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いいものを使うということ。

私(中の人)が取材に訪れた時龍ちゃんはキッチンにいた。

キッチンでこの後自分が食べるであろう朴葉焼きの調理をしていた。

何気ない会話のなかで「僕、来月家が完成するんです」と話したら、

龍ちゃんが「ええ家具を置けよ」と言ったんだ。


ええ家具を置け

龍ちゃんは少し格好つけなところがあるから家を建てたらいつお客様がきてもいいように「ええ家具をおけ」と言ったんだろうなぁと思って、龍ちゃんらしいなぁと思いつつ少し意地悪に「どうして?」と聞いたら予想外の答えが返ってきた。


「良いものってもったいないから大事使うやろ、結果としてものを大切に長く使える、それが丁寧な暮らしってこと。安物を大事に使うことも大切だけどええものやと気持ちが引き締まるから、心が磨かれる」

なんて本質的なことを言うんだろうと少し驚いた。

私はもしかしたら龍ちゃんを少し違った目で見ていたのかもしれない。

その後龍ちゃんの昔話を聞いた、

龍ちゃんは奈良の山奥で生まれ育った、田んぼに囲まれていて米や野菜には恵まれていた。

「昔から食うものには困らなかったな」と言った。

続けて「美味しいものを時間をかけて食べること、こんなに贅沢はない」とも言った。


庭には花が咲いていた


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ふと庭を見てみた。

そこには緑や花がたくさん咲いていた。

龍ちゃんの家にはとにかくグリーンが多かった。


「素敵な庭ですね」と声をかけるとほろ酔いの龍ちゃんは「俺が全部作ったんや」と胸を張った。

龍ちゃんは"食事の時間"であるとか"ものを大切にする時間"であるとか、他にも植物が季節に応じて成長することであったりとかそういう見えないものに価値を感じているのがわかった。


モノが溢れているこの時代に目に見えないものに価値を見出すのは簡単なことではない、例えば家でリラックスしようと思うとマッサージ機であるとか、ゲームであるとか何かしら新しいモノが欲しくなる。

おうち時間が増えてくるとそれにつれて物も増えていくだろう、

しかし龍ちゃんの家は何度訪れてもモノが増えている形跡はなく、割れたグラスには金継ぎがなされていた。

それがこれみよがしに置かれているのではなく生活の一部になっていた。

巷ではSDGsが話題であるが、なんだか本質はここにあるんだろうと感じていた。


龍ちゃんはそんなことない!と言い張るのだけれど朴葉焼きは少し手間がかかるような気がする。

しかしその時間を一緒に待っていたり、そこで生まれる会話であったり、そこに価値があるんだと思った。

取材を初めて、鍋を中心においてグツグツと朴葉焼きが焼けるまで、少し気まずい時間もあったのだけれど徐々にその空気が解けていくのを感じたし、少しずつ距離が詰まっていくのが手にとるようにわかった。

なるほど、時間を楽しむと言うのはこう言うことかと感じた時、

私は次の予定のために帰る時間になっていた。


「そろそろ帰らなきゃ」

というと龍ちゃんはほろ酔いでボソッと「帰るなよ」と言った。


たった2時間程度の時間であったが、何もないこの時間はいつもより濃く感じたし、その時間を生み出したのは間違いなく空間であったり食事であったり、何よりも丁寧に生きるという姿勢だったんだろうと思った。



朴葉焼き

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この取材の時に龍ちゃんは自分で仕込んだ朴葉焼きをつまんでいた。

少しぐつぐつと煮えるまで時間はかかるがその時間はとても価値のあるように感じたし、正直めちゃくちゃおいしかった。

車で来ているのを後悔した。


朴葉焼きって普段ほとんど食べないと思うんだけど、ぜひこの機会に挑戦してみてはいかがでしょうか?



ちなみに、

ミニ七輪セットもあるのでこれからの季節ベランダやお庭でゆったりと楽しんでみても素敵ですね。

(もうすぐ家が完成するので、私はこちらを購入予定です)




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