ラビリンスワールド【連続小説】(その12)
格闘技場に行き、弱そうな対戦相手を探していたところまたダイキと遭遇した。ダイキは「また、格闘技場に戻ってきたのか。昨日は尻尾をまいて逃げたしたくせに」と言ってきたので、
「今日の俺は昨日の俺と違うぜ」
「そういえば、横しまの服じゃないな。そういうことか。じゃあ、勝負しようぜ」
「いいぞ。その勝負、受けてやるよ。ちょうど対戦相手を探していたところだ」
新しい防具がちゃんと装着されているか確認し、勝負を始めることとした。
「行くぞ!」とダイキは叫んだ。
「かかってこい」
試合が始まった。始まったとたんにダイキが攻撃を仕掛けてきた。少し油断していたので、よけたがよけきれず攻撃を受けてしまったが、さすがに昨日と比べてよい防具を装着していたので、昨日までなら気を失っていたかもしれなかったが、今日はまだ戦えた。すぐさま、ダイキは攻撃を仕掛けてきたが、今回はうまくかわし、すかさず一撃をダイキにくらわすことができた。ダイキはふらついて倒れそうになったのでとどめを刺さなければとおもい、ダイキに駆け寄った。その時、倒れかかったダイキが突然振り向きざまの一突きが俺に命中して、俺は気を失った。目が覚めたらダイキが横から、
「防具は変わったが、たいしたことないな」と言ってきた。こんなはずではないと思い、
「さっきは油断したからだ、次こそ倒してやる」と俺はダイキに言い返した。
「望むところだ」
今度は、油断しないぞ。相手の出方を見て、相手の攻撃をかわしつつ反撃する方法で行こうと思った。試合が始まり、ダイキの攻撃をかわしつつ反撃のタイミングを見計らった。すきを見て渾身の一撃をくらわせたが、ダイキは気絶していなかった。この高い武器の攻撃をまともに食らったら大丈夫なはずないのだが。さらに試合は続きダイキの攻撃も何回か受けたが会心の一撃ではなかったので持ちこたえていた。こちらの攻撃も何回かあてたがダイキはまだ立っていた。だいぶ疲れていたので、よけたと思った一撃がよけきれず軽く当たっただけだったが、これまでのダメージが溜まっていたのか俺はまた気を失ってしまった。
目が覚めた時、ダイキに聞いてみた。
「昨日よりだいぶ強くなっているじゃないか」
「昨日のお前もその前よりだいぶ強くなっていたからな。なんで強くなったか不思議だったんだよ。だからな、昨日、後をつけさせてもらったぜ。そしたら、北の裏山に向かっていたので何があるんだろうと遠くから眺めていたら何やら石を拾っていたのが分かった。お前がいなくなった後にそこに行ってみると、青い小さな輝きのある石を見つけたんだよ。ショウはこの石を探していたに違いないと思たんだ。それで、一晩かけて、ありったけの石を集めて、売ってゴールドにして、武器と防具を新しいものに替えたのさ」
「卑怯だぞ。コソコソ人の後をつけるなんて」
「何言ってるんだ。この世は弱肉強食の世界だぞ。そんなこと言ってるから勝てないんだよ」
ショックを受けた。どおりで、今朝、石を探しても見つからなかったわけだ。もう1試合しようと誘われたが、ダイキと勝負する気はないと断った。
その後、勝てそうな相手を探して格闘技場をうろうろし、横しまの服を着た奴を見つけて無理やり何試合かさせ、勝ってファイトマネーを手にした。格闘技場から帰る際に、試合でやっつけた横しまの服を着ている人がベンチでうなだれているのを目にした。試合には勝ったが、あまり良い気分ではなかった。ダイキと戦ったあとは俺があの人のようになっていたことを思い出していた。勝っても負けても、心から喜べないなと感じたが、そんなことを思っていたらいつまでたっても弱いままだと気持ちを入れ替えることにした。
しかし、明らかに弱そうな相手には勝つことができたが、少しでも格闘技場で経験を積んだ人にはなかなか勝てなかった。負けてもファイトマネーは入るので、辛抱して格闘技場で戦い続けたが、ほとんどが負けで勝つことはまれだった。
「格闘技は向いてないんじゃないか」とひとりごとを無意識のうちにつぶやいていた。
格闘技以外で何かゴールドや経験値を稼ぐ方法はないものか。武器や防具をつくれば、ゴールドは稼げる。経験値も入ってくるのではないかと考えていた。明日は工房に行ってみようと思った。いろいろ考えて疲れてきたので、カプセルホテルに戻って休息することにした。カプセルホテルの入口の横に案内所があるので、案内所の人に工房で経験値は稼げるのか聞いてみたところ、稼げるとのことだったので、これは一石二鳥だなと思った。ついでに案内所の人に工房での稼ぎ方を聞いてみた。案内所の人によると、まず、工房でゴールドを払ってレシピを入手し、そのレシピに記載の素材を拾うか取引所など購入して入手する。素材がそろったら工房の場所と道具を無料で借りて作製するという流れのようだ。作るための場所や道具は工房にしかないので、工房以外のところで作ることはできない。素材を探すのはあまり好きじゃないが、こっちの方が俺には向いているかもしれないと思った。しかし、手先はあまり器用でないからうまく作れるか不安があった。
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