【マンガ感想】『模型の町』 (著・panpanya)
楽園コミックスで8冊目のpanpanya先生の作品集となる『模型の町』を読了しました。
先生の作品集も8冊目。
1年に1回ぐらいのペースでpanpanya先生の新刊が読めるという現状は、圧倒的な僥倖と言わざるを得ない・・・!
初めて『蟹に誘われて』を読んで衝撃を受けた時からpanpanyaワールドの虜になっているわけですが、今回の作品集も最高でした。
何事もない景色に何事かを見出し、何の変哲もない情景に変哲を作る、読者に思いもよらない新しい視点を授けるような作風は今作でも健在です。
今巻の収録作も、
・ノーヒントの状態から現在地を推理する旅物語『ここはどこでしょうの旅』
・「登校」という行為の可能性を徹底的に突き詰める『登校の達人』
・作者のブロック塀への愛が炸裂する『ブロック塀の境地』
・何とも言えない不思議な余韻を残す「学校の引っ越し」を描いた『解消』
・深夜の停電の町をパカポコと冒険する『夜ぼらけ』
・標題作である町の模型を主題にした連作『模型の町』
などなど、よりどりみどり。
標題作になっている『模型の町』シリーズは、今巻の収録作の中でも出色の出来栄え。
建物が取り壊されて空き地になった一角。
空き地になる前には何があった?
壁の色を塗り替えた住宅。
塗り替える前は何色だった?
見慣れた町のはずなのに覚えていない。
いつも見ていたはずなのに思い出せない。
誰しもが身に覚えがあるような、曖昧でモヤモヤとした記憶。
そんなモヤモヤでフワフワとしたものを形にしたような物語。
そして同時に、新しい視点や可能性に気づくことで、どんなに見慣れた風景も”新しい風景”として更新されていくという事を示している。
模型という主題で、これだけの物語を生み出せることに驚きます。
そして本作品集で個人的に一番のお気に入りが『夜ぼらけ』。
停電で真っ暗になった夜の町を、とある乗り物に乗ってパカポコと冒険するというお話なのですが、これが何とも暖かい作風で。
何というか、とても心地の良い夢を見ているような感覚。
上手く説明できませんが、これを読むと多幸感が半端ないです。
いつものごとく、明らかな不条理をもっともらしい理屈で不思議と納得させてしまうpanpanya理論で生み出されたシュールな乗り物も、とってもパカポコでカワイイなので良し。
これが夜の町を歩いているところ、ちょっとアニメで見てみたいなぁ、なんて事も思いました。
ということで、今作でもpanpanya先生の奇想天外なアイディア群を、たっぷりと浴びることができました。
毎回新作が出てくるたびに、その視点の斬新さや日常に潜む違和感を物語に落とし込む巧みさに感動します。
良質なpanpanya成分を摂取できて、たいへん満足です。
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