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ラビリンスワールド【連続小説】(その20)

 やめた次の日から裏山に登って鉱石を探してはインゴットにする仕事を始めた。これまで、数年間、やってきただけあってどこに行けば鉱石が取れるかはわかっていた。また、ユウカのところで何回もやってきたのでインゴットにする作業も失敗しないで作れた。しかし、高く売れるインゴットの原料となる鉱石は思ったほど取れず、ユウカのところで毎日もらっていたゴールドよりも少ない稼ぎだった。まあ、ユウカのところであの人ひと達と働くよりましだと思った。
そんな生活を数か月していたある日、石を集めている最中に何気なくスマホで自分のレベルを見てみると、レベル18になっていた。よし、レベル18になった。これで、ラビリンスワールドの生活ともお別れだ。石を集めるのをやめ、急いでL18禁のエリアに向かった。L18禁のエリアの入口にある電子錠にスマホをかざしてみた。しばらく間があったが、電子錠が開き念願のL18禁エリアに入ることができた。
「やったー。ようやく入れたぞ」と思わず声にだしていた。
L18禁エリアに入るとそこにはこれまで見たこともない高級な武器や防具を売っている店や雑貨屋、服屋、家具屋があった。出口はどこにあるのかと探したところ奥に扉が2つ並んでいた一つの扉には「L30禁」と書いてあった。
「L30禁って。気が遠くなるな」と思った。
もう一つの扉には「ラビリンスワールド出口」と書いてあった。ようやく出口を見つけた。やっとここから出られると思いドアを開こうとしたが、開かなかった。電子錠があったのでスマホをかざしてみたが、どうしても開かなかった。ドアの横に目をやると注意書きがあった。
『この出口を開けるにはL30禁エリアにあるパスコードをスマホで読み取り、出口の電子錠を開錠してください』と書いてあった。目の前が真っ暗になった。終わったと思った。

 ショウは気が付けばカプセルホテルのベットに横になっていた。どうやってL18禁エリアからカプセルホテルに帰って来たのか、記憶がなかった。それから、1週間動く気力もなくカプセルホテルのベットで過ごした。
1週間後にようやく外に出る気になってきたので、石拾いをしてインゴットを作る生活に戻っていった。
 シルバーラビリンスの素材工房は1つしかないため、ユウカのグループと度々出くわすことがあった。ボーとした状態でインゴットを作る生活をしていたある日、俺がインゴットづくりをしていると隣で作業していたユウカのグループのナナが騒ぎ出した。
ナナ「ユウカさんさっき作った鉄のインゴットを見かけませんでしたか」
ユウカ「いいや、見てないぞ」
ナナ「今から使うので、さっきここに置いておいたのですが、ないんです」
ユウカ「そこらへんに落ちてるかもしれないから周りをよく探してみろ」
ナナ「さっきから、いろんなところを探してみたのですがないんです。そうなると、ショウが盗ったとしか考えられないんです」
ショウ「なんだと」
ユウカ「ショウお前とったのか」
ショウ「俺じゃないですよ」
ナナ「じゃあ持ち物調べさせてもらうわよ」
ショウ「ああ、いいぞ。なかったらただじゃおかないからな」
ナナ「スマホ貸しなさいよ」
ショウ「好きにしろ」といってナナにスマホを渡した。
しばらく、ショウの持ち物の欄をスマホで確認していた。
ナナ「今日、鉄のインゴット使った」
ショウ「いいや、今日はクロムのインゴットを作ってるだけだ」
ナナ「じゃあ、この鉄のインゴット1っていうのはなによ」
ショウ「え!そんなはずはない。貸してみろ」スマホの中身を調べてみたところ、ナナのいうとおり、鉄のインゴットが1つ持ち物の中に入っていた。なにがなんだか、訳が分からなくなった。
ショウ「え、その、あの、これは・・・」
今日のことを思い出していた。今日は朝からクロムの鉱石を集めて、素材工房にきて、クロムのインゴットをひたすら作っていただけだ。そういえば、
ショウ「わかった。さっきつ作ったクロムのインゴットを入れたときに間違って鉄のインゴットも入ってしまったんだ」
ナナ「うそつかないで、盗ったんでしょう」
ショウ「違います。ユウカさん信じてください。間違って入ってしまっただけです」
ユウカ「今回だけは許してやる。次やったらタダじゃあすまないよ」
ショウ「すみませんでした」ショウは逃げるように素材工房を後にした。

これまでのストーリー

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