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読書感想文に泣く、弟の後悔
私には2つ違いの姉と弟がいる。今日はその弟との思い出話をしたいと思う。
お調子者で、勉強はそこそこに、部活はサッカー部の副部長をやって、友達に囲まれいつもわいわいやっているタイプだった。
それは、私が高校を卒業した年の夏休みのこと。
私と同じ高校に通っていた弟は自分の部屋のベッドに倒れてうなされていた。
「大丈夫か?どないしたんや」と聞くと
「読書感想文が書けへん」と弟。
「あんた、夏休み今日で終わるやん」と言うと
「だから困ってるんやん」と宣うので
「ちょっと待っとれの」と弟の部屋を後にし、自分の部屋であるものを探しはじめた。
それは、毎年学校で作成される読書感想文の冊子で、クラス代表になった人だけがもらえるものだった。
私はなぜか2年連続で代表になったので2年分の冊子が手元にあった。
「これ、貸したるわ。参考にして書いたら?絶対丸写しするなよ」と釘を刺して渡した。
その日の夕方。
「これ、ありがとう!」と言ってその冊子を返しに来た。
特に何も思わず受け取ったが後にこれが大事件を巻き起こす。
夏休みが明けてしばらくした頃。弟が「ヤバいことになった」と青い顔をして帰ってきた。
そこにいた家族で「どうしたんや!」「何があったんや!」と聞くと、「読書感想文が校内選考で選ばれて」と弟。
「おぉ、よかったやん!おめでとう!!」
と一気に祝福ムードが流れたが
「良くない…だってお姉ちゃんのやつやもん」
もう、皆さんお察しの通りだ。
釘を刺したにもかかわらずこともあろうか彼は読んだこともない本の読書感想文を盗作したのだった。
大変だったのはそのあと。担当の先生が大変熱心に指導してくださり、何度も推敲に推敲を重ねることになった弟。なんと全国大会で入賞してしまったのだった。
推敲の過程で向き合わされる自分と物語との接点。一度も読んだことのない本の物語と自分との接点などあるはずもなく、先生には何度もやり直しをさせられ、良心の呵責に耐えかねた彼は、「もう懲り懲りや」と言って泣いた。
無事に表彰が済んだ後、それって誰の感想でもない謎の創作物だけがそこに残った。
今日、読み終えた本から顔を上げたとき、何となくそのことが思い出された。
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