日本語でのビカクシダ情報が、薄くて古くて商売に偏りすぎなので、まとめ直した
ビカクシダに詳しい
とは、どんな状態を指すか?
育て方に詳しい?
植物として全体的に詳しい?
私は両方が揃ってないと自己嫌悪してしまうので
品種名の記法とかも正確に書くようにしてる
ナーセリーの人たちは、繁殖のための研究職でもあるわけだし
日本語情報だけでなく原文にリーチしてるだろう
けど、そこから一般的な園芸家に届くまでの
中間経路の人たち(販売とか)には
ビカクシダについての知識が怪しい表記が多くて
30,000円とか値付けしてるのに、なんてテキトーなんだ……
買うほうも、こんな雑な店を信用できるのか……?
ってビビるし
営利目的は利益を最大にしたいから
販促のために、インターネット上にビカクシダに関する日本語を多く残し
一般的な園芸家が検索した時に、それがデブリとして邪魔し続ける
そんな現象が、入門者が来るたびにループして
入門者が誤ったままコピペでデブリを増やす
株の外観にだけ興味がある人は
自身に対しても、知識で内面を充実させることに興味がないのかもしれない
いまの日本のビカクシダ界隈には
「こだわってるように見えて、抜けてるところが徹底的に抜けてる」
という現象が、たびたび発生してる
ビカクシダはかっこいいのだから
育ててる人たちも、知識を伴って、もっとかっこよくなってほしい
ビカクシダを育てようと決断した人が、まずする行動は
スマホかPCで「ビカクシダ 育て方」って検索することや
Copilotとかへの質問だと思う
結果、検索アルゴリズムが評価したサイトで
知識のブートキャンプを経験する
育てた経験がメインテーマのサイトが多いので
読んでて楽しい
その人が確かに経験してることなので
内容が間違ってるとは思わない
育て方だけでなく、ビカクシダという存在そのものに興味を持った人なら
Wikipediaも検索するかもしれない
日本語OSで検索すると、ふつうは
https://ja.wikipedia.org/wiki/ビカクシダ属
を読むことになる
そこに罠がある
Wikipediaは言語によって、情報量がまったく違う
科学的、技術的な記事は英語がオリジナルで
日本語に訳される時にロスト・イン・トランスレーション(翻訳漏れ)が起きてる
逆に、漫画やアニメの記事は日本語から翻訳されてて
英語版は薄ッ!って内容になる
そして、実は薄い内容を読んでる
ということ自体に気付けない
ビカクシダでは、中国語版以外はすべて薄い
並べると
https://ja.wikipedia.org/wiki/ビカクシダ属
https://en.wikipedia.org/wiki/Platycerium
https://zh.wikipedia.org/wiki/鹿角蕨屬
日本語、英語版は
中国語版を元に、0から書き直したほうがイイんじゃない
というレベルで情報量が違う
品種の紹介程度で更新がストップしてて
特に英語版は質が低い
アメリカのほうが南米から近距離なのに
ビカクシダを愛でる文化は、アジアが中心っぽい
品種名がアルファベット順なのに
P. elephantotisとP. ellisiiの順番をミスってることを、誰も訂正してないし……
中国語版は、品種の紹介以外の着眼点が増えてて
胞子からの育て方が載ってる
更新も現実をキャッチアップできてて
最近流行してるP. willinckiiのドワーフ品種の数々すら羅列されてる
(Jade Girlは、翡翠少女じゃなくて玉女と書くのね)
中国語圏での関心は、効率的な繁殖方法にあるっぽい
フロリダ、シンガポール、香港、台湾などの大学、研究機関が
green globular bodiesとかaposporyとかを利用して
クローンを取得するための手順を研究してて、それら論文へのリンクが載ってる
日本語ではクローンの記述が
メリクロン、OC、TCとか、売買のための情報に偏ってて
OCは価値が高い
TCはtissue cultureの略で組織培養だから、OCより価値が低い
細かいことは分からないが、なんか親株の再現率100%じゃないらしいからOCがほしい
って感じで
実利以外に関心を持たれてるのを見たことがない
中国語圏は、実際に培養する本人たちが参考にする情報だから
カルス誘導などの具体的な手順の情報に、ニーズがあるのだろう
おおって思ったのは
生息地によっては、商業的な調達のために絶滅の危機が起きてる
という大事な情報は
日本語にも英語にもないのに、中国語版にはあるということ!
この記述があるおかげで
ビカクシダのクローニングを、なぜ国立大学とかが研究してるのか
の理由を、読者がスムーズに理解できるようになってる
儲けるための研究でなく
儲けたい業者が乱獲して、森から消えていってるから
安価にクローンできる手段が確立すれば
業者はそっちの手段を選んで、森は守られるだろう
という目的がある
おそらく、日本でビカクシダを育ててる人でも
よっぽど好きで調べた人でないと
この辺を理解してないと思う
クローニングの手順が確立されてるのに
森から取得してきた株を購入してる業者がいたら、その業者はダークサイド側だろう
販売数は増やして、かつ売値の単価は下げたくない
のは商売人の普通の感覚だけど、野生株というプレミアがなくなれば単価は下がってしまう
それでも野生のものは仕入れない
高い販売価格を付けられるような、新規性ある美しさは
品種の交配で得ることにして、森での形質の変化には期待しないのがサスティナブルなんだろう
私は、名前にWildを含む品種を育ててない
そういえば、以前
日本語のサイトでは胞子葉、貯水葉という呼び名ばかり書かれてるけど
貯水葉という俗称が1位なのはおかしい、と書いた
正式では「巣葉」
英語でも巣葉を意味する「nest leaf」
中国語では「營養葉」という
(營養って、日本語の栄養)
栄養を蓄える葉ってことで
これも肥料好きなビカクシダを表現してる、貯水葉より良いネーミングだと思う
英語を直訳したfoliage leaf(群葉?群葉状葉?)、nest leaf(巣葉)には、外観を元ネタにしてる統一感があるし
中国語での、孢子葉(胞子葉)、營養葉(栄養葉)には、機能を元ネタにしてる統一感がある
日本語での胞子葉、巣葉は、それらのミックスだけど
巣葉は巣っぽい外見だけでなく、生き物の巣という機能と考えると、機能で統一されてる
ただ、細かいことをいえば
ビカクシダの品種には、アルシコルネとかヒリーみたいに
巣葉の天側に切れ込みが発生しないものもあるから
それって、巣っぽく見えないから……
栄養葉って名前のほうが最適だと思う
この中国語版
https://zh.wikipedia.org/wiki/鹿角蕨屬
をここまで充実させたのは、おそらく中華人民共和国のほうでなく
中華民国のほうの研究者だと思う
引用に、國立嘉義大學農學院森林暨自然資源研究所
という台中にある機関が出てくるし
そこの論文が引用されてるけど
私が観察してて持った疑問の解が、そのまま書かれてた
巣葉の目的は、腐葉土と水を集めること……だけでなく
枯れた巣葉を茶色く積層させることで、そこに根を張って、栄養素を吸収できる根の面積を増やすこと
私がそう思ってた理由は
活着する木の表面って、固くて根が刺さるわけないから!
自生のビカクシダを見ると、幹の垂直な壁には活着できず
分岐した枝でV字になった位置にまず生えてる
重力で乗ってるだけの状態から始まるので
自分自身の古い巣葉に活着して
横方向に広く活着しないと、次の台風で飛ばされてしまう
ほか、葉型での分類以外に
芽型での分類もあると書かれてる
葉型での分類は、日本語でもよく見る
胞子葉、巣葉(栄養葉)による分類
栄養葉は葉冠とも呼ばれる
丸い葉冠と、天側だけギザギザになってく葉冠があるなー
とは思ってたけど
上に向かって成長するのはギザギザのタイプだけで
丸いタイプは球形に覆うように進化してて、上を意識してないとは知らなかった
株としては、新規の胞子葉が生える方向が上、でイイと思うけど
巣葉自体に上下はなく、球の中心方向だけを意識してる感じ……?
芽型は、日本語に訳した人が過去にいなかったのか
日本でのビカクシダ界隈に、存在しない概念に思える
多芽と単芽に分かれる
不定芽という言葉は
日本語サイトでも多く書かれてるので普及してるっぽい
ただ厳密には、それが生えるのは根からだけじゃない
根の中でも、横方向に伸びる根を根茎と呼ぶけど
根茎は、側枝と呼ばれる茎を生やす能力を持つ
その側枝からも不定芽は生える
あと、メインでない茎や根から生えるから不定芽と呼ばれるわけで
メインの芽が2つ生えてきたケースは、厳密には側芽と呼ぶ
例えば、トマトの脇芽は側芽の例だけど
あんなふうに成長点が2つに増えてることは、ビカクシダでもあった
共通して使える言葉は「芽」
よく使われる「子株」という表現は
胞子が成長して小さな株になった場合と区別がつかないので
クローンだけを意味したい場合は「芽」が良いと思う
メイン以外の芽を生やす能力を持つ品種が多芽で
持たない品種が単芽
原産地でハッキリ分かれてるのが面白い
ビカクシダの3グループである
マレー半島-アジア
ジャワ-オーストラリア
アフリカ-アメリカ
のうち、マレー半島・アジアはすべて単芽
それ以外はすべて多芽
マレー半島-アジアって
P. coronarium
P. grande
P. holttumii
P. ridleyi
P. superbum
P. wandae
P. wallichii
など、「胞子葉がなかなか生えないヤツ」
という共通点があるので覚えやすい(リドレイだけ例外)
逆にいえば
「胞子葉がすぐ生えるヤツは、胞子以外でも増やせる」
と覚えることもできる
胞子ができるくせに、胞子に頼らないでも増えるわけで
増えるペースも速いのかな……
ただしリドレイ、テメーはだめだ
リドレイと「子株が生えた」という表現は矛盾する
リドレイを育てやすく改良したP. Mt. Kitshakoodも
交配させたのがP. coronariumなので、単芽なのだろう
リドレイっぽい株が芽で増えたら人気が出そうだけど
プロが作ってないってことは
多芽との交配には、超えられない壁があるのかも……?
「ジャワ-オーストラリア」グループのうち
P. bifurcatum以外の3種が原種から抹消され
P. bifurcatumの亜種にされた時期がある、という話も
中国語版にだけ書かれてた
それは長くなるので、別記事に分けます
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