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人新世の「資本論」用語集(第5~6章)

今回の章は、資本主義の構造について。

私もそうだが、オーガニックやフェアトレードを選択することまでは出来ても、鶏肉や魚はトレーに入った「商品」を買っている。それらの生き物の命をいただくまでの過程において、私たちのほとんどは、なんとも無力だ。このような無力な状態であればあるほど「商品」の希少性は高まり、人々は「商品」に依存せざるを得なくなる、というのが資本主義の仕組みらしい。なるほどー。

かつてはそこかしこに潤沢にあった水や土地(人々が無償かつ自由に利用できていた公の富)でさえ、資本主義によって囲い込まれ、誰かの所有物になってしまった。みんなが生活に必要なものを自由に手に入れることが出来てしまったら、誰も市場の「商品」なんか買わなくなってしまうからだ。

更に。私財となった土地は、荒れようが汚染されようが、お金を出して買った所有者の自由である。結果、地球環境もその他の人々の生活も劣化する、という悲劇!そもそも自然資源を人が「所有」するだなんて、生物的にはおかしな話である。人間以外の生物は、必要な分だけ取り込んでグルグルと循環させている。すべては借り物なのだ。

他方で、国や専門家にまかせ過ぎると、原子力発電のような閉鎖的な管理になってしまう。おかしな方向に進んでいても、私たちは理解することが難しかったり、ブレーキをかけることが難しい。
だからこそ、暮らしに直結する自然資源やインフラ、社会制度などのコモンは「商品化するでも国有化するでもなく、公共財として市民が民主的・水平的に共同管理することが重要である」と斎藤さんは言っているんだな。

そんなコモンの解体が現代の長時間労働にもつながっているという。フローはこんな感じ。
人々がコモンを失う→自前で入手できないので商品を買う→貨幣が必要→貨幣を手に入れる手段は常に欠乏状態→貨幣の希少性UP!!!→貨幣を得る為に長時間労働となる。

労働力すら「商品」になり、代わりはまた買えばいいとなると、古代の奴隷よりも悲惨な状況だという。憲法にあるような『健康で文化的な最低限度の生活』と「飽くなき経済成長」って、やはり馴染まないと言わざるを得ない。資本主義が常に何かの欠乏と希少性が不可欠という前提であるならば、その上に成り立つ経済成長、商品を得る豊かさは、虚構なのかもしれないな~

はい。以下、いつもの用語集です

加速主義

資本主義の技術革新の先にあるコミュニズムにおいては、完全に持続可能な経済成長が可能になると主張するもの。生産力至上主義の典型。エコ近代主義とも呼ばれる。

エコ近代主義

自然との共生を目指すよりも、原子力発電やNETを徹底的に使って、地球を人類の為だけに管理運用しようという思想。

ジオエンジニアリング(気候工学)

地球システムそのものに介入することで、気候を操作するというもの。
例えば、成層圏に硫酸エアロゾルをまいて太陽光を遮断し、地球を冷却するもの、太陽光を反射する鏡を宇宙に設置するもの、海洋に鉄を散布して植物プランクトンを大量発生させて光合成を促進するものなどがある。

開放的技術

コミュニケーション、協業、他者との交流を促進する技術。

閉鎖的技術

人々を分断し、利用者を奴隷化し、生産物ならびにサービスの供給を独占する技術。民主主義的な管理に馴染まず、中央集権的なトップダウン型の政治と結びつきやすい。(原子力発電、ジオエンジニアリング、NETなど)

本源的蓄積

資本がコモンの潤沢さを解体し、人工的に希少性を増大させていく過程。



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