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ラビリンスワールド【連続小説】(その16)

 俺はバザーに戻ってバザーに出ている「銀の剣」の価格を調べてみた。80%のできの「銀の剣」の最低金額は3,600ゴールドから最高金額は5,200ゴールドまで売り出されていた。5,200ゴールドで買う奴なんているのかよ。頭悪いんじゃないかと思った。しばらく眺めていると3,600ゴールドの「銀の剣」は売れてなくなっていた。よし、3,600ゴールドなら売れるわけだ。俺は「銀の剣」の出品を取り消し、今度は3,600ゴールドで再び出品した。しばらくしてから、スマホに「銀の剣」が売れましたと連絡が入り、3,600ゴールドを手にした。このゴールドで再び銀鉱石とただの石と樫の枝をバザーで買うことにした。今日の価格は前回よりも安く、合計2,100ゴールドで買うことができた。早速、レシピ通りに作ってみたが、今回は失敗してしまった。目の前が真っ暗になった。失敗してしまった・・・これまで苦労して稼いだゴールドが一瞬にしてなくなってしまった。スマホで確認すると残り1,500ゴールドとなっていた。このゴールドでは銀鉱石と樫の枝をバザーで買うことはできなかった。
 仕方なく取引所を出て、気力を失いとぼとぼとカフェに向かった。格闘技場で戦っても負けてばっかりでゴールドが稼げない。素材を集めて武器や防具を作っても失敗したらゴールドがなくなってしまう。一体どうしたらいいんだ、と悩んでいたら、ユウカのことを思い出した。またゴールドをとられるがユウカに相談してみるしかないのかと思った。ゴールドがなくなってからではユウカに相談したくてもできなくなると思ったのでユウカを探すことにした。カフェの近くを探したが見当たらなかった。散歩も兼ねてユウカを探しに庭に出てみることにした。裏山やガーデニングに行くような服装ではなかったので庭の出入り口の工房を覗いてみることにした。薬屋の隣に薬工房があったので覗いてみると数人の女性と一緒にユウカが工房にいた。仲間の女性に何かを作るよう指示していた。俺はユウカのところに行って話しかけた。
「あのー」
「また、お前か。お前はあたしのストーカーか」
「ストーカーじゃない。また、困ったことになったので相談しに来たんだ。」俺は「銀の剣」が売れてゴールドが入り、その金で再び材料を買ったが、失敗したことを話した。
「それで、俺はどうやってゴールドを稼げばいいんだ」と俺はたずねた。
「教えてやってもいいが、今回の内容だったら1,000ゴールドはいただくぞ。前回みたいにまけることはできないぞ。それでもいいのなら教えてやる」
「俺が1,000ゴールド以上持っているのを知っていて、いっているな。わかったよ1,000ゴールド払うよ」
「ちゃんと1,000ゴールド受け取った。それじゃあ教えてやろう。お前はゴールドの稼ぎ方を何にもわかっていない。だから、あたしが教えてやるから、今日からあたしの仲間として働け。安心しろ、働いた分の分け前は与える」
「お前の仲間になるのか。俺が」なんでこんな金の亡者の仲間にならなければならないんだと思ったが、ゴールドを稼ぐ方法が分からなかったので、しぶしぶ承諾することにした。
「分かったよ。よろしくな」
「あたしはこのグループのリーダーだ。よろしくお願いしますだろ。それにあたしのことはユウカさんと呼べ。みんなそう呼んでる」
「よろしくお願いします。ユウカさん」くそー。ゴールドを稼いだらすぐに出て行ってやると思った。
「ちょうど、男手がいなくて困っていたんだ。仕事ならいくらでもあるぞ。まずはあたしがバザーで買った、石臼が取引所にあるからとってきてくれ。何かあったらスマホで連絡しろ」
と言われ俺はスマホで連絡先を交換した。
「わかりました」
といって、取引所に向かった。取引所につくとユウカが買った石臼が届いていた。石臼を持とうと思ったがとても重くて動かなかった。ユウカに電話した。
「ユウカさん、石臼は重すぎて持てません。どうしましょう」
「頭つかってよく考えろよ」と言われたので、しばらく石臼を見て考えていた。
よく見ると石臼は中央付近に横に筋が入っているのを見つけた。どうやら上と下に分かれるようだった。上と下に分けて運べば運べるかもしれないと思ったが、そうはいったものの、上は30kg、下は40kgあった。1時間ほとかけて、やっとの思いで石臼の上を薬工房まで運んだ。下の40kgを運んでいる途中につかれたのでベンチで休んでいると白髪混じりの中年の男性が通りかかって、
「かなり疲れているようですね」と話しかけてきた。
疲れてイライラしていてるのもあり、また、このおじさんにこの重い臼を運ぶのを手伝ってもらうのは無理だと思って、
「今しんどいので、話しかけないでくれませんか」といった。
「これは失礼しました」と言って白髪混じりの中年男性は去っていった。
その後再び40kgの臼を持ちあげ、薬工房までなんとか運んだ。とても疲れて立ち上がるのもやっとだった。
「ご苦労。まだ、あんまり働いていないが、もう今日は使い物にならないな。今日の仕事はこれまでだ。今日の報酬を受け取ってくれ。明日の仕事は通信アプリで指示するから朝9時までに確認しとけよ」
「分かりました」と言って今日の報酬500ゴールドを受け取った。これだけ働いてたった500ゴールドかと思った。

これまでのストーリー


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