ピリオドはわたしから

いきなり着信音が鳴る。
頻繁に連絡はしないけど何かハプニングがあった時には相談し合う友達からだった。いつも肯定しすぎず否定しすぎず、自分の軸を持った気遣いのできる子。いきなり前触れなく着信が来るなんて珍しい。

聞こえた第一声は、涙声で「終わりにしたよ」だった。
彼女は今そばにいないけど、部屋の質量がグンと重くなる。

彼女からは数日前に、気になる人がいるけど今距離を置いていると聞いていた。どうも心に傷がある相手みたいだった。
その話を聞いていたから、私もお別れすることへの辛さは分かるから。
第一声はお疲れ様だけ。それしか出なかった。

あなたは振られることと、振ること。どっちを選択したい?
振られる前に振ってやる精神の人もいるだろうけど、私は振る方が辛いしエネルギーを使う。

きっと、わざわざお別れをしなくても彼女と相手は自然消滅していく状態ではあった。
だけど、もしかしたら連絡が来るかもしれない。
もしかしたらこの噛み合っていない状態からまた噛み合うかもしれない。
そう期待し続ける時間は健康には良くない。それで彼女は自分から終わりを作った。

振られてしまったのなら。自然消滅していくなら。
有耶無耶な状態や未練に慰められることもできる。
だけど自分で終わりにするということは、その資格を剥奪されるということ。

「やっぱりまだ好きなんだよね」なんて過去に帰ろうものなら縁を切ると決めた自分を裏切ることになるし。相手を切るということは自分の一手で人を傷付けるということ。それでも私は前を向くと切りかかるのだ。
自分で選択するということはいつだって責任がある。

相変わらず彼女は強いなと思った。眩しいな。
自分の手元を見る。腐りかけた縁が何本か見える。
お別れすることが全てではない。
お別れしないのであれば腐敗を止めるために動けば良い。
けれど一度。この有耶無耶な状態は切ってしまおう。
そのままにしておいては不健康だよ。
手を動かし文字を打ち込む。決定のワンタップ。

ピリオドはわたしから。



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