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極彩色の食卓~カルテットキッチン~

おはようございますkalikaliです。

今年の梅雨は何なんでしょうか。。
もう8月も目の前にも関わらず、毛穴の穴という穴にこれでもかという位浸透してくるミスト達。

やっと、やっとやっと布団が干せました。雨の降らない日と休みの全くタイミングが全く合わず、長い道のりでした。

洗濯物の臭いを嗅ぎながら畳む習慣がしっかり身についている今日この頃です。柔軟剤という素晴らしいものがある時代に生まれて本当に良かった。。。

でも雨が続くと”蚊”という危険生物に会いずらくなるので非常に良いですね。寝ていると不意に耳元で不意に聞こえる奴さんの羽音。

風物詩を飛び越えてホラーにしか私には思えません。笑
きっと血が美味しいんだろうな~。いっつも絶妙に関節の所から吸われるもんな~そこから吸うと格別なんだろうな~と毎回言い聞かせてます。笑


今回読んだのはみおさん著書の『極彩色の食卓~カルテットキッチン~』(ことのは文庫)です。
先日1巻目の『極彩色の食卓』の感想文を書かせて頂きましたが、今回はその続編。

前作の美大生の主人公とおばあちゃん天才画家は変わらず登場します。二人のその後と、主人公のアルバイト先の喫茶店の人たちとの関わりを描いた物語です。
前作同様に、美味しそうな食べ物が沢山出てきました。。
変わらぬ飯テロ具合が食欲中枢にびしびし響きます。

今回は音楽との関りが出てくる内容でしたが、音を色で表現したり、季節的な感覚が色彩感覚とリンクして伝わってくる感じなど、色彩表現の仕方が綺麗だと更に感じる作品でした。


1.登場人物

大島 燕

前作同様主人公。今作では音楽喫茶『カルテットキッチン』でアルバイトを始める。律子とは一緒に住み続けており、今年美大4年生になる彼はその後の進路を決める時期に差し掛かっていた。
再び絵を描けるようになった彼は、変わらず律子の傍で刺激を沢山受けながら彼女への感情も変わらず持ち続けている。

竹林 律子

60歳を超える女流画家。前作で燕との同棲生活を通じ、亡き前夫への気持ちに整理をつけ、一時期は描けなくなっていた”律子の黄色”を再び描けるようになった。全く同じでは無いが彼女にしか出せない色は健在。
自由奔放に描き続ける生活は継続中。燕との生活にもすっかり慣れ切っている。
音楽喫茶『カルテットキッチン』を最初に気に入り、彼と一緒に来店したことがきっかけで燕はアルバイトに応募することになった。

境川 桜

音楽高校1年生。『カルテットキッチン』の店主夫婦と、桜の両親が高校時代に4人でカルテットを組んでいた。桜の父親は病気で既に他界しており、母親は医者。母親の仕事の関係上転校も何回かしている。母親とのすれ違い生活に寂しさを感じているが表には出さないよう努めている。
幼馴染の夏生と共にカルテットキッチンでピアノの演奏をしているが、最近は人前でピアノが弾けなくなっている。

日向 夏生

桜と同い年の幼馴染。音楽喫茶『カルテットキッチン』の店主夫婦の息子。楽器を演奏する両親の影響で幼いころからヴァイオリンとピアノを演奏する。カルテットキッチンでは桜のピアノに合わせてヴァイオリンをお客様の前で演奏している。
桜のことを分かり易く気にしており、燕には何かと食って掛かる。燕に食事を出されるとおとなしく食べ出すなど、年相応な部分もある。

2.あらすじ

前作の主人公、大島燕は竹林律子と変わらず居住を共にしている。燕の律子に対する友達以上恋人未満のような感情は今回も健在で、むしろ少しずつ着実に成長している。
ある日律子と共に訪れた”音楽喫茶カルテットキッチン”。律子が雰囲気含めお店を気に入っていたのもあり、レパートリーを増やすのに丁度いいと燕はキッチン担当でアルバイトへ応募する。
面接当日、燕を出迎えたのは音楽高校に通う境川桜とその幼馴染でカルテットキッチンのオーナー夫婦の息子である日向夏生。
二人は練習もかねて、日ごろからお客様の前でピアノとヴァイオリンを演奏していた。

突然現れた長身の色白イケメンに桜はどぎまぎ。それをみた夏生はもやもや。燕は変わらずひょうひょうとアルバイトの面接に来たことを伝える。

燕の容姿から、奥さんオーナーの日向みゆきからホール担当に推されるが、即興で調理した燕の腕前が認められ晴れてアルバイト採用へ。

一方、お店で演奏をしている桜はある理由でピアノが人前で弾けなくなっていた。
桜の母親は医者をしており、いつも忙しく働いている。父親は桜が幼いころに既に病気で他界している。
桜の母親も父親も高校時代にピアノを弾いていて、カルテットキッチンのオーナー夫婦とは友人同士だった。
四人はピアノ・ピアノ・ヴァイオリン・チェロという、異色のカルテットを組んでいてお店の名前の由来にもなっている。四人の友情は大人になってからも続いていた。

一見無関係と思われていた桜と、カルテットキッチンの仲間たちと、律子との関係性が明らかになっていく中で、桜はまたピアノを弾くことが出来るようになるのか?
そして燕と律子の関係性はどうなっていくのか?という内容でした。

3.感想

今作は主人公の大島燕もですが、初登場の境川桜の目線も非常に多い作品でした。年齢・性別・ジャンルは違えども、音楽というものに向き合えなくなってしまっている桜の心情が燕が過去に乗り越えてきた部分と重なることもあり、燕が彼なりの優しさと向き合い方で桜のしこりのようなものをほぐす一助をしていきます。

そしてやはり安定の存在感を示してくれるのは律子さん。
彼女の過去のお弟子さん達との関係が今回は前作よりも多く出てきます。

淡々としている人物は誤解を受けやすかったりしますが、燕はやはり心根は人の気持ちを汲むことの出来る優しい人なんだと思いました。
律子もまた、彼以上に人の抱えているものであったり、辛さや闇の部分を感じて、彼女なりの形で内包する力があるのかなと感じます。
人って自分にないものを持つ人に惹かれるという話はよくすると思います。燕と律子に関しては逆に感性の部分でいうと近いものがある同志なのかなと私は読んでいて思っていしまいました。
近くて、感性の方向性はふんわりと同じなんだけど、律子には燕が考える範囲を超える力があるから、彼は彼女に惹かれてしまうのかな?と。

桜もまた同じく小さいころから表現するサイドの人で、繊細さとか優しさとかそれゆえの脆さとか、高校生にも関わらずたくさんたくさん秘めているものがある。
感性的な引き合わせの力のようなものを今作からは私は感じました。

家庭環境から生まれる小さな綻びのようなものって、年齢を重ねるにつれダルマ式に徐々に大きくなっていってしまうことがあると思います。
誰よりも近い関係性で、大きな影響力を与えるからこそ、その力は大きく、そして思っているよりも大分深く。
人間関係は一つ一つの積み重ねでしか築いていけないものという認識でいます。だからこそ小さい芽の内に何かしらの対処をしないと、戻れないところまで行ってしまう。
前作では悩み苦しみもがいた主人公が、今作は何だか頼もしく思えました。

それまでに感じた苦しみや痛みは、決して毒で終わる訳ではないということを主人公と桜の関係性を見て感じました。

最後は時間を越えて人と人との繋がりが桜の救いへと繋がっていくものだったので、読後感はほっこりする内容でした。

とても抽象的な感想が多くなってしまいましたが、悩んで食べてもがいて、最後には成長する。そんな素敵な物語でした。
温かい人間関係のお話が好きな方は、きっと面白いのではないかと思います。

4.飯テロメニュー

今回も変わらず燕の腕は振るわれます。
前回に比べケータリングっぽさや隙間時間に食べられる軽食のようなものも多く、あーこれ試験勉強とかしてる時に出てきたら最高なやつー。
と思いながら、食欲を激しく刺激されておりました。笑

特に気になったもの何点か。

闇色の黒ゴマポタージュ

桜と夏生がカルテットキッチンでピアノの練習をしている間に燕が作ったもの。夕食までの軽い繋ぎにというコンセプトの元作られたこのスープは、黒ゴマペーストを使用しているため、真っ黒。
玉ねぎとバターの香りに、特製コンソメスープと豆乳の組み合わせと間違いなく美味しい組み合わせ。
そこになんとカリカリ焼き目のトーストもセットで提供。

素敵にカフェメニューっぽいなと思いました。黒ゴマペーストって色が真っ黒で見た目のインパクトが強く出せますし、濃厚な風味も間違いないと思うので映えそうな、、、

コンソメが強めということは見た目より少ししっかり味なのかなと想像してしまい、ライ麦パンとかも合いそう…と勝手に盛り上がっていました。


土鍋ご飯にレトルトカレー

桜と夏生が律子に連れられて(攫われて笑)、律子宅で一泊することになったお話に登場。雨により停電してしまった夜、ガス火だけで出来るものをということで、土鍋ご飯としまい込まれていたレトルトカレーが活躍します。

コメを洗ってからしっかり浸水時間を取って炊き始めるので、中までしっかり水分が染み渡る上に、米粒一粒一粒がふっくらに。底にはおこげも出来ています。
カレーはレトルトならではの具が小さくてさらさらしているタイプだけど、ご飯によく絡む。そしてスパイスはしっかり効いている。

レトルト料理って、その人と場合によりけりかもしれませんが、登場頻度が少ない分記憶に残りやすいイメージがあります。
課外授業で外で食べたり、それこそ非常事態で限られた条件の中で作るなど。
誰かと一緒に食べたり、食べる状況自体が少し特殊だったりすると、むしろそれが凄く美味しく感じるというか。。あの時そういえば作って食べたよな~というように、思い出に残りやすい食べ物に思います。

どんな環境下においても人と囲む食事は、やっぱりプラスαの美味しさに繋がるんじゃないかなと思いました。



第二巻目になる『極彩色の食卓~カルテットキッチン~』。文章自体が全体通してとても優しく、前作からの関係性の繋がりも感じられる素敵な内容でした。感受性に響いてくる部分が今回もとても多く感じたので、読み終えた後の余韻みたいなものが私はすごく好きです。

電車広告につられて存在を知った本でしたが、読んでみて良かったと満足しております。




今回も乱文・長文、私的感想多々で失礼致しました。
ここまで読んで頂きありがとうございます!


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