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ラビリンスワールド【連続小説】(その9)

 次の朝、起きてコーヒーを飲みたかったがゴールドがなかったのでカプセルホテル備え付けのウォーターサーバーの水で我慢することにした。水を飲み終えて、よし、いくぞと案内所の西の出入り口から庭にでてみた。左手の壁沿いに店が並んでおり、一番手前には薬局があった。体力が回復する薬や一時的に格闘技が強くなる薬などいろいろな薬が売られていた。ゴールドがあればいろいろな薬を買って、格闘技場でゴールドを稼げるのにと思った。店の向いには大きな屋敷がたくさん立っていた。
「うわー、大きい家だな。これは個人の家なのか」とひとりごとを言っていた。
 大きな家を見ながら西へ歩いて行くと、店の並びの先にガーデニングをする場所があった。この場所は細かく区画に仕切られており、それぞれの区画に名前の札が立っていた。案内係が言っていた花を栽培できる場所だということが分かった。大きな声が聞こえてきたのでそっちの方を向いてみると年配の女性と若い女性が言い争っていた。どうやら若い女性の育てた植物が大きくなりすぎて葉が年配の女性のスペースにはみ出しているのだが、数日間若い女性が放置していたので、言い争いになっているようだった。
ガーデニングエリアのさらに西には裏山となっていた。もっと奥まで進めそうだったが、勾配がきつくなり、足元が良くなかったのでこれ以上先に行くのはやめた。ガーデニングエリアの北側には住宅が広がっていたが、西の裏山近くの家は庭の出入り口近くの家と比べるとかなり小さい家がほとんどと言わざるを得なかった。住宅街を北に向かって歩くと、住宅街を抜けたところにも裏山があったが、西の裏山に比べ勾配は低く足元もよかったので北の裏山を探検してみることにした。少し山に入ってみると人だかりができていた。何をしているのかと思ってみていると、中年の男が声をかけてきた。
「お前もレアメタルを狙ってきたんだろ」
「いえ、ただ散歩しているだけです」
「うそつけ、こっちをジロジロみてたじゃないか。もう、何も残ってないぞ。残念だったな。俺は結構とれたから屋敷に戻って取引所で売ってくるぜ」
「来るのが遅いんだよ。こまめにSNSをチェックしてないと、お宝はゲットできないぜ」
と言って、足早に去っていった。さらに奥に進もうとしたところ、
「あったー」との声が聞こえたのでそっちの方を向いてみると、若い女性と年配の男性が一部銀色に光る石の取り合いでもみ合っていた。なかば強引に若い女性が年配の男性から石を奪い取っていた。争奪戦に負けた年配の男性は倒れたまま、起き上がれずにいたが周りの人たちは誰も見向きもしなかった。あまりにも起き上がれずにいたので手を貸してあげることにした。
「助けてくれるなんて珍しいな。新人か。お礼にいいことを教えてやる。他人に甘さを見せていると、蹴落とされるぞ。ここは弱肉強食の世界だからな」と言って足をひきずりながら屋敷の方にあるいていった。弱肉強食の世界か。確かにここの生活は弱肉強食という言葉が合っているなと、妙に納得した。
 更に奥にすすむと木が鬱蒼と茂っており、ゴロゴロとした大きめの石や岩が多くなってきた。とても歩きにくくなってきたのでそろそろ引き返そうかと思い、足元に目をやると腐葉土に覆われた石が目に留まった。なんか気になって腐葉土を払いのけてよく見てみると先ほど、群がって人々が探していた一部が銀色をした大きめの石だった。ラッキーこれを取引所でゴールドに替えてみようと考えた。早速、屋敷に帰って取引所でこの石を売ったところ、皆が探していた石の種類ではないようだが、大きさも大きかったことから3000ゴールドの値が付いた。「よし」思わず声が出た。このお金で何をしようか。そうだ、武器を買って格闘技場で勝負をして儲けようと考えた。武器屋に行って2700ゴールドの武器を購入して格闘技場に向かった。

これまでのストーリー


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