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「ナイトレース2連戦を許さない」F1 2022 Rd.2 サウジアラビアGP F1問わず語り #2

 (全文無料)

 あなたはF1のナイトレースが好きだろうか。シンガポールで2008年に初めてナイトレースが開催されてもう14年になるが、私はどうにも好きになれない。ゴルフのトーナメントと同じように、F1は昼間のものだと思っている。

 確かに、ナイトレースにはナイトレースにしかない特長がある。夜ならではの光の演出が可能だし、花火は美しい。発熱して赤々と火を吹くブレーキキャリパーはいかにもフォトジェニックだ。だから、カレンダーのうち1戦くらいはあっても良い。トワイライトレースも、まあぎりぎり許そう。でも、開幕からいきなり2連戦はない。

 午前2時スタートは、日本のF1ファンにとって非常に過酷だ。北米ラウンドの早朝スタートも辛いが、それは時差によるものであり、地球の自転に文句を言ってもしょうがないので、そこは仕方がない。世界を転戦してこそのF1なので、その睡眠不足はF1ファンなら快く払うべき代償だろう。でも中東のナイトレースは違う。光の演出のためなのか。北米の視聴者のためなのか。観客の少なさを隠すためなのか。理由はわからないがいずれにしても、納得のいく理由もなしに、好きでもないナイトレースのため不規則な睡眠を強いられる。これはないだろう。来シーズンからは私が許可しない。

 さて、サウジアラビアGPは今シーズンで2回目となったが、このGPを観ていると何か哀しい気分になるのは、私だけだろうか?サウジアラビア・ジェッダは中東の開催地としては後発だが、趣向が凝らされており、確かにその演出は見ものだ。表彰台もどこのGPよりも豪華である。でも、演出が派手であればあるほど、美しければ美しいほど、どこか哀しく空虚なのだ。F1の歴史がまだ浅いサウジアラビアで開かれるGPは、所詮はマネーでできた作り物という感がどうしても否めない。ショーアップはいくらでもできても、文化はお金で作れないのである。それが哀しく寂しい。サウジにも、レースに情熱を抱いて運営に携わっておられる方がおられるに違いない。だからいつか、演出に頼らずにお昼にやろう。その時は応援する。

 さて、前段はこのあたりにして、サウジアラビアGPについて書いていこう。

・予選で赤旗。1時間の中断

 Q2でミックの大クラッシュがあり、その後、長い中断となった。ビアンキの事故のことを思い出す。あの事故は、セーフティカー中の出来事だった。2014年の鈴鹿、その時にはすでに事故が起きていたのだが、映像は顔色を失うメカニックやエンジニアたちを映すばかりで、テレビで観ている私たちは何が起こったのか、まったくわからなかった。今回も、クラッシュ後、リプレイ映像やドライバーの映像がしばらく流れず、あの時の記憶がよみがえってきて、心配になった。結果的に、ミックはほぼ無事で、何よりだった。あのコンクリートウォールは以後何とかしてもらいたい。

 中断は長時間にわたったのだが、生で視聴している方はこのような長い中断がある時、どうしておられるだろうか?再開を待つ間にも、確実に睡眠時間は減っていく。それでも待つか、もう寝るか。近くで電車が停止していて踏切の遮断機が長時間上がらなくても、あきらめずに意地だけで待ち続けるタイプである私は、再開まで見続けるタイプだ。それもF1の一部だとさえ思っている。昨シーズンのベルギーは辛かった。待ち続けても報われないこともあるが、今回の予選は1時間ほどで再開された。

 予選を制したのは、セルジオ・ペレス。メキシコ人として初めてのポールポジション獲得となった。


・角田、グリッドにたどり着けず

 角田は、レコノサンスラップ(覚えたての言葉)中のトラブルで、グリッドまでたどり着けずその時点でリタイアとなった。でも、私たちは角田の走り(ランニング)を忘れない。

・ピンク色同士の攻防

 前半戦の大きな見どころとなったのは、ピンク色のマシンを駆る二人、アロンソとオコンのやりあいだった。吹き出しを付けたくなるような二人の攻防は、背中で語るピットウォールも込みで、素晴らしいエンターテインメントを提供してくれた。

・ウォールの似合う男、ラティフィ

 速くないのにレースを面白くする天才、それがニコラス・ラティフィだ。彼ほどウォール際が似合う男はいない。走行シーンより停まっているシーンの方が良く見る。彼の走行シーンが中継映像に映りこむことはあまりないが、注目せずにはいられないドライバーである。動きの少ない前半戦を、ラティフィの走行というか停車は上手いことかき回し、レースをより興味深いものにした。あおりを食ったのは、ポールシッター、ペレスである。フェラーリの陽動作戦につかまって先に動かされ、その直後にラティフィのクラッシュでセーフティカーが入った。このレースでは、無難なスタートを決め、ペースも良く、視界良好だったが、最終的に4着。なんとも悔しい結果となった。それでも、モチベーションを崩さず、よく走り切った。またチャンスがあるだろう。

・さり気ない男、ジョウ

 個性的な人間ぞろいのF1ドライバーの中で、ジョウガンユほどトラック上で気配を消すのがうまいドライバーも多くないだろう。ピットストップで5秒待てずペナルティを消化できないという、およそ考え得る限り最悪のミスに見舞われたジョウだったが、前戦同様、気配を消しながら少しずつポジションを上げて、最終的には11位でレースを終えた。信頼性に不安を抱えるチームの多い今季、気配を消し、忍者のようにするするとテーブルをよじ登るジョウの動向にも注目だ。

・リスペクト

 そういえばF1は紳士のスポーツだった。忘れていた。昨シーズンの、意地と意地がぶつかりすぎて手段を選ばなくなっていった後半戦も、あれはあれで面白かったが、このレースでのフェルスタッペンとルクレールのバトルは、昨シーズン見られなかったレース本来のすばらしさを再び表してくれた。今季後半、選手権争いが激化したときにも、このようなフェアで美しいバトルが観られたなら、本当に素晴らしいシーズンになるだろう。

 次戦は、メルボルン。ナイトレース否定論者でなくとも、私の世代以下のF1ファンにとって開幕戦といえば、オーストラリアGPである。レースは日本時間14時スタート。逆に観られない時間でした。


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