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ヴァンパイア作品研究

ヴァンパイア作品研究なんて大層なタイトルにしてしまったが、ヴァンパイアと切っても切り離せない色恋の側面から「ヴァンパイアコンテンツオタク」として好き放題言っていこうと思う。

ヴァンパイアにハマり出したのは、おそらく小学校高学年〜中学生の頃だ。海外児童書のメディエータやヴァンパイア・ガールズ、ユリエルとグレンにはじまり、映画トワイライト。そして漫画は、私とこわれた吸血鬼、デビルズライン、ヴァンパイア騎士。吸血鬼のBL作品もよく読んだ。そんな作品たちの共通点から、ヴァンパイアを描く上で欠かせない要素のようなものが見えてきた。それは、吸血するために人間を惹きつけてやまない美貌、万年生きるゆえの悲恋と孤独、ヴァンパイア一族についてまわる身分や階級といった権力闘争だと思う。


まず、その美貌。吸血鬼にとって、細身で長身であること、陶器のような白い肌に血を連想させる赤い瞳、どこか生気のない雰囲気はマストのようだ。彼らの美貌はそのまま吸血シーンに活きてくる。吸血シーンというのは、ヴァンパイア作品で何よりの盛り上がりを見せる。なぜなら主人公の運命の歯車が狂いだすきっかけになる…いや、白状します。エッチなんだ!エロいんだ!ヴァンパイアすなわちエロと言っても過言ではない。子どもながらにその公式をなんとなく理解していたから、邪な気持ちでヴァンパイア作品を見漁っていた、というのもある。

そして吸血にもパターンがある。吸血行為によって人間が快楽を感じる場合や、ただ痛みだけを感じる場合など、設定はいろいろだ。快楽を感じる場合は、吸血鬼の牙から媚薬のようなものが出てきて痛み止めがわりになることが多い。だが、苦痛しかないという場合も、どういうわけか、なんだか官能的なのだ。

そのエロティックさは、人間サイドでいうと「自分を簡単に殺せる得体の知れない存在に身を任せてしまっている」というスリルや背徳感からくるのかもしれない。愛欲と恐怖の間を行ったり来たり。生命の危機に瀕しているからこその、吊り橋効果的なやつだ。

吸血鬼サイドでいうと「エサであるはずの人間に吸血欲以外の感情がある」という複雑な葛藤や、これまた本能に背いているという背徳感が旨みを増幅させていると思う。吸血鬼が吸血衝動に駆られながら、愛する人を殺さないように必死に耐える様子というのはまさに、ゴクリ…という感じである。


それで吸血鬼に噛まれると仲間になるのか否か、という話だが、これも設定はさまざまだ。

仲間になるパターン
①血を吸い切らない(殺さない)
②吸血鬼の血を吸わせる
③一部の吸血鬼しか人間を仲間にできない
④何らかの儀式を行う

ほとんどが、吸血鬼が人間を仲間に引き入れるには何らかの条件があって、吸血行為だけではどうにもならないことが多い。後に触れるが、そもそも人間を仲間にする行為が吸血鬼の禁忌というパターンもある。ゾンビ映画のように吸血鬼がどんどん増えても面白くないので当然かもしれない。


さあ、上記のいずれかの方法で愛し合う2人が禁忌を破り、人間の主人公だかヒロインが吸血鬼になったとする。そこで彼らを待ち受けるのは、吸血鬼が築き上げてきた権力社会における闘争だ。吸血鬼は純血主義であることが多く、良家出身で混ざりけのない血を好む。「純血」に近ければ近いほど、権力や能力は強大さを増す。そういうわけなので、エサであるはずの人間が吸血鬼になるなど言語道断、吸血鬼本部は聞き捨てならないのだ。吸血鬼本部って何だよと思うかもしれないが、純血の吸血鬼で固められた上層部というか、役員会というか、そんな感じの機関が存在するのだ。人間のお偉いさんたちと繋がっていたり、人間と吸血鬼の争いを仲介したり、均衡を保つ、みたいな役割もあったりなかったりする。そしてやっかみをいれてくる。


そのすったもんだの回避パターンとして多いのは、
①主人公が実は純血のヴァンパイアだった
②主人公が実は「稀血(まれち)」でなんだかんだ認められる
③駆け落ち

ヴァンパイア初心者の方は③以外、どゆこと?になると思う。①は出生が曖昧な主人公に多い。主人公自身も純血のヴァンパイアであることなどつゆ知らず、人間として生きていたというパターン。吸血鬼としての本能や能力が眠っていたのか、何らかの力や誰かの思惑で「眠らされて」いたのか。ここでも色々なドラマが展開される。その後は逆転劇で、白い目で見られていた主人公が覚醒する様子や、純血だと知るや否やひれ伏す吸血鬼たちの後頭部を見るのは、やっぱり気持ちがいい。

次は②のパターンについて。そもそも「稀血(まれち)」とは、一般的な血液よりもずっと「いい血液」という感じだ。たとえば栄養価が高いとか、格別に美味しいとか。吸血鬼にとって幻の存在だったり、価値あるものとして喜ばれる。だから下心ありきで、吸血鬼社会へようこそと歓迎されるのである。たまたま稀血でラッキー!みたいな割とサクッとした設定な気がするが、稀血の主人公が放つ特別な香りに不特定多数の吸血鬼が惹きつけられてしまう場面をよく見た。そう、それで主人公が危険に晒されたり、奪い合いが勃発しちゃったりするのだ。この展開だと、主人公の相手が有象無象を牽制したり制圧するところが見どころだ。スーパーダーリン的展開である。


などなど、実るまで前途多難な吸血鬼との恋だが、実ったあとの寿命問題も忘れてはいけない。人間が吸血鬼になったとて、愛する吸血鬼と同じように万年生きられるのか。吸血鬼になる代償に寿命を差し出していたら…という話もあったような、なかったような。

万年生きる孤独や苦しみを愛する人に背負わせたくないという吸血鬼もいた。長く生きるということは、関わった人たちを常に見送る側にいるということ。そして何より、無限にも感じられる時間というのは恐ろしく退屈で、虚無なのだという。だからこそ片方は人間のままという選択をして死別することもある。で、吸血鬼はその人を忘れられずに、人間と関わることをやめたりする。(それでまた何百年、何千年後かに新たに人間と出会ってしまい…)

人間とは関わらないと決めていたのに、芽生える恋心。愛する人の血を飲み干してしまいたい葛藤。その先に待つのは、愛する人にも自分が背負う孤独や苦しみを背負わせるか否かという選択。あーあ、悲しき生き物ヴァンパイア!どうりでいつも深刻そうなわけだよ!

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