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文学と政治学原論、と情報誌。

大学生の時、経済学部に所属していました。
私が通った大学は、経済学部に学科が2つあり、そのうちの一つは、珍しいことに、理系から入る学科でした。

統計学とか計量経済とか、数学を使った科目に特化した学科で、高校生の時に理系選択だった私は、その学科に所属していました。

ところが、高校生時代は別に不得意でなかった筈の数学は、大学生になるとやたらと難しくなり、ギリギリで単位を取得し、それからというもの、統計には全く触れていない人生です。
(私だけでなく、男子も女子も、大半の人が挫折していました。)

学科のメイン科目が苦手だった私は、それじゃあ経済の他の科目(例えばミクロ経済学とか、少し離れて経営学とか会計学とか)が得意だったかというと、そっちにもまるきり興味は湧きませんでした。

何で経済学部に入ったんだよ、って感じですが、いわゆるガッツリ理系な学部(工学部とか)で、自分が実験に明け暮れているイメージが湧かなかったんですよね。

それで私は、どんな科目の成績が良かったかというと、今でも覚えているのが文学と政治学原論。
科目名から分かる通り、前者は文学部の授業、後者は法学部の授業。

先ずは、前者から。
私が受けた文学の授業は、1つの作品を、半期かけて深読みしていく授業で、題材はスタンダールの「赤と黒」でした。
初めてのフランス文学。
上手く消化出来ないこともありつつ、割と熱心に授業を聞き、毎回のレポートは、腕が痛くなるまで書きました。
次の授業で、先生が、気になったレポートを紹介していたのですが、確か、そこで紹介されたこともあった気がします。

後者の政治学原論は、はっきり言って、相当難しかった。
政治学というと、他学部の学生は、現代の政治体制とか外交政策とか、そういう問題を議論するのかと思い浮かべますが、1ミリもそんなことはなく、政治学の原論、つまり、「政治とは何か?」みたいなことを、歴史を辿りつつ、現代の話も織り交ぜながら、知っていくような授業でした。

結構単位を取るのが難しい授業だとも言われていて、法学部でない私は割とチンプンカンプンだったのですが、最後の論述式のテストの後、良かった回答をまとめたPDFが送られてきて、
その中に私の回答もありました。
その時、他学部の回答が結構採用されていて、
「上位10名中4名が他学部です。法学部生、頑張れ!」みたいなことが、先生からのコメントに書かれていた気がします。

文学も政治学原論も、正直言って、実生活に何のスキルにもならない、知っていても知らなくてもいいような事かもしれません。
でも、それを真剣に議論する事に知的な刺激がたくさんあって、まぁ殆どは役には立たないけれども、何か物事の大きな流れを見たり、
本質を突いたりするときに、妙に後押ししてくれるようなことが、あるような気がするんですよね。

だから私は、こういう学びが大好きです。
スキルや知識を身に付ける事と学問とは、明確に違いがあり、それぞれに違う意義があると思うのです。

それで、今に話を移すと、私は今、旅行のガイドブックを作るお仕事をしています。
つまり、情報誌です。
情報誌というのは、ビジュアル面が優れていることと、出来るだけ新しい情報がふんだんに使われていることが肝です。

そのへん、新書なんかも、情報が新しいことが重要ですが、新書はまだ、「これ、ちょっと古いけど、ためになる本だよ。」みたいなこともあったりしますが、その点情報誌は、常に最新号だけが、唯一絶対の勝者なのです。
(雑誌とかで、昔のものが、ノスタルジックに感じられる事とかはあったとしても。)

時間が経つと価値がなくなるものを作ることに、何の意味があるのだろうと、時々感じます。仕事中、メールの下書きにこの文章を書いている今も、感じています。

ただ、川のように、いや滝のように流れていく情報を上手く扱うことも、1つの本の作り方であり、私にとって、1つの経験であるかもしれません。
大学時代のような経験が、深い海に沈む事だとしたら、今は絶え間ない流れに身を置く時期なのかも。

きっと多分、今は、私が苦手な「実践の積み重ね」という修行期間なのかもしれません。
手を動かして経験を重ねて、そして30代後半ぐらいになってノリに乗ってる人生になればいいと、最近はそのぐらい大きく構えるようにしています。

その道すがら、変な男に溺れるようなことだけは、無いように願います。
いや、長い目で見れば、それでも良いと思います。

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