先生辞めます④
退職願いを提出した私は、泣き腫らした顔で校長室を後にした。
周りには出勤している同僚がたくさんいたが、悟られてはいけない。
なるべく顔を伏せて、見られないように席についた。
退職を校長先生に伝える前に自分で決めたことがある。それは、退職することを最後の挨拶の日まで同じ学校の先生たちには絶対に言わないこと。
最後までしっかり働きたいし、周りからも「辞める人」だと言う目で見られながら働くのが嫌だったからだ。来年も働くかのように最後まで働こうと決めた。
だから誰にも校長室での出来事を話せないし、聞かれてもいけない。
でも居ても立っても居られない私はスマホを手に取り、ある人に連絡した。
その子は小中高と同じ学校の仲良しの友達で、大学は違ったものの、同じ英語教師を志した仲間。今は遠く離れたところで同じように中学校の英語教師をしている。
「退職願い出したよ。これで正解だったのかな。。。」
すぐに返事が返ってきた。
「そっか!今話せる?」
別室へ移動して電話をかけた。
声を聞いた瞬間にまた泣けてきて、ボロボロ泣きながら退職に至った経緯や、校長室でのことを話した。そしてこれが正解かわからず少し迷っていることも。
話を聞き終わると友達はこう言った。
「絶対今が辞め時だよ!」と。
一瞬どう言う意味なのか理解できなかったが、こう続けた。
「管理職っていろんな人がいて、辞めるって言ったら教員が不足しているからって言う理由だけで必死に止める人もいれば、散々嫌味を言う人もいるんだよ。でも今の校長はKaKoの話をしっかり聞いてくれて、意思を尊重してくれたでしょ。そんないい管理職がいる時に辞められてよかったじゃん!教師が嫌だ!もうこんな仕事嫌だ!嫌味言われたし、一刻も早く辞めてやる!って嫌な気持ちで辞めるより、ちょっと寂しさを残しつつ辞める方が絶対いいよ!」と。
その言葉がすっと胸に落ちて、一気にモヤモヤしていたものが晴れた気がした。
電話を切る頃にはすっかり迷いはなくなっていた。友達の言葉にしっかり後押しされて、私はすでに新しい道を歩み出していた。まだ靄がかかって視界が悪いけれど、少しずつ歩いていけばきっと道は続いているはず。
私が「先生」でいられるのもあと2ヶ月。最後の日までしっかり働く。それが今の目標。
完