『糸』
土曜日ですね、今日の映画は『糸』です。
感動したという言葉ではチープになってしまう、そんな映画でした。1番強く思ったのは「平成という時代に生きていたんだな」ということです。そこへ自分を重ねて、すごく共感してしまいました。
Story
平成元年生まれの高橋漣と園田葵。北海道で育った二人は13歳の時に出会い、初めての恋をする。そんなある日、葵が突然姿を消した。養父からの虐待に耐えかねて、町から逃げ出したのだった。真相を知った漣は、必死の思いで葵を探し出し、駆け落ちを決行する。しかし幼い二人の逃避行は行く当てもなく、すぐに警察に保護されてしまう。その後、葵は、母親に連れられて北海道から移ることになった。漣は葵を見送ることすらできないまま、二人は遠く引き離された…。それから8年後。地元のチーズ工房で働いていた漣は、友人の結婚式に訪れた東京で、葵との再会を果たす。北海道で生きていくことを決意した漣と、世界中を飛び回って自分を試したい葵。もうすでに二人は、それぞれ別の人生を歩み始めていたのだった。そして10年後、平成最後の年となる2019年。運命は、もう一度だけ、二人をめぐり逢わせようとしていた…
(映画『糸』公式サイトより引用)
フェリーと涙
年号が変わっていく描写がすごくよかった。
平成から令和へ変わる瞬間にはいろいろな、その人なりの真実があったんだろうと想像させられました。ぼくにとっては「同じ平成を生きた人、その何人かのあるシーンを見させてもらったな」という作品かもしれないです。
特にそう感じたのが、フェリーのシーンでした。
あそこでは絶対にこうなってほしい展開が、ぼくにはあったんです。正直に言うと「こうならなかったら怒るよ」と本気で思っていました(笑)。
それほど心を動かされていたんです。
ここはやっぱり涙が出ましたね。泣きましたよ。
いい作品のいい脇役
倍賞美津子さん演じるおばちゃんも、すごかった。
葵ちゃんが来たとき「あの子のお母さんは...」と言い、漣くんが来たときには「あの子は....と言ってたよ」「あの子は強い子だから」と言うんです。その言葉が少しでもずれてたら、どうなっていたんだろうと思います。
noteでも何度か書いてきましたが、いい作品には絶対にいい脇役がいるんですよ。松重豊さん演じるチーズ工房のオーナーもよかったですよね。
それから、子役のみなさんも似ていました。特に榮倉奈々さん演じる香の娘役、結ちゃんなんてそっくりです。
余談ですが、はじめて登場したシーンを観たとき「絶対に名前はゆいちゃんだ」と思ったんです。当ててしまいましたよ。やっぱり、俺こういうのもってんなと思いましたね(笑)。
温かくて優しい
ぼくはこの映画を、すごく優しい映画だったなと思いました。
胸が痛むような辛いシーンはあるんですけど、優しさも込められていたと思うんです。例えば、漣くんと葵ちゃんが雪のなかで引き裂かれてしまうシーン。ここにどんな背景があったのかを最後でみせています。
漣くんと葵ちゃんが、幼なじみの結婚式に出席するシーンもそうでした。
あのあと漣くんはどうしたのか。車に乗り込んだ葵ちゃんは、何を思っていたのか。あのミサンガはどうなったのかも、最後に描かれていました。
『糸』は辛いシーンがあったとしても、すぐにあったかい場面を用意してくれていたと思うんです。だから、すごく温かくて優しい映画だなと。
ラストシーンも全観客が望んだことを、ちゃんとやってくれているなと感じました。こういった期待にも応えてくれていて、やっぱり『糸』は優しい映画だったなと思うんです。
平成は30年間続きました。そして、ぼくは今36歳です。
そのなかで過ごしていくうちに、忘れていたこともあったけど、『糸』を通じてもう1度、思い出すことができました。自分のなかに刻まれてるもの、自分が歩んできた道を少しずつ回想したんです。いつもだったらここで「明日からも頑張る」と書きそうですが、この感覚は少し違います。
"いろんなことがあったけど、今がちゃんとあるね"ということを再確認させてくれたのが、ぼくにとっては一番嬉しかったことなんです。
例えば「3.11のときこうしていたな」「平成から令和に変わるときはこうだったな」と、自分なりの思い出があります。小渕さんが「平成」という文字を、菅さんが「令和」という文字を発表された時を生きてきました。
その時間が『糸』という映画と重なって、ぼくは嬉しかったんです。
いろいろなことを思う映画でしたけど、なかでも縦の糸と横の糸が示す「一期一会」について考えました。
出会いのなかには、重なりあったりするものもあれば、そうならないものもあります。だけど、その結果が今であることには違いありません。というところから、今ぼくの周りにいてくれる人と出会えたことを感謝して、頑張っていこうと思いました。
エンドロールには inspired by 中島みゆき「糸」とありましたが、ちゃんと全てにおいて敬意を払っている映画だなと。まえに映画を観たあとは点数をつけると書きましたが、『糸』はもうスコアをつけるのも無粋だと思うような映画でした。
(画像引用元:映画『糸』公式Twitterアカウント)
それではまた明日。
最後に。
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