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チームでつくる会社のカタチ|かこ川商店プロジェクト #3

かこ川商店で毎月開催している「新しい会社のカタチをつくる」ワークショップ。

より働きやすく、より地域に根差した会社になりたい。
その目標を達成するために社員みんなで共有する、会社の「軸」づくりワークショップの第3回が6月に行われました。

■まとめスローガン発表!

第1・2回を通して、下記の4点を掘り下げていきました。

①理想の働き方
②理想のスタッフ像
③事業内容とお客さまの特徴
④会社の歴史から見つける、かこ川商店のDNA

そしてチームの皆さんは前回の宿題として、①~④を踏まえつつ、この先のアクションを促せる&価値観を共有できる「まとめスローガン」を考案していました。

たくさん案を出し、みんなで練り上げて生まれたのが…

「その一歩が ぼくらの一歩」。

社員それぞれ歩幅は違うけれど、みんな頑張って前に進んでいる。
一人ひとりの“一歩”が、かこ川商店を作り上げていくんだ!
そんな想いが込められています。

■社員一人ひとりの「一歩」を大切に

まずは勤続18年目のベテラン社員・冨田さんが、スローガン決定の経緯を加藤さんに説明。社員教育を担う冨田さんは日々、社員みんなの成長を見守り、一人ひとりのペースに合わせてサポートしています。

どうやらこのスローガンは、ワークショップ開始直前に少し変更があったようで…?

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冨田さん:「それぞれ成長のスピードは違って当たり前。勤続年数によっても一歩の大きさや深さは異なります。
歩幅が違うからこそ、その人のスピードに寄り添った指導を心掛けなければいけないし、その人に合った進め方で安全に仕事をしてもらいたいと思っていて。
一人ひとりの一歩を大切にしたいという気持ちから、最初は『それぞれの一歩』というスローガン案を提案したんです。でも…」

現場5年目のスタッフ・城迫さんが言葉を引き受けます。

城迫さん:「“それぞれ”だと外側からの視点のように思える。もっと近い視点にするべきなのではという話になり、また二段構えのほうがリズムが良いだろうということで、最終的に『その一歩が ぼくらの一歩』に決まったんです」。

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冨田さん:「でも、『その一歩』だと、まだ他人事っぽい感じがするなあってずっと考えていて。もっと自分の足元を見つめたいという想いを込めて『この一歩』に変えようって、さっき決まりました(笑)」

というわけで改めまして、
スローガンは「この一歩が ぼくらの一歩」に暫定しました。

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第3回目となる今回は、このスローガンに決定するのであれば、今まで導いてきた①~④の答えと整合性が取れているか?また、会社の「トーンアンドマナー」をどうするか?を考えていくのが目的です。

「スローガンが決まれば、トーンアンドマナーが決まる」と加藤さん。

トーンアンドマナーとは、自分たちらしい表現のこと。(以下、トンマナと表記します)
色や形、文章表現、素材、社員の立ち居振る舞いなどのあらゆる要素を「かこ川商店らしい表現」に統一することで、社外の人々に「かこ川商店ブランド」を認識してもらいやすくするのです。

ユニフォームや名刺、広報、社用車、内装といった会社を表すものの色やデザイン、また手掛ける事業の方向性がバラバラだと、「どんな会社なのか」「何をしている会社なのか」が第三者に伝わりづらくなってしまいます。

■森田さんのトンマナ講座

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今回はジュークアンリミテッドの李さん、ブランディングやデザインなどを手掛ける株式会社knotの森田さんともリモートで繋がっています。

「会社のトンマナを整えるって具体的にどうやるの?」「トンマナを整えることでどんな効果が得られるの?」という疑問を、森田さんがこれまで手掛けた事例を基にレクチャーしてくれました。

内容を簡単にご紹介します。

事例① 株式会社Speak Buddy

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概要:
AI英会話アプリ「スピークバディ」やオンライン英会話など言語学習サービスを運営する会社の、社名変更に伴うリブランディング。
社名変更の発表タイミングがすでに決まっていたことから、スローガンよりもロゴやトンマナの決定を先行。

手法:
①社員間ディベートで、会社を表すキーワードの洗い出し&整理

②出てきたワードを基に、トンマナを決めるための軸となるデザインコンセプトを設定

③テック系企業(同業他社)のコーポレート・カラーやロゴをリサーチ

④Speak Buddyらしいテック感を検討し、社内投票を経てイメージカラーや書体などを決定

⑤ロゴ決定

⑥デザインのトンマナをまとめたデザインマニュアルを作成
これにより金太郎飴のように、どこを切っても同じトーン、同じメッセージを感じさせる展開が可能に(例:HPのデザイン、会社の内装など)

事例② 小杉法律事務所

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概要:
福岡市で新たに設立された、損害賠償請求専門の法律事務所のブランディング。
同社の理念は「一流であること」、ビジョンは「損害賠償請求の頂点になる」。

手法:
①理念・ビジョンからロゴデザインやトンマナを考案

②ヒアリングとディベートで、同社を表現するキーワードの洗い出し

③キーワードを基にロゴ決定
【小杉の小文字「K」をマークに、右肩上がりに伸びていくロゴは、一つの分野でトップへと向かって伸びていくことを表現。また勝利を表すVictoryの「V」と物事をしっかりと確認する「チェックマーク」も内包している】

④理念・ビジョンが視覚的に理解できるポスターも同時に作成

効果:
一見シャープで近寄りがたい雰囲気でデザインのトンマナを統一したが、採用においては「他の弁護士事務所よりかっこいい」と共感してくれる人や、志を同じくする人からの応募が増加。離職もなく、業務拡大も実現できたほか、狙い通りの顧客層から依頼が来ている。

■スローガンから「一筆書き」ができるか?

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「まとめスローガン」とは、社是・社訓・理念といったゴール、そしてゴールを目指すためのクレド(信条や行動指針)、さらにクレドを実現するためのルール・マナー(社会人としての行動)を全てまるっと一言で表せるものでなければなりません。

さらにスローガンと、力を入れている事業や取り組み、社風、ルールや制度、デザインなど全ての要素が合致している、つまり「スローガンから一筆書きできる」ことが重要だそう。

一筆書きできることのメリットは次の4つ。

①わかりやすい
②賛同しやすい
③腑に落ちやすい
④行動に移しやすい

社会は雇用される人、つまり「指示される側の人」のほうが圧倒的多数ですが、ブランディングとは「人」と「想い」で成り立つもの。

そのため、雇用される人たちがきちんと腹に落とせて、ストレスなく前向きな気持ちで行動に移せるためのスローガンはブランディングを進めるにあたり、とても大切だと言います。

一筆書きできるスローガンがバチッ!と決まれば、採用・業務効率化・クライアントなど、さまざまな面に良い影響をもたらしてくれるそうです。

まず、採用面。スローガンを決める過程では、理想のスタッフ像についても考えていきました。そこで出た答えを活かせば、「欲しい人材の条件」をリストアップして“見える化”することもできます。

「こんな人が来てほしい」という要望は部署によっても異なるため、部署ごとに条件を挙げて理想の人材像を細分化していくと、マッチングの精度がアップ!

さらに各部署の条件を基に「面接での質問内容」まで固めれば、面接官によって採用基準がブレてしまう…という問題も防げます。

また会社説明会などでもスローガンから話を展開していくほうが、単に事業紹介をするよりも会社の価値観や方針、求めている(もしくは向いていない)人物像などがぐっと伝わりやすくなります。

すると自社に共感してくれる人からの応募率の増加&離職率の低下にも繋がってきます。

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そして事業面では「これってスローガンに当てはまってる?」と常に考えながらプロジェクトを企画・進行することで迷いが減り、仕事の効率もアップ

打ち出す事業に一貫性、そして同業他社に差をつける「トガり(先鋭性)」が生まれ、ブランディングもどんどん強化されていきます。

その結果、「面白いね!」「いいね!」と思ってくれる、自社と近い価値観を持ったクライアントが集まってくるのです。

そういったメリットを、加藤さんが以前勤めていた総合建設会社㈱タカヤをはじめ、ジュークアンリミテッドが担当した複数企業のスローガン&取り組み事例を通して学んでいきました。
スローガンの重要性について、ますます理解が深まっていきます。

■今のスローガンじゃ甘い!?

さて、以上を踏まえ、かこ川商店のスローガン「この一歩が ぼくらの一歩」は一筆書きができるか考えてみましょう!
…というところで、冨田さんが口を開きます。

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冨田さん:「今のスローガンじゃ、甘いかもしれないですね…!」

「前に進むことは大前提。それぞれのスピードや歩幅には寄り添うけれど、立ち止まることを許すわけではない」と冨田さん。

歩みを止めずに成長し続けることを、もっと的確に表す言葉はないか?と考えたようです。

またチームメンバーからは、会社の歴史から見つけたエピソード「しない時はしない」などは暫定スローガンと合致しない、との意見も。

スローガン、もしくは今まで掘り下げた答えをチューンアップする必要がありそうです。

■講師陣からのアドバイス

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講師陣からは、こんなアドバイスがありました。

「例えば『踏み出そう、前へ』『昨日よりも一歩前』など、ゆっくりでも、小さくても前進していることをもっと打ち出したほうがいい。『この一歩が~』は、2~3年後のスローガンにとっておくのもアリ。まとめスローガンは、経営理念に比べて柔軟に変更できるのも利点です」

次の動きに繋がる言葉を選ぶといいかもしれませんね。『踏み出す』などの動詞がハマりそうだなと思います」

スローガンの言い方や口調にも、その会社のキャラクターが宿ります。かこ川商店らしい口調から考えていくのも一つの手」

以上のアドバイスを参考にしながら、スローガンは引き続き練っていくことになりました。

■社長と社員の想いは同じ

スローガン策定には、あえてノータッチを貫いた水主川社長。その理由は「僕の想いや考えに引っ張られてほしくなかったから」。

しかし「この一歩が ぼくらの一歩」というスローガンは社長の想いと共通していたそうで、「みんながこの案を出してくれたことが嬉しかった」と語りました。

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水主川社長:「『このスローガンは違うな』と自分たちで気付けたこともすごい。今日、まさに皆さんが一歩前進した証拠だと思います。スローガンづくりは本当に大変ですが、自分の幅を広げることにも繋がるはず」

■終わりに:仕事から「迷い」をなくすと…?

今回はディスカッションよりも、さまざまなブランディング実例を教わる時間となりました。

取材を通してまず感じたのが、仕事をする上でいちばん排除したいのは「迷い」かもしれないな、ということ。

「迷う」ことは、時間のロスはもちろん、精神をすり減らす行為でもあります。社員みんなが心身ともにヘルシーに働くためにも、一筆書きできるスローガンづくり=迷いを減らす指針づくりが必要なのだなと思いました。

それに行動が一貫している会社や社員さんって、お客さん側からしてもすごく信頼できると思います。

またベテラン社員・冨田さんの、会社と、そして働く仲間と毎日真摯に向き合っていなければ出てこないであろう言葉の数々には深い説得力がありました。

そしてチーム全員が長時間のワークショップでも集中を切らさず、講師陣の話をしっかりと受け止めている姿からも「会社をより良くしたい」という気持ちの“本気度”を感じました。

どんなスローガンに決まるのか楽しみです!

(取材・文/ヒロエカナコ)