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自然災害の時医療従事者はどうするの?

1:はじめに

こんにちは、かくです。
今回のnoteは今までと毛色の違う投稿です。
2019年9月9日ですが、台風15号が関東地方を直撃しました。
関東在住の方々、大丈夫でしたでしょうか?
公共交通機関などの乱れや大規模停電もあったとのことなので、とても大変だったと思います。Twitterのトレンドでも「#地獄絵図」が上位になるなど、特に公共交通機関の乱れはとても大変だったと想像します。

そんな中、各ニュースやネット関係でもたくさんの記事が報道されていましたが、ひとつたまたま目にした記事のコメントが気になりましたので、ちょっと感想や思うことを書いていきたいと思います。

2:タクシー乗車を待つ長蛇の列

公共交通機関の中でもJRは前日(9月8日)から運休を決定していたようですね。その影響がでた形で、やはりタクシー乗車を待つ方々の長蛇の列ができてしまいました。
ネットでもこのニュースが流れていて、そのニュースのコメント欄で、以下のようなコメントをみかけたのです。

こういう時よく、医療関係や福祉関係だから休めないんです!とか言う人がいますよね。それはその通りだと思います。そういう人には申し訳ないけど、働いてもらわないといけないと思います。
逆にそう言った人達が少しでも出勤しやすいように、人の命に関わる仕事でない会社は休むべきと思います。何でもかんでも社会を動かすことによって、そう言った人達の通勤が妨げられるのは問題だと思います。
(コメントそのものをコピペしました)

うん。分かります。おそらく、このコメントを投稿した方は

「医療従事者や福祉関係の方は命に関わる仕事をしているんだから、タクシーに優先的に乗れるなどの優遇措置をとるべきだ」

ということなんだと思います。ですから、いいねポチや賛同される意見が多く寄せられていました。

でも、医療従事者である僕は、何故か違和感を覚えたのです。
なぜでしょう??
それは、

僕ら医療関係者って、台風が来てて避難勧告・避難指示がでてるような時でも出勤しなきゃいけないの??
僕ら被害にあったらどうすればいいの??被害にあったら、それはそれでしょうがないの?自己犠牲で片づけるの??

とズバリ思ってしまったからなんです。

だって、考えてください。僕らがもし移動において優遇されるとしたら、今回のような自然災害の時とかじゃないですか? その時には、僕らも危険にさらされる可能性も高い。そして、自分の家族も同様です。これは、命に関わる仕事に就いているか否かは関係ありません。どんな仕事に就いていても、自分の命を守る権利はあります。

すこし話は変わりますが、僕は漫画が大好きです。いろんなジャンルを読みます。

「め組の大吾」。これは少し前のマンガですが、消防士が主人公の物語です。

「海猿」。これはもう皆さんご存知のマンガですね。海上保安官が主人公の物語です。

「ライジングサン」。これは自衛官が主人公の物語です。

ここにあげたマンガの共通点って何か分かりますか??

そう

自然災害時に活躍する方々が主人公の物語です。しかも、もしかしたら「自己犠牲」「人命優先」と思われやすい職業なんです。

でも、また違った側面の共通点もあります。どのマンガも「主人公が新人から、いろんな艱難辛苦を経験してベテランになっていく」というのがストーリーの共通点なのですが、新人時代に叩き込まれているのが、

まずは、自分が生き残れ!自分が生き残ることを考えろ!

ということを異口同音に叩き込まれているのです。
ですから、物語の中でも、

「状況悪化のために救助を断念する」

といった場面も多数描かれます。
(物語の都合上、そこをどうにかしてしまうのが主人公なんですが(-_-;))

僕もそうだったのですが、こういった裏側を知らないと、こういった方々を報道などで目にすると

「いつも自己犠牲の精神ですごいなあ」

と思ってしまいがちですが、そんなことないと思うんですね。

要は

自分たちの身の安全がしっかりと確保・保証できているから、存分に活動できている。

と言えるんだと思います。
「身の安全」とは、「活動する場の安全」だけではなく、「活動する場所へ向かう際の安全」も含まれています。

要するに、僕ら医療従事者も同じで、

身の安全が確保されていないのに「働いてもらわないと困る」と言われても困っちゃう

ってことなんです。

でも、これは世の中の人すべてに共通していることでもあります。

どんな人でも、人間の欲求として、

生理的欲求、生存欲求

というものが根底にありますから、ここまで挙げてきた職業以外の職種の方でも同じことが言えると思います。

そして、これもまた難しいのが、

・休んでいい仕事か否かや休むべきか否かの判断はは他人ができるものではない。
・人と人との繋がりがあるように「会社と会社の繋がり」があるから、そう簡単に臨時休業の判断ができない。

という点だと思います。ちなみに、この判断って、国がしてしまったほうが分かりやすいじゃんと思ったりしてます。

3:実際、自然災害の時ってどうなってるの?病院は??

ここからは、完全に僕の経験談です。いろんな規模の病院に勤務してましたから、正直病院の規模によって対応は変わります。

・大学病院などの大規模病院
僕が大学病院勤務時代には、ひとつの大きな自然災害を経験しました。
忘れもしません、2011年3月11日。

そう、東北地方太平洋沖地震 いわゆる東日本大震災です。

ちょうど病棟にいる時でした。呼吸器外科の先生と二人で話している時に大きな揺れを感じました。あれよあれよと時間ばかりが過ぎてしまいます。そして、揺れが収まった時点で、その先生と看護師さん達と手分けして病棟中を見回って、何事もなかったことに安心したのを覚えています。

この時は、歩いて自宅まで帰り、翌日には通常勤務できました。ただし、一部の先生方は帰宅困難となってしまい、翌日も出勤できない先生もいました。あとは、「帰るのが面倒だから」とか「明日来るのが大変だから」ということで、病院や近くのホテルに泊まる先生もいました。でも、まあこういった時はいる人をかき集めて外来・病棟・救急当番を回します。
要は、大きな病院はそれなりに人がいるので、回せてしまうといえば回せてしまうのです。
そして、電源なども自家発電で対応可能です。

⇒個人的には「大学病院レベルの大病院はそうそう破綻しない」と思います。このレベルの病院が破綻するのは未曽有の災害レベルだと思います。

・中規模病院(街中にある○○病院といったレベル)
この規模のレベルが一番対応が難しくなるかもしれません。人手が不足しているからです。僕が県立病院に勤務している時は幸いにも自然災害にあうことはなかったですが、今回並みの災害であれば病院機能はかなり制限されていたと思います。人手もそうですが、電源面でも自家発電設備がない病院もあるかもしれません。人手に関しては、まあ泊まる先生とかもいましたし、どうにかなる部分もあるんですけどね(-_-;)
でも、こうなると医療従事者がいたとしても病院自体機能しない可能性もでてきます。そう、停電などのインフラ問題も絡んでくるからです。

・小規模病院(○○クリニックといったレベル)
まさに今働いているレベルです。いわゆる診療所などですね。今勤務している診療所は台風がよく通る地域ですし、大雨などの自然災害もよくある地域です。じゃあ、どうしているか?ですが、

前日など早目の時点で休診の決定を下しています。

休診せずに開院するという判断もあるのですが、なんと言っても患者さんが来ません。なんせ自然災害時ですから。
というわけで、前日に電話して予約変更を行い、事前対応しています。
こういう臨機応変な対応ができるのは小規模だからこそだと思います。

ちなみに、自然災害時の人手に関しては、僕が勤務した数々の病院での基本は

「安全に来れる奴がまずは来る。安全に来れる奴でも遠い奴はゆっくり来い。無理な奴は無理するな。使える奴は教授でも使え!」

です。

ざっと僕の経験談のみで書いてきましたが、ここまででお気づきになった点がありませんか??

多分、「あっ!」と気付いてくださる方々も多いかなと思いますが、そうです!

「医療従事者だけが病院にいても、病院は機能しない」

ってことなんです!

ざっと考えるだけでも

・水道、ガス、電気などのインフラ問題
・技師さん
・コンピュータ関係    など

の問題が解決しないと機能しないのです。

そして、当たり前なんですけど、

「患者さんが居てこその医療」

なんです。

入院治療中の患者さんももちろんですが、自然災害時に最も大変な状況に置かれるのは外来患者さんです。だから、冒頭の「優先的に」というのも、患者さんをまずは優先すべきだとも思います。

ただ、これを言い出したらキリがないのです。

・医療従事者だけ優先しても意味がない。医療従事者の安全は確保できるのか?
・そもそも患者さんが来院するのか・できるのか?来院するなら、安全に受診できるのか?患者さんを診察できる人手はあるか?
・電気などのインフラ状態は??
⇒電気関係の仕事の方々は優先しなくていいの?  などなど

要は、「一般の方々が望むインフラなどの改修と同時に対応していかないといけない」ということです。

4:さいごに

まとめると

1:医療従事者はもちろん、自衛隊・消防・警察関係、どんな仕事に就いている人でも「自分の安全が確保・保証されているからこそ」存分に活動できる。
2:まずは自分の身の安全を確保する。
3:医療従事者だけで医療・医療機関が成り立つ訳ではない。

って感じです。今回一番言いたかったことは、とくに1番です。

ちなみに、よく台風中継とかでヘルメット被ったレポーターの方々が港から中継したりしますが、あんなもん、やる必要はまったくないと思いますし、やらせる局側もおかしいと思います。

あと、義兄は今回の台風の際は、9月8日の時点で勤務地近くのホテルに泊まり出社したとのことです。義兄は銀行員なので、海外相手に仕事してる部分もあるので休めなかったようです。
こういった時でもお仕事を休めない皆さん。様々な事情はあるかと思います。それは人それぞれ。でも、とにかくご自身の安全はしっかりと確保していきましょうね。

これからも自然災害とは付き合っていかないといけないと思います。皆さんが少しでも安全に安心して暮らしていけることを願って終わります。

最後までありがとうございました。
では、またよろしくお願いします。

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