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ラビリンスワールド【連続小説】(その25)

マコトは安らぎの場所を探すための説明をしだした。

「ショウさんは今そそり立つ崖のふもとにいると想像してください。この崖を登らなければなりません。崖を登り始めてください。手はゴツゴツした岩をつかみ足は岩と岩の間のわずかなスペースを探して、つま先をかけて登ります。岩は固く、登っていると指が痛くなってきました。それでも我慢して登ります。時には腕力だけで上がらなければならないこところもあり、腕の筋肉がとても疲れてきました。少し休んでは崖の頂上を目指して登ります。
頂上までどのくらいあるか見上げてみると頂上はまだまだ先にあり、上を向いたときに砂が顔に降ってきて目に入って涙が出てきました。ようやく砂を振り払い、負けずに登っていきますが今度は雨が降ってきました。雨はだんだん強く降りだし登れないくらい降ってきました。雨が小降りになるまで崖の途中で休憩します。

頭の先からつま先までビショビショになりました。しばらく、耐えていると雨は小雨になってきたので崖のぼりを再開させます。岩が濡れているのですべりやすくなっているのでこれまで以上に指先に力が必要になってきました。

霧が出てきて、あたりがよく見えなくなってきました。それでも頑張って頂上を目指します。頑張って、頑張って、頑張って頂上を目指しますが、指や足の筋肉が限界をむかえたその時、霧が晴れ上を見上げるとあと少しで頂上にたどりつくことが分かりました。

最後の力を振り絞り頂上を目指します。やっとの思いで頂上にたどり着きました。そこは安らぎの場所です。ショウさんの安らぎの場所はどんなところですか」
「そこは緑一面の草原がひろがっています。草原を少し歩くと草原がお花畑に変わっています」
「そのお花畑に仰向けに倒れこみました。やっと頂上にたどりついたという気分になります。はい。この時の気分を覚えておいてください。このすがすがしい、何とも言えないここちよい気持ちが自分の内側にある安らぎの場所です。この安らぎの場所で静かに安らかに浸ってください。心地よさを味わってください。そうしているとフッと頭に浮かんできたりします。決して頭で考えて探さないでください。自然に浮かんでくるのを待ちましょう。いくら待っても浮かんでこないときもありますが、落ち込む必要はありません。日常生活を送っているときにフッと思いつくこともあるのです。しばらくこの安らぎの場所をあじわってください」

しばらくして
「あじわえましたか」とショウにたずねた。
「はい」
「なにかやってみたいことが分かりましたか」
「なんかガーデニングにひかれますね。あ、いや、男がガーデニングなんておかしいですね」
「その考え方を変えましょう。ガーデニングが好きならどんどんやればいいじゃないですか。なんの支障もないですよ」
「そうなんですね。でも、周りの目が気になります」
「他の人のことはおいておきましょう。ご自分のやりたいことをやってみましょうよ」
「・・・やってみます」
「そうです。ご自分のためです」
「ありがとうございました」
とお礼を言って、カフェを後にした。

これまでのストーリー


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