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ラビリンスワールド【連続小説】(その21)

 ラビリンスワールドの出口も見つからず、トラブルに巻き込まれ、気分は最悪で頭が痛く少し吐き気もしてきた。悔しくて泣きながら歩いてカフェに向かった。
カフェでボーとしながら窓の外を見つめていると、隣に座っていた白髪混じりの中年男性が話しかけてきた。
中年男性「落ち込んでいるようですが、どうかされましたか」
ショウ「はい。いやなことがいろいろありまして」
中年男性「そうですかそれは大変ですね」
ショウ「聞いてくださいよ」
中年男性「今回は話をしてくれるのですね」
ショウ「今回?」
中年男性「私があなたに話かけるのは初めてじゃあないですよ」
ショウ「え、いつお会いしました?」
中年男性「3年ぐらい前、重そうな荷物を運んでいました」
ユウカに頼まれ、臼を必死に薬工房まで運んでいるときに声をかけてきてうっとうしい人がいたのを思い出した。
ショウ「あの時の」
中年男性「覚えておられましたか。私はマコトと言います。それで、今日はどうされたのですか」


 ショウはこれまでのことすべてを1時間以上かけてマコトに話をした。マコトはたまに相ずちを打ちながら静かにショウの話を聞いていた。話を聞き終わってマコトは
「名前はショウさんというのですね。それは大変でしたね」
「理解してくれて、うれしいです」ショウは少し気分が楽になった。
「このラビリンスワールドに来てからずっといいことがないんですよ。どうすれば、しあわせになれますか」
「しあわせになれますよ」とマコトは答えた。
「どうやってですか」
「意識を変えればいいんですよ。まずは自分に起こっているすべての責任を負うという覚悟が必要だと思います」
「意識を変える?責任を負う?」ショウには何を言っているのか全く理解できなかった。
「そうです。自分の言動だけでなく、自分のいる環境や出来事にも責任を負うということですよ」
「自分の言動ならともかく、環境までは責任はとれませんよ。環境なんて私の力では変えれませんから」
「そのような考えから変えていったらどうでしょう」
「無理ですよ」
「そう思っている限り、これまでと何も変わりませんよ」
「でも、無理なものは無理でしょう。環境を自由に変えられる人なんていませんよ」
「その考えを変えてみましょうとお誘いしているのです。まずは今、身の回りで起こっている全てのことの責任は自分にあると考えることにする。考えるだけですから、タダですしね。もし、途中でこの考え方が間違えだと思ったら、この考えをやめればもとに戻れますから」
「わかりました。ただそう思えばいいのですね」
「そうです。それがしあわせへの最初のステップだと思うんです。自分に起こるすべての原因が自分にあり、言動をはじめ環境も自分で創っているのだとすれば、自分で変えられるということになりませんか。他人は一切関係なく、自分で創っているのですから」
「そうなりますね」とショウはこたえた。
「そうすると、自分の望む言動や環境をつくるのに他人を変える必要はないんですよ」
「そうなりますね」
「そうでしょう。そうすると、自分が変わればいいだけですから思っているより難しくはないと思いませんか」
「そうなりますか・・・」ショウはマコトの話についていくのが難しくなってきた。
「理解が追い付いていないようですね。今日はこれまでにしましょう。また、興味があれば続きをお話ししますよ」と言って、俺たちは連絡先を交換した。
「1つ大事なことを言い忘れていました。しあわせへの道はこの方法が唯一の道ではありません。自分に合わないと思ったら、考え直せばいいですよ。私は強制しませんので、ご自分の意思で決めてくださいね」
「はい、わかりました」

これまでのストーリー


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