「日本遺産」がおもしろい。

 「日本遺産」ってご存知ですか。

 今日は最近気になっている「日本遺産」という文化財についてのお話です。わたしは地域社会や地方創生について調べているのですが、そこで出会ったのがこの言葉。
出典:文化庁 日本遺産ポータルサイト

 「日本遺産」とは、文化庁が認定・発信をしている事業です。そもそも文化庁という行政組織自体が、どんなことをやっている場所なの? という興味深い名前ですよね。昨今の情勢下、芸術や文化といったものの捉え方が議論される機会が増えました。日々の生活が精いっぱいになる中で、芸術や文化といったものをどう位置付けていくか、それは欠くことのできないものなのではないか、そのような声がよく聞かれます。

 芸術と文化というものをひとくくりにするのは少々乱暴かもしれません。ですが、芸術や芸能の根底には「文化」的なものがあります。そしてそもそも「文化」というものをどう表現するか、それはとても難しい問いです。だからわたしにとって「文化庁」という名前は興味深いのです。

 先日夕張市の夕張炭鉱のホームページを見ていると、「日本遺産」という言葉に出会いました。夕張市はわたしが興味をもっている地域の一つですが、この地域はもともとは炭鉱の町であり、そして鉄道、ダム、港湾などへと広がってゆく、その「ストーリー」は語りつくせないものがあります。

 今「ストーリー」という言葉を使いましたが、実は文化庁が「日本遺産」で重んじているのがこの「ストーリー」という言葉です(わたしは文化庁の人間ではないのですが……)。とにかく「日本遺産」のホームページには「ストーリー」という言葉が多用されます。そして認定においても「ストーリー」こそが遺産であり、それを「日本遺産」として登録するという説明がなされています。

 これってとても面白いと思うんですよね。そもそも世界遺産というものはその背景ももちろん重んじられますが、でもやはり重要なのはその「もの」です。それが「無形遺産」という概念を作り出してもいます(つまり本来は「有形」だよね、ということ)。しかし「日本遺産」の中身はそもそも前提として「ストーリー」である、と。このような考え方は地方創生ということを考えるときに、とても重要な土壌になるのではないかと思います。

 地方創生を考える時によく言われることは「サステイナブル」ということですね。この言葉最近本当によく目にしますが、わたし自身よくわかってなかったかなという気持ちです。つまりそれは「持続可能」、作って終わりではないということ。むしろ作ってからどうするか、どう運営するか。繰り返し、引き続きその地域のものとしていくにはどうするか、それが「サステイナブル」です。

 「ストーリー」という概念を考える時、そこに必ずあるものは、そこに流れてきた時間であり、人々であり、技術であり、土地であり……。自ずからそこには「サステイナブル」が活きていますね。そもそも「サステイナブル」という言葉こそ最近のものになっていますが、その取り組み自体はかつての自治体に活きていたのかもしれません。時代とともに都市というものができて、あり方は変わっていきましたね。

 都市ができて、自治体のあり方が変わって、だからこそ今「サステイナブル」をうたう。現代はそのような時代なのかもしれません。「ストーリー」を「遺産」に。面白い試みです! これからもいろいろな自治体や文化財に注目してきたいと思います。

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