読書感想文:「外資系コンサルが教えるプロジェクトマネジメント」山口周著
山口周さん好きです。「世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?」も、とてもおもしろかった。様々な新たな視点や気づきを与えてくれるけど、論理がしっかりしているので、気を衒っている感が全くなくて腑に落ちます。
そんな山口周さんのプロマネ本。
感想3つ
1、プロジェクト成功率を上げる秘訣、それはリソースに余裕を持つこと
山口さんは10年以上コンサルタントとして働いてきて、プロジェクトを炎上させたことがないと自負されています。その秘訣は、何も難しいことではなく、シンプルに勝てるプロジェクトを選ぶこと。勝てるプロジェクトの条件の一つがリソースを豊富に持つことだと説明しています。
当たり前やんという感じです。
プロジェクトは基本、当初の予定通りには進まない。異常事態を想定したリソース配分をしているか。定常飛行を前提にリソース調整してはいけない。
それもまぁ、真新しい話でもありません。
でも考えさせられませんか?
自分が普段プロジェクトを進めるとき、豊富なリソースを確保する努力をしているかどうか。プロジェクトに役立つ人材を引き抜く努力をしているかどうか、納期まで十分なプロジェクト期間を確保する努力をしたか。
豊富なリソースを用意してくれないなら、僕にはこのプロジェクトのPMはできないと言え!と指南されています。プロジェクトが失敗すれば、それはPMの責任として印象が付いてしまう。失敗が分かった時点で「リソースが足りなかったんだ!」といくら言っても、言い訳にしか聞こえない。
これはFusicのエキスパート伊藤さんに、私がとある案件のPMを担当するときに、同じようなアドバイスをされたことがあります。「これはこうこうこういう理由で会社として絶対に失敗の許されないプロジェクトです。スタートで失敗して炎上して、後でその火消しに余計なリソースが必要という状況にならないように、確実に成功できる最強の布陣を作りましょう」と。
ちなみにマーケティングでは、いつ、どんな組織、どんな状況でも、リソースというものは限られているのが普通で、いかにその限られたリソースを配分するかが大事だと学びましたが、こういう考え方もあるのですね。
それと、若干別件ですが「相手に何かをお願いされたら、トレードオフを即座に提案する」という考えが刺さりました。後ではダメだと。その場なんだと。お願いする側というのは、なんらかの引け目がある。引け目を感じているだろうその時に別のことを妥協させるべきだと。例えば、お客さんにタスクの追加を依頼されたとします。そうしたら、その場で納期かコストか影響するものをトレードオフとして、その場で依頼をしなくてはダメです。後になって、あの時のタスク追加が響いてと言っても、その話は一旦終わっているので、こちらが新たな依頼をしているような形になり、借りを作ってしまいます。
2、フィードバック大事!
この本を読んだ自分のメモで「フィードバック」に関することが割と多かったです。
チームメンバーに対して、何かに気づいたらその場でフィードバックしよう。
タイガーウッズにはコーチがいる。そのコーチは、ゴルフの腕ではタイガーウッズに劣る。なぜコーチが必要なのか。適切なフィードバックをしてくれるから。
プロジェクトが終わったら関係者からフィードバックをもらおう、逆にフィードバックをしよう。
フィードバックはbeingに対して行ってはいけない。つまり人格否定的なことをしてはいけない。フィードバックはdoingに対して行う。「罪を憎んで人を憎まず」「ミスをした人を責めるのではなく、ミスした仕組みを改善する。」にも似ている考え方でしょうか。
自分はフィードバックに関してはあまり意識がなかったので、改善したいと思いました。
3、リーダーシップは大事だし誰でも身につけられる!
著者は、スキルには大きく三種類あると書いています。
1、その会社でしか通用しないもの
2、その業界、職種でしか通用しないもの、
3、どの職種でも使えるもの。
3を身につけるといいですよと。そして、プロジェクトマネジメントやリーダーシップは3に属する。リーダーシップはぜひ身につけた方がいいスキル。
リーダーシップというと難しそうに聞こえるけど、誰でも身につけられる。大人数を動かすようなリーダーじゃないとリーダーシップが発揮できないというのは思い込み。世の中は意外と小さなリーダーシップが、最終的に歴史に残るような大きな変化に繋がったりする。自分が信じること、自分が正しいと思うことを、遠慮するのをやめよう。
生まれつきリーダーシップを備えている人はいない。リーダーシップはリーダーらしいdoingを重ねる中で磨かれていく。ではどういうdoingをすればいいか。集団の中で真っ先に発言すること。一番最初に話した人がリーダーになるものらしい。質問を求められたら、まず真っ先に手を挙げよ。質問の質はこだわらなくていい。
リーダーとしての心得も教えてくれます。
優れたリーダーは嫌われる。優れたリーダー、例えばガンジー、JFケネディ、坂本龍馬、皆が尊敬するリーダーに共通すること、答えは本書に譲りますが、その例えがなるほどすぎました。
だから嫌われることを恐れてはいけない。
勝海舟の言葉に救われる。
リーダーだから間違わないなんてことはない。リーダーも間違える。メンバーから正されることもある。でもそれで肩を落とす必要はゼロ。それこそチームでやっている意味なのだから。大事なことは間違えたら普通に認めて謝ること。
リーダーはメンバーを比べてはいけない。人間は比べられることを恐れる生き物。余計なストレスを与えない。私はそんなことハナからしないけど、そういうリーダーを見つけたら注意しよう。
リーダーの大事な仕事の一つは組織の「目的」を決めること。率先垂範のリーダーが活躍するチームは限定的。