人新世の「資本論」用語集(第3~4章)
斎藤幸平さんの『人新世の「資本論」』の続き、第3章と4章。
感想と用語集。感想内の太字は用語集にて説明してます。
感想と理解
4つの未来の選択肢のところ、面白かったなぁ。気候変動という危機に対して個々の力ではもう限界で、国家権力でしっかり取り締まるしかないのかな?!と思っていたけど、不平等なままだと結局それで守られるのは私たち庶民ではなく、一部の特権階級だけなんだと(気候ファシズム)。たしかに。今だってまさにそうだ。そこに緑の冠のっけたところで同じことじゃないか。すべてが商機となってしまうのも納得である。大企業優遇でのトリクルダウンは幻だったと、そろそろ結論づけてもいいんじゃないかしら。だめかしら。
今回の章を読んで、脱成長の意味が少し理解できたような気がしてる。経済成長の旗を振り上げたままのSDGsを含むあれこれは単なる時間稼ぎにしかならない。結局寿命で逃げ切れる人達が政治の大部分を担っているからしょうがないのかしら。本書にもある「大洪水よ!我が亡き後に来たれ!」ってやつ。かと言って、気候毛沢東主義という独裁国家も危険だし、何より、つまらなそう~!!野蛮状態は絶対に避けたいし。最後の選択肢がXというわけだ。その為には国民ひとりひとりが自立し、つながり合わなければならない。SDGsだって「誰一人取り残さない」と言うけれど。今、自分の頭で考え覚悟をもって行動できる国民がどれだけいるのだろうか。地球環境が自分たちの共有する富(コモン)であることを理解できる人間は決して多くはないと感じる。資本主義経済のなかでコモンは私たちの暮らしから切り離されてきたし、残念ながらこの国はそういう教育をしてきていない。
そういう自分はどうなのだ、というと。無関心ではないものの、ちょっと良いもの買って、満足してるだけなのかもしれないなぁ。←これを本書の冒頭に「SDGsは大衆のアヘン」「SDGsはアリバイ作りのようなもの」などと表現されている!(キャー)
だけど、自分の暮らしを見わたしてみると、アソシエーションもコモンもけっこうあることに驚く!保育(森のようちえん)、教育(オルタナティブスクール)、食(無農薬野菜や安全な食品の共同購入)、衣類(フェアトレードショップ)。これらは大きな財産だったのだなぁ。「利益を生みたいから」ではなく、「自分や家族、仲間の為に良いものを生み出し持続させていきたい」という動機。この動機から発出するアソシエーションで共有するコモンをじわじわと広げた延長線上に地球があり、そこで初めて実現できるのが持続可能な社会、ということか。今の理解はそんなとこ。
ドーナツ経済
政治経済学者ケイト・ラワースが提唱した概念
ドーナツの内縁が「社会的な土台」=水・所得・教育など
ドーナツの外縁が「環境的な上限」=プラネタリー・バウンダリー
この内縁と外縁の間に、できるだけ多くの人々が入るグローバルな経済システムが設計できれば、持続可能で公正な社会を実現することができる。
【だが実際は、ドーナツからはみ出す人が多数…】
途上国の人々は「社会的な土台」に満たない暮らしを強いられる
先進国の人々は「環境的な上限」を大きく超えた暮らしをしている
↓
▶現在のシステムは環境を酷く破壊しているだけでなく、不公正である
▶既存の先進国をモデルに途上国の開発援助を行うと、地球全体としてみれば破壊への道を歩むことになる
カーボン・バジェット
まだ排出が許される二酸化炭素の量のこと。
経済成長はあるレベルを超えると、人々の生活の向上や幸福度には明確な相関関係がみられないという。だとすると、カーボン・バジェットは途上国のい人々が使うべきなのでは?
気候ファシズム
国家権力【強】×不平等
気候変動によって生まれる多くの環境難民を厳しく取り締まり、一部の特権階級の人々を守ろうとする国家体制。
気候毛沢東主義
国家権力【強】×平等
貧富の格差による対立を緩和しながら気候変動対策をする、中央集権的な独裁国家。
野蛮状態
国家権力【弱】×不平等
気候変動が進行し大多数の環境難民となった大衆が反逆をおこし、統治体制が崩壊。世界は混沌に陥り、人々は自分の生存だけを考えて行動する。
X
国家権力【弱】×平等
強い国家に依存しないで、民主主義的な相互扶助の実践を、人々が自発的に展開し、気候変動に取り組む。
環境難民
大規模な環境変化によって、住んでいる地を離れざるを得ない人々。気候変動による砂漠化や海面上昇のほか、熱帯雨林の焼畑農業や過放牧、過剰な灌漑(かんがい)農法などによる土壌荒廃により、生活が困難になった住民を指す。その原因が気候変動による場合は特に気候難民ともいう。1980年代後半以降、世界中で増加。(デジタル大辞泉より)
新自由主義
政府などによる規制の最小化と、自由競争を重んじる考え方。規制や過度な社会保障・福祉・富の再分配は政府の肥大化をまねき、企業や個人の自由な経済活動を妨げると批判。市場での自由競争により、富が増大し、社会全体に行き渡るとする。ネオリベラリズム。→リバタリアニズム(デジタル大辞泉より)
トリクルダウン
トリクルとは、英語で水などがちょろちょろ漏れ出るの意。富裕層が潤い社会全体の富が増大すれば、富は貧困層にもこぼれ落ち、経済全体が良い方向に進むとする経済理論。その本質的なスタンスから「おこぼれ経済」とも言いなされ、現実的裏付けや社会科学的な立証はなされていない。(知恵蔵より)
ハードランディング
景気の急激な失速のこと。
コミュニズム
共産主義のこと。財産の私有を否定し、生産手段・生産物などすべての財産を共有することによって貧富の差のない社会を実現しようとする思想・運動。
コモン
「共」とも呼ばれる。水や土壌などの自然環境、電力や交通機関といった社会的インフラ、住居、医療や教育といった社会制度などを、商品化するでも国有化するでもなく、公共財として市民が民主的・水平的に共同管理することを重視している。また、このコモンの領域を拡張していくことで資本主義に打ち勝つことを目指している。
アソシエーション
共通の関心や目的などで集まった機能的集団のこと。本書では労働者たちの自発的な相互扶助と紹介されている。
マルクスはコモンが再建された社会をアソシエーションと呼んでいた。
生活に欠かせない社会保障サービス(社会保険、年金、公共図書館、公共医療など)のほとんどが、起源をたどると、労働組合や近隣アソシエーション、協同組合などの自発的な取り組みであった。それが後の福祉国家において制度化されたにすぎない。
MEGA(メガ)
『マルクス=エンゲルス全集』のこと。19世紀を代表する思想家・経済学者であるカール・マルクス(1818―1883)とフリードリヒ・エンゲルス(1820―1895)のほぼ全ての著書・論文・書簡を集成したもの。
マルク共同体
古代ゲルマン民族の共同体で、持続可能な農業を営んできたことが高く評価されている。ゲルマン民族は土地を共同で所有し、生産方法にも強い制限をかけていた。生産物に対しても外部との売買を禁止した。また、平等な土地の割り振りを行い富の独占を防ぐことで、構成員のあいだに支配・主従関係が生じないようにしていた。あえて生産力を上げないことで、持続可能性を守っていたという。
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