ナウなヤングと鍾乳洞福島後編
前回までのお話はこちら
ももに感動し過ぎて尺を見誤り、意図せず超大作になってしまった福島。
現在の状況を軽く説明すると、鍾乳洞でカップルの女性側にキューピッドもしくは殺人幇助を持ちかけられている。
「あの、落とすってどういう…」
「そんなの言わなくてもわかるでしょう!」
お姉さんはきっと私を睨み、そしてすぐにうっとりと彼を見つめた。
「ああ見てあの背中、今すぐ飛びつきたい」
愛…?それとも飛びついてそのまま柵外へ…?
「彼なかなか難攻不落で…」
不落?物理的に?
「押しても押しても全然落ちないの」
物理的に…?(再)
お姉さん、温泉の一件で今私警戒心MAXなのよ。不穏フィルターかかりまくりなの。頼むから紛らわしい言い方やめて…
「恋愛的に、という意味で合ってます?」
「それ以外なにがあるのよ?!」
初対面の人に頼みごとをするのに随分高圧的なお姉さんだ。怒らせたらタダでは済まなさそうなので「そんなんだから選ばれないのでは?」という言葉はぐっと飲み込んだ。
「私はなにをすれば…」
まあネタにもなるしいいかと思い、私は彼女と作戦を練ることにした。
「彼と私の会話が盛り上げなさい」
え、ハードル高…
「うまくいかなくても知りませんよ?」
「いいから」
言ったな?いいんだな?責任は取らなくて良いという言質をとったので好きにやらせてもらおう。
そうこうしている間に彼が戻ってきた。
「おかえり♡どうだったぁ?」
先ほどの会話からは考えられないくらい甘ったるい声で彼女が彼に話しかける。
「よっ ボイスチェンジャー」
すかさずあいのてを入れると、ビームが出てくるんじゃないかというくらい鋭い目で睨まれた。
べろべろべー残念でしたー彼がいるところでは攻撃できませんー。滅多にないチャンス、どこぞの男女の恋物語より撮れ高絶対優先なのだ。
「ボイスチェンジャー?ってか吉田さんどこ行ってもすぐ友だちできるね。さすが」
彼め、スルースキル高めか。こらお姉さん、いや吉田、彼の死角で勝ち誇った笑みを浮かべるんじゃない。ってかまんざらでもない雰囲気じゃないか。私を巻き込まずとも自力でいけよ吉田。
「すごかったよ〜。自然の力と歴史を感じたよ。吉田さんも見ておいで」
「うん♡」
吉田は従順に返事をすると、手すりの方へ向かっていった。吉田、彼と私をふたりにするなよ。
「あの、吉田さんのことなんですが」
「どうしたんですか?」
「オトすの、手伝ってくれませんか…!」
お前もかーい。「はいはい、両想い両想い」と私の中のノンスタイル石田も呆れ顔だ。
「まあいいですよ。私は何をすれば?」
「僕が下を指差し覗き込ませるのでそこを狙ってうしろから押してください」
えそっち?
あーーーーーもう、吉田のせいで油断した。
おい吉田、こんなやつのどこがいいんだよー。
「待ってください物理は想定外でした。100歩譲って手伝うとして、それだと私だけが罪に問われますよね?」
「チッ」
「舌打ちすな。そもそもどうしてそんな物騒なことを?」
私が尋ねると彼はいきなりもじもじし始めた。
「彼女あまりにも素敵で、すぐ誰とでも仲良くなってしまうから僕なんか届くわけもなくて。1番になれないなら恨まれてもいいからせめて、1番最期の記憶になりたくて…」
結局両想い!!いやこんなとこふたりで来てるくらいだしそりゃ両想いだわ自信持てよ。自己肯定感低過ぎて変な方向に行ってるわ。
「吉田ぁ!岩見てないで告れ!殺されるぞー」
「な、え、は?!?!」
吉田の顔は赤くなったり青くなったり忙しい。もーいちゃいちゃ茶番に巻き込むなよ。
その後とりあえず死者はでなかったものの、吉田と彼のきゃっきゃウフフに小一時間挟み込まれて私の心は死んだ。鍾乳洞、ひとりでゆっくり満喫したかった。
でもまあこうして文字数も稼げたわけだし、今日のところは許してやろう。吉田、お幸せにな。彼氏は吉田を全力で生かすように。
ももは反対向ければハートなわけだし、まあ恋も福島旅行の一部ということで
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