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【マンガ感想】『魚社会』 (著・panpanya)

2020年に発売された『おむすびの転がる町』から1年+α、ついに楽園コミックスにおいて7冊目になるpanpanya先生の最新刊『魚社会』が発売されました。

去年、panpanyaワールドにハマって全巻読破してから、ずっと新作供給を待ち続けていましたが、ついに、やっと!

今回も読むだけでQOLが爆上がりする、最高の作品集になっております。


年末年始の”季節の外れ”をトナカイを軸に描く『外れる季節』、鯛焼きの地域性による知られざる差異に迫る『鯛焼き遍歴』、”入口の見当たらない家”を巡るちょっと背筋がゾワっとする短編『秘密』、一つの石が辿る想像力を刺激する歴史物語『偶』などなど、今回も雑誌掲載作とWeb掲載作、短編も長編も合わせてよりどりみどりでpanpanyaワールドのフルコースです。


ヤマザキのカステラ風蒸しケーキへの飽くなき探求を描いた『カステラ風蒸しケーキ物語』シリーズは、今回も作者の偏愛を濃縮した名エッセイマンガになっています。

先生、どんだけカステラ風蒸しケーキにハマっとるんだ・・・

今やGoogle検索で「カステラ風蒸しケーキ」と検索すると、サジェストで「カステラ風蒸しケーキ panpanya」とか出てきますからね。

確かにこれを読むとカステラ風蒸しケーキを食べたくなりますが、残念ながら私は実物を見たことがありません。

食べてみたいね・・・

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(引用:『魚社会』 / 白泉社 / panpanya / p.134)

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作品集の題名にもなっている『魚社会』も最高でした。

ある日、魚達に足が生えて陸に上がり始め、漁港の水産加工工場で働き始めるようになる。やがて職を求めて次々と魚達が上陸するようになって・・・というお話なのですが、どんな発想力があればこのような天才的な展開を思い付くのか、訳が分かりません。

ちなみに、「魚が上陸」というキーワードで伊藤潤二先生の『ギョ』を連想して警戒する人もいるかもしれませんが、最終的にほんわかする作品になっていますのでご安心ください。

何とな~く現代労働環境のアレコレを反映しているようでもあり、人間と動物(魚)の共存についての示唆に富んだ話とも見れたり、これも人によって捉え方が異なる作品になりそうで面白い。

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(引用:『魚社会』 / 白泉社 / panpanya / p.47)

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そして、個人的に物語の展開にビックリしたのが『おみやげの心得』。

「理想のおみやげとは何か?」を考察する作品なのですが、途中からあまりにも予想外の方向へ物語が転がっていきます。

相変わらず奇想天外で現実離れした展開なのですが、妙にガッチリと理屈が通っている(ように見える)ので妙に脳が混乱する逸品。

なんでそんな話になるんだ! 最高過ぎるだろ! って感じ。

果たして、”理想のおみやげ”の結論とは何か。

旅行に行く度におみやげ選びに迷うような人に、ぜひ読んでいただきたい。

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(引用:『魚社会』 / 白泉社 / panpanya / p.158)

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いつも通り、読後の満足感がハンパない上、繰り返し読んでも全く飽きない素晴らしい作品集でした。

『カステラ風蒸しケーキ物語』シリーズで、作者がカステラ風蒸しケーキに対して「食えば食うほどに美味く感じる」と感じているのと同様、本作も読めば読むほど面白さが増していきます。

panpanya作品は、私にとってのカステラ風蒸しケーキ。

また次の作品がこの世に顕現するまでの間、本作も含めて過去作をじっくりと読み返していきます。



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