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ビカクシダには、受精の時点でクローンを作る方法があるはず

ビカクシダを胞子培養すると
まず前葉体が現れ、その後で最初の胞子葉が現れる

この最初の胞子葉は、成長した大きな株の、垂れ下がった胞子葉と同じもので
単にサイズが違うだけ

じゃあ前葉体は、貯水葉と同じものなの?

それは違って別のもの

前葉体は受精する前の葉


1つの胞子から、1つの前葉体ができる

1つのジフィーセブンに42個の前葉体を観測できたとしたら
まいた胞子のうち、42個がそこまで成長したということ

前葉体1つに、複数の造精器と、複数の造卵器が作られる

造精器から泳ぎだした精子が造卵器に入ることが大事なわけだけど
入ること=受精じゃない

入っても水分が無かったら受精しない


いや、造精器から造卵器まで泳いでいくために水分が必要じゃん

辿り着けたのに、水分が不充分なんてことがあるの?

なぜそんなレアケースが起きるかというと
普通は前葉体Aの造精器から出た精子は、前葉体Bの造卵器に入るのだけど

別の前葉体である、という条件は必須じゃないから

前葉体Aの造精器が、前葉体Aの造卵器に入っても受精は可能

このケースが、カンペキな自家受精


ビカクシダは、シダ植物の中でも雌雄同株に属する

前葉体は、その元になった胞子の時点で
減数分裂によって、親の半分の染色体数になってて

前葉体Aに造精器は複数あるわけで、精子も複数いるわけだけど
その遺伝情報はすべて同じ

前葉体Aにある複数の造卵器にいる卵子も
その遺伝情報はすべて同じ

受精すると胞子体が作られて、染色体数が元の二倍体に戻る

この胞子体が胞子葉を出すので
ビカクシダ関連のブログでは、胞子葉が受精の目印として注目されてるけど

厳密には、胞子葉は前葉体から生えてるのでなく
根元に胞子体がいるはず


その胞子体が、胞子葉と根のどちらを先を出してるのかも
目に見えない世界なので、調べたことがない
(普通は根だと思うのだけど……)

あと、最初に出す葉が
貯水葉でなく胞子葉に決まってるのも不思議

1枚目として貯水葉を選ぶ胞子体が
たまにいたってイイじゃない

いても見えないだけかなー


1つの前葉体だけで精子と卵子が受精した場合
理論上は、どの精子がどの卵子と受精しようと、結果の遺伝情報は同じになるので
一卵性双生児といえるはず

人間の場合、精子1匹1匹の遺伝情報は異なるから
卵子に入った精子が変わると、子供の顔は変わるだろう

ビカクシダの場合、1つの前葉体から複数の精子が作られるので
実質同じといえる精子が、もともと複数いる、というのが面白い


1つの前葉体から作られた精子と卵子が受精するってことは
遺伝的多様性は低くなる

というか、遺伝的にまったく同じなので
6つ子とかができるのだろう

成長させて5回クローンを分離して計6株にするより
一撃で多くの同個体が手に入る


逆に、ほとんどのケースは
別の前葉体同士で受精するので、できた株たちの遺伝的多様性は高くなる

この場合でも親は同個体なので、他家受精じゃない

同じ品種を2株用意して
胞子を混ぜてまいたら、もっと遺伝的多様性は高くなるだろう(他家受精)

ビカクシダの場合
自家受精に2種類あるってこと

前者を狙うなら
前葉体を1つずつ離して、前葉体間を泳げない程度の水分を与えて待てばイイ


その行為に意味を見い出せるかは、人による

双子以上の数を、ほぼ確実に作れる技術なわけだけど
その株が育った時、所持して嬉しい特徴を持つかは分からない

五等分の花嫁のような株だったら
嬉しさが5倍になるかもしれない

ただ、ビカクシダは成長するまで特徴が現れないので
5倍のスペースを使って1通りの実験をするくらいなら
5通りの可能性に賭けたい、って普通は思うだろう


だから、誰も試さないのだと思う

利益とか効率とか気にしない、純粋な植物好きで
雌雄同株のシダ植物にロマンを感じるなら

受精の手順が確立されてるビカクシダで実験するのは
興味を満たせて楽しいと思う

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