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【短歌集】六畳の部屋で引きずるどこまでも3メートルある延長コード

六畳ワンルーム、ひとり暮らし。何をするにも電力がいるから、延長コードをあちらに、こちらに、引きずって暮らす。3メートルもあれば無敵なんです。だって、六畳だから。どこへでも届く。大抵のことはできる。でもその「六畳」と「3メートル」のチグハグな感じが面白くて、これこそ「暮らし」だなぁ、と思って詠みました。東京に来て数ヶ月は、テーブルもイスもないのにウォーターサーバーはある、みたいなよくわかんない状況だったことも。バラバラ、チグハグ、ぐちゃぐちゃ。暮らしって、蓋を開けてみれば意外とみんな、こんなもんじゃないのかなと思います。

はい、てな感じで、前回の恋の短歌集に引き続き、ひとり暮らし短歌集です。またまたやりますよお!自分で解説、自歌自賛。

起きる寝る死ぬも生きるも同じならずっと起きていたいような夜

どっかの誰かが「眠ることは小さな死で、起きるたびに生まれ変わってる」的なことを言ったらしいですね。でもなんていうか、その全てがごっちゃになる時ってある気がします。私って今寝てんの?起きてんの?もはや生きてんのか死んでんのかも分かんないわ〜。みたいな、ただただベッドの重しになってる日々。でも、そんな文鎮のような人間でも、何もかもが寝静まった夜は、少しだけ動けたりする。今度は調子に乗って、なんだかずっと起きていられるような気さえしてくる。ふしぎふしぎ。ただの昼夜逆転と言われればそれまでだけど、夜には起きていたくなる魅力があると思うのです。境界線をあやふやにしてしまうような、そんな魅力が…。

おやすみなさいドン・キホーテで買ったカーテンそこから透けて見える街並みに  

越してきてすぐ、ドン・キホーテでカーテンを買いました。たしか中野の。なんとお値段、2000円!明るいやさしい黄緑に、少し光沢のある黄緑のストライプ。安さはもちろん、さわやかなデザインも気に入って即決。

しばらくして、眠ることすら難しくなって、真っ暗な部屋で横たわっていたとき。カーテンの向こうに透けて見えた朝の街並みに、少しだけ励まされて詠みました。当たり前だけど、安いカーテンは、ほぼ、ただの布。遮光や防音なんて機能、あるわけねぇ。でも、その薄っぺらなカーテンのおかげで見えたのは、真っ暗な部屋と対照的な外の明るさ。起きようとしている町の様子。朝が来たことに嘆くような自分から、ちゃんと1日を始めようとする人や街の存在を見つめて「おやすみなさい」と思える自分になれて、嬉しかったのかもしれません。

ゴミ箱に捨てた野菜の切れ端が薔薇のふりしてひっそりしている

小松菜の茎の下の方を切ったんです。切って、ノールックでゴミ箱にポイッ。ふとそちらに目をやると、なんと緑の薔薇が咲いているではないか!我が家に家グモ以外の生命体は存在していないのに「え、私、薔薇捨てた?!」と思うほどに、ゴミ箱に綺麗に咲く、小さな薔薇。そんなささやかな出来事に気づけたことと、そこで驚いて喜べたことにも嬉しくなって、詠みました。

このころ急にあらわれる風呂場のドアの小さな突風

うまく詠めなかったなあ。という気がしてしまう歌。お風呂から上がって、風呂場のドアを閉める時に発生する風に「ウゥ!寒!」ってなったこと、ありません?あの突風、冬以外も存在しているはずなのに、冬になって急に存在感が増すから人って面白い。だから「急にあらわれる」と書いてみました。そよ風ですら人を凍えさせる冬では、ドアを閉める時の風などもはや、突風。冬空の下、母に抱っこされながら「寒い😠」とキレていたという2歳の私へ。今と変わんないよ。

以上、ひとり暮らし短歌集でした。次も違うシリーズで出したいな。ネタ切れしそうだが。

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