじさん」などは、読まずに通り過ぎるにはあまりにもったいない超名作ですし、子どもたちも読んだらハマる可能性が大いにあります。

特に一言コメントのところは、すっごく時間かけて作りました。苦労の度合いを考えると、これだけでも売りたいです笑

マンガノートのフォーマットは、書くより貼る方が楽ですから、印刷して貼ってを繰り返すと取り組みやすくなると思います。(これは時間かけてない)

三語作文は、今注目というか改めてすごく楽しい取り組みだと思っておりまして、自分の中で盛り上がっているコンテンツです。

生徒たちの反応を見ていると、三語作文で取り上げた言葉の定着率は相当高いので、かなり効果的だと思います。

中学受験レベルの三語がすでに書かれているものを50枚分作ってあります。一週間に一枚やったとしても、一年かかります。

三語作文サンプル

一周終わる頃には、最初の方は忘れているかもしれませんので、二周してもいいと思います。

これも、結構大変でした。これだけでも売りたいくらいです(二度目)。

残念ながら掲載できなかった企画「開成中学校2022年度入試から考える中学入試国語」

最後に、著作権の関係と、「入試解説本」になってしまう懸念から、掲載できなかった企画がありますので、ここでご紹介(供養)。

森沢明夫さんの「おいしくて泣くとき」を思いっきり入試問題に使ってきた2022年度の開成中の問題を取り上げて、「入試国語とは何か」を掘り下げてみようというものです。

この年の開成は、なんと物語文一題のみの出題。物語文だけで入試をおこなってしまうことに、波紋が広がりました。でも裏を返せば、開成が試してみたい国語力、届けたいメッセージは、この乾坤一擲の出題に十分込められているとも考えられます。

「おいしくて泣くとき」は、子ども食堂を題材にした社会性と、美しい情景描写と胸に迫る心情表現の巧みさでグッと心を掴まれる作品です。何を求め、どんな思いでこの文章が選ばれ、問題が出されたのかを考えてみたいと思います。

全文掲載したいのですが、著作権の問題がありますので、ご興味がある方は、四谷大塚の過去問データベースから見ることが出来ます。会員登録は必要ですが、無料です。

出題箇所を要約するとこんな感じです。

中学三年生の心也は、母を亡くし、父親と二人で暮らしている。父は「こども飯」という無料の食事サービスを提供する食堂を運営しているが、心也はその活動が原因で学校でいじめられ、“偽善者のムスコ”と机に落書きされる。心也はその日、嵐の中、深刻な顔で帰宅し、父親の作る焼うどんを食べながら「こども飯」をやめるよう提案する。しかし、父は「やりたいようにやる」と述べ、サービスを続ける意思を示す。心也は反発を感じつつも、父との対話を通じて、自分の思いと向き合う。最終的には父との絆を再確認し、少しだけ心が軽くなる。

森沢明夫「おいしくて泣くとき」の開成中出題箇所をざっくりと要約

今回は、最終問題にして最高の問題であった、問6のみを取り上げて解説をします。

問6 ──部5「まずかった」とありますが、この時の心也の気持ちを、六十字以上、七十五字以内で説明しなさい。

開成中学校 2022年度入試問題

(中本の解答)
「こども飯」をめぐる理不尽へのやるせなさと、父の愛情深い意思への嬉しさに揺さぶられたところへ、「いつもの言葉」を軽くかける父に素直になれない気持ち。(74字)

「こども飯」という「善意」が捻じ曲がって受け取られるつらい現実を目の当たりにし、自分自身と同級生にも災難が降りかかる。悩んで苦しんで絞り出した「そろそろ、やめない?」の言葉。父親に受け止めてもらえなかったと早とちりした失望、そして、そうではなかった安堵。何が正解か分からず苦しくなってしまったが、すぐそばに父がいてくれる頼もしさ。

感情が振り回されて、心也が経験したことのない気持ちになっていても、父がかけてきた言葉は、何度も何度も交わしてきたいつもの「美味かったか?」だった。

そして、表面に現れた心也の「まずかった」というネガティブな言葉。

この「まずかった」に込められた気持ちを考えるには、そこに至るまでの主人公のジェットコースターのような気持ちの変動を丁寧に追いかけていかなくてはなりません。その表現の裏には、照れくささ、やるせなさ、意地、ちょっとした反抗、そして父親は自分の味方であるという信頼と感動が込められています。

たった一言では到底言い表しきれない葛藤と想いがそこにはあって、でも、その内容について考え、言葉にし、そして指定の文字数の中に収める解答を書くことになります。難しくて、深い。

限られた時間の中でこの問いと向かい合うのは並大抵のことではありません。でも、だからこそやりがいがありますし、面白い。

入試国語の奥深さと面白さ、可能性についても考えさせられる出題でした。

ちなみに四谷大塚の解答はこちらです。

「こども飯」をやめてほしいという思いと、続けてほしいという思いが入り混じり、自分を振り回して困らせる父親に反発する気持ち。

四谷大塚 過去問データベース解答より

どんな解答が相応しいか、ぜひみなさんも考えてみてください。

確かに、ここまで詳しく書いてしまうと、本書の趣旨ともずれてしまいますね。中野さん、ナイスです。

解答作成にあたりご意見をくださった齋藤先生、渋田先生、Y谷先生、ありがとうございました。掲載できなくなってしまい、すみません。

おわりに

ありがとう、中野さん。
中野さんナシではこの本は出来上がりませんでした。書いたのは僕ですが、作ったのは中野さんです。たくさん売れて中野さんに喜んでもらいたいです。

また、各所で色々な知人や友人に助けていただきました。そして、いろんな取り組みを一緒にやってくれた長男の反応や成果も大きなヒントとなっています。

初めて本格的に一冊の本を書きました。

本を作るのって、孤独な作業なのかと思っていたんですが、全然違いました。いろんな人との繋がりを組み上げていって初めて完成するものでした。

この本を書いていたおよそ一年の間、「この人に話を聞いてみよう」「あの人だったら知ってるはず」と思って、色んな人を頼りました。すごく久しぶりの人にもコンタクトをとるきっかけにもなりました。

突然の相談だったにも関わらず、快く協力してくださった皆様、ようやく形になりました。深謝申し上げます。

売れてほしいという気持ちはもちろんありますが、本書でご紹介した取り組みを通して、おうちの中で言葉を介した(少し知的な)やりとりが増えることが一番の望みです。

また、取り組んでみたことに対するフィードバックがあると、書いた甲斐があるというものです。忌憚ないご意見、お待ちしております。

久しぶりにこんな長いnoteを書きました。想いが先走り、まとまりのない文章となりました。国語力の本を書いている人とは思えませんね笑

最後までお付き合いくださり、ありがとうございました!

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ナカモトジュンヤ@かまくら国語塾
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