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人新世の「資本論」用語集(第1~2章)

斎藤幸平さんの『人新世の「資本論」』を読み始めました。言い回しなどは思ったよりも難解ではなく読みやすいのですが、いかんせん初めて目にする用語がたくさん!読んでるうちに度々「あれ、これ何だったっけ?」となって、戻り戻り読んでいるので、めっちゃスローなのですよねぇ(おまけに睡魔が)…というわけで、用語の意味とそれにまつわる実態や背景をちょこっとまとめてみました。このガイドによって少しはスムーズに読み進められるはず!

全部で第8章まであるのに、まだ第2章(泣)
…少しずつやっていきたいと思います。

二酸化炭素と温暖化の関係性はさておき(この本はここが前提ではあるのだけれど)。ここまでのお話でいちばん印象的なワードは「転嫁」かなぁ。うすうすは知っていたことだけれど。私たちの豊かな生活が劣悪な条件下の労働者や自然破壊のうえに成り立っているということ。サピエンスの強欲さと残酷さがこれでもかと!それは歴史をみても明らかだけど、その頭脳をそろそろ地球人として利他的に使えないものだろうか。せっかくの大きな脳みそだもの。何のために大変なお産をしているのよぅ…というのはいち母親としての感想。その一方で、資本主義にどっぷりと浸かりきっている私個人としては、その経済圏の外側へどうやっていくのかはまださっぱり分かりません。

人新世(ひとしんせい・Anthiropocene)

地質学的な地球の新たな年代の名称で、人間たちの活動の痕跡(ビル、工場、道路、農地、ダム、マイクロ・プラスチック、二酸化炭素)が地球上の陸や海や大までもを覆いつくした年代という意味。

グローバル・サウス

グルーバル化によって被害を受ける領域やその住民を指す。
かつては開発途上国と先進国の間で生まれる食料や経済的な問題として「南北問題」と呼ばれていたが、現在は地理的位置との関係が必然ではなくなりつつあることからこの呼ぶようになった。
グローバル・サウスからの労働力の搾取と自然資源の収奪によって、先進国(グローバル・ノース)の豊かな生活「帝国的生活様式」が成り立っている。
例)劣悪な条件で働くインドの貧しい農家が栽培する綿花を使って、これまた劣悪な条件で働くバングラディシュの労働者が洋服を作るファスト・ファッション。

掠奪農業(りゃくだつのうぎょう)

短期的な利潤のために、持続可能性を犠牲にする不合理な農業経営を指す。
地力を保つためには、土壌の養分(特にリンやカリウムのような無機質)がしっかりと時間をかけて循環しなければならないが、短絡的な視点しかもてない農場経営者は、地力を回復させるための休耕より、儲けのための連作を好む。

【掠奪農業にみる転嫁の例】
〈技術的転嫁〉
廉価な化学肥料の大量生産が可能となったが、本来の土壌養分の代わりに、別の限りある資源を浪費しているだけであり、更に地下水の汚染や赤潮などの問題を引き起こした。
〈空間的転嫁〉
代替肥料となるグアノを南米から大量に輸入。原住民の暮らしや生態系に大きな打撃を与えた。
〈時間的転嫁〉
気候変動のタイムラグを利用し、負担を未来に転嫁する。将来を犠牲にすることで、現在の世代を繁栄させる。

グリーン・ニューディール

再生可能エネルギーや電気自動車を普及させるための大型財政出動や公共投資を行う政策プラン。景気を刺激し、持続可能な緑の経済への移行を加速させることを期待したもの。気候ケインズ主義となる可能性も(太陽光パネル、電気自動車と急速充電器の普及、バイオマス・エネルギーの開発、etc...多くの投資と雇用創出)。

プラネタリー・バウンダリー(地球環境の限界)

地球システムのもつ回復力が無効となってしまう臨界点を設定し、その閾値を9領域において計測、見極めることで「人類の安全な活動範囲」をコントロールしていこうという概念。臨界点を超えてしまうと、極地の氷床の融解や野生動物の大量絶滅など急激かつ不可逆的な、破壊的変化を引き起こす可能性がある。

プラネタリー・バウンダリーの9領域
①気候変動 ②生物多様性の損失 ③窒素・リン循環 ④土地利用の変化 ⑤海洋酸性化 ⑥淡水消費量の増大 ⑦オゾン層の破壊 ⑧大気エアロゾルの負荷 ⑨化学物質による汚染

デカップリング

「経済成長」に対する「環境負荷」のように、連動して増大してきたものを、新しい技術によって切り離そうとするもの。気候変動についていえば、新技術によって、経済成長を維持しながら、二酸化炭素排出量を減らすことを目指すこと。

MF(マテリアル・フットプリント)

消費された天然資源(鉱物、鉱石、化石燃料、バイオマスなど)を示す指標。

〈MFの急速な増大の背景〉
先進国の二酸化炭素排出量を削減するために電気自動車を製造しよう!

リチウムイオン電池が大量生産しよう!

大量のレアメタル(リチウムやコバルト)を入手せねば!

周辺部(開発途上国)からの掠奪=空間的転嫁

NET(ネガティブ・エミッション・テクノロジー)

大気中から二酸化炭素を除去する技術で、気候ケインズ主義の希望の星。

BECCS(Bio-energy with Carbon and Storage)

NETの代表的な例。バイオマス・エネルギーの導入によって排出量ゼロを実現しつつ、大気中の二酸化炭素を回収して地中や海洋に貯留する技術を用いて、二酸化炭素排出量をマイナスにもっていこうとするもの。

しかし…
バイオマス・エネルギーには膨大な農地が必要だし、その技術には大量の水が必要となる。つまり、実現するにはこれまた大規模な周辺部への転嫁が必須ということになる。

IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)

気候変動政府間パネルは、気候変動を評価する主要な機関である。国連環境計画(UNEP)と世界気象機関(WMO)によって設立され、気候変動の状態とそれが経済社会に及ぼす影響について明確な科学的見解を提供する。IPCCは、気候変動の理解に関連する世界の科学的、技術的、経済社会的情報を検討し、評価する。(国際連合広報センターより)



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