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ラビリンスワールド【連続小説】(その22)

 カプセルホテルに戻り、マコトの言ったことをよく考えてみた。自分の周りで起こっていることは、自分が原因で起こっているという意味のことを言っていたよな。そういうことにするということは分かったが、こんな、最悪な人生を自分で創った記憶はないんだけどなぁ。それに悪口を言う奴はそいつが悪いに決まっているじゃないか。マコトさんは何を言っているんだ、と考えていた。

 次の日も同じようにインゴットづくりを行っていたが、気分はおもく1日を過ごすのがとても苦痛であった。仕事終わりにカフェに寄るとマコトがいたので、話しかけてみた。
「やっぱり、今の状況を自分で創ったなんて思えないのですが」
「そうですね。その気持ちはよくわかります。信じられないのであれば仮定として考えてみてはどうでしょう。つまり、今の状況は自分で創ったと仮定するという具合に」
「それならできそうですね」
「それじゃあそういうことにしましょう。今の状況を自分でつくったのであれば、自分で変えることができるということになりますね」
「そうなりますね」
「それじゃあ、今の状況を変えてみましょう」
「どうやって?」とマコトに聞き返した。
「考えや思い込みを変えてみるのですよ」
「考えや思い込みを変える?」
「そうです。考えや思い込みが今の状況を創っていると仮定してみましょう」
「今の状況は自分の考えや思い込みによって作られていると仮定する?」
「そうです。そう仮定するのです。理解できていますね。普通の人は常に頭の中で考え事ばかりしています。ショウさんはどのような考えをしていますか」
「明日何の鉱石を取ろうかとか、のどくらいの量を取ろうかとか。いやな奴にと会わないようにするにはどうしたらよいかとかですかね」
「気を付けてみてみると、頭の中ではひっきりなしにいろんな考えが浮かんで、いつも何かを考えていますよね」
「はい」
「まずは、少しでいいので考えを止める練習をしてみましょう。今ここにあるものに集中することで、頭の中の考えが止まります」
「そうなんですか」
「いつでもどこでもできるので、よく使われる手法は自分の呼吸に集中することです。息を吸い込むときの鼻から空気が入る感じ、空気で胸が膨らむ感じを感じます。息を吐くときも口から息を吐いている感じ、胸から空気が抜けていく感じに集中し見ましょう。呼吸に集中することによって頭で考えないようにします」
ショウはしばらく呼吸に集中してみることにした。(息を鼻から吸って、口からはく。あれ、これって考えてる?だめだ、呼吸をしている感覚を感じなければ。これってちゃんとできているのかな。あだめだ、また考えている、難しいな・・・集中、集中。コーヒーカップとソーサーが当たる音は大きいもんだな。静かにしているとよく聞こえるな。あれ、違うこと考えてる)
「ダメです。うまくできません」とマコトに伝えた。
「はじめは、うまくいかないものです。周りに人がいるから集中できないのかもしれませんので、カプセルホテルのご自分の部屋で練習してみてはいかがでしょう」
「わかりました」
そういって今日はカプセルホテルに帰ることにした。

これまでのストーリー

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