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もし、昨年度からの引継ぎで「成績が良くない生徒が多い」学年を受け持つことになったら

小学校からの申し送りや昨年度からの引継ぎで、学年全体の傾向として、「成績が良くない生徒が多い」という情報があったら、あなたはその学年団として、どうやって学力を向上させますか?

とにかく基礎が大事だ。基礎的なテスト(漢字・計算・英単語)などを定期的に行い、「できる」成功体験をさせて、勉強っていいなあ・・・と思わせる方略を取りますか?

それとも、そもそも「わかる」「できる」って楽しい!授業を魅力的にすることから始めるべきだ!と授業そのものを改善していったり、集団として「心理的安全性」を高め、学びの共同体の構築を目指していこう・・・という方略を取りますか?

年配の先生ほど、前者の方略を取る傾向にあると思います。特に、この基礎学力を確認するテストをこまめに行うことで、学力の底上げに成功した体験をもつ教師ほど、「自分の経験だと・・・」ということで、テスト漬けの学年にします。再テスト・再々テストもしっかりやります。合格できなかった生徒は、間違った問題を10回書いて提出するなんて方法をとることすらあります。

完全に学習が「罰」になっています。

この方略を取る教師はこう言います。

「嫌な目に合わせないと本気で勉強しない。だから、こまめに基礎学力を高めるようなテストを行い、保護者に結果をしっかり伝え、不合格者は再テスト・再々テストを行ったり、わからなかった問題は10回書いて提出というスタンスで臨まないと、学習から逃げてしまう。嫌なことから逃げない生徒を育てたい。また、簡単なテストを行うことで、達成感を味わわせ、自分はできるという自信をつけてやることができる。これが自分たちのスタイルだし、生徒の学力向上に非常に貢献していると思う」・・・・と。


確かに、この基礎学力を付けるテストを定期的に行うという方略は有効であると思います。しかし、それと同時に弊害も多くあると感じます。

(1)どうしてもできない生徒は、いつまでも続く再テスト地獄・間違い直しの提出に苦しむ

頑張っていないわけではなく、一定数ディスレクシア(読み書き障害)の生徒はいます。

一説には15人に1人の割合でいるそうです。30人クラスならば、2人はいることになります。そういった傾向をもつ生徒を「お前は努力してない」として再テスト・再々テストや過度な間違い直しをさせるべきなのでしょうか。再テスト・再々テストをしているうちに、次の教科のテストが近づいてきて、またそのテストも不合格に・・・。負の連鎖です。それによる先生嫌い・学校嫌い・勉強嫌いなどの2次障害も起きるでしょう。

(2)現在の教育の進むべき方向性として、知識を詰め込むことより、身の回りや社会の諸問題を解決するために、知識をどう使うかという方向に向かっている

知識は思考の道具なので、ある一定の知識の詰め込みは必要なことは間違いありません。人は言葉を知ることで、思考できると思います。しかし、教育の方向性は、知識の詰め込みよりは、「どう使うか」という方向性に傾いていることも間違いないことだと思います。

これから起きる誰も経験したことがない問題に立ち向かうことが求められる子供たちを、どう教育していったらいいかと考えれば、分かることだと思います。

(3)対応する学年の教師の疲弊

その学年団に5教科の教師がいればよいのですが、いないことの方が多いと思います。そうすると、いない教科のテストを作成するのは、その学年の他教科の先生ということになると思います。これはかなり負担になります。

また、採点もしないといけません。再テスト・再々テストや間違い直しもあり、それも採点・点検します。自分の教科でもないのに。そもそもそういうテストはその教科でやるべきことでしょう。

この基礎学力をきっちりやらせ切ろうとすればするほど、その学年の教師は確実に疲弊します。



勉強って苦しい一面はあるかもしれませんが、「面白い!」「なるほど!」という「アハ体験」がすごく必要だと思います。罰やご褒美などの外発的モチベーションだけでなく、内発的モチベーションがすごく大事なのではないでしょうか。


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