第6章~数字の管理とは?②
1つ目のグラフ 年計グラフって何?
社長:「我社では、毎月の売上実績につき、折れ線グラフを作成してチェックしているよ。」 (グラフA)
社員:「この折れ線グラフですが、例えば、4月、10月は非常に数字が高いですが、その月は営業マンが頑張って成績がよかったんでしょうか。」
社長:「うーん、まあそれもあるが、毎年、この月はよく売れる月なんだよね。」
社員:「そうすると、このグラフを見て、4月、10月の数字は満足いく数字なのか、喜んでよい数字なのかがはっきり判らないような気がしますが...」
社長:「そうなんだよね。だからもう1つ、3年分の折れ線グラフも作っているんだよ。これを見てもらえば、過年度と比較すれば、よい悪いがわかるからね。」 (グラフB)
社員:「ですが社長、このグラフですけど、例えば、月によって、今期の方が売上が多い月もあれば、過年度の方が多い月もありますよね。そうすると、結局、今期はよいのか悪いのか、どちらなんでしょうね。」
社長:「まあ、確かにその通りで、今期はよかった月、悪かった月があるね。結局は、年間トータルでみれば、若干去年よりよかったということかな...」
社員:「…」
みなさんは、この折れ線グラフでどのようなことが思い浮かびましたか?
実は、このサンプル会社については今期、たいへんよい方向を向いて推移してきました。
毎月毎月、確実によい方向を向いて売上を伸ばしてきたのですが、折れ線グラフでは前述の会話の通り、その内容は一切わかりません。
「年計グラフ」というものを作って初めて明確に認識できるのです (グラフC=年計グラフ)
これが年計グラフです。
作り方はいたって簡単。
毎月、その月までの過去12ケ月の売上高合計額を出し、グラフにしただけのものです。
すなわち、 毎月、年商金額をグラフ化したものです。
たったこれだけのものですが、このグラフからはたいへんすばらしい情報が得られます。
まず、このグラフは、季節的な変動要因がすべて除去されています。
年間を通して、売れる月、売れない月というのがあり、最初のグラフのように、毎月の売上高は大きく上下するわけです。
しかし、このグラフは、すべて12ケ月間の数字を合計して取り込んでいるという意味で季節的な売上のブレをすべて吸収してしまっています。
したがって、ここに現れる傾向は、完全に成績の良し悪し、頑張ったか頑張らなかったかといった営業成績のみを直接表しています。
見方は、グラフの線が、真横を向いて進んでいるのか、右上を向いているのか、右下を向いているのかをチェックするだけです。
真横を向いて進んでいれば、前年と全く同じ成績であることを意味します。
右上を向いていれば、上に伸びた分、昨年よりも成績がよいことを意味します。
逆に右下を向いていれば、下がった分、成績が悪かったことを意味します。
例えば、10月の値が2,894百万円(10月時点での年商ベースが2,894百万円ということ)、そして11月をみると、右上がりになっており、値は2,960百万円(11月時点での年商ベースが2,960百万円ということ)です。
この差額の66百万円が何かというと、去年の11月の売上高と、今年の11月の売上高との差額を示します(グラフD)。
今年の11月は、去年の11月よりも66百万円も売上高が多く、成績がよかったことを示しています。
前の月の年計数値と比較していますが、差額はあくまでも前年同月との比較になります。
同様にして、すべての月で、前年同月との比較をし、悪ければ右下を向いているわけです。
サンプル会社では、グラフは年間を通して右上がりになっており、ほぼ毎月確実に前年ベースを上回ってよい方向に向いて推移したことが、一目瞭然でわかります。
「年計グラフ」なら、前述の社長もハッキリと社員に成績が良くなっていることを示し、評価できたかもしれませんね
「年計グラフ」で他に、何かわかることはあるのでしょうか?
次回に続きます!
分かりやすく経営に対する思いを伝えたい