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【読書】おくのほそ道(ストーリーで楽しむ日本の古典)

2023年1月11日(水)、岩崎書店の「ストーリーで楽しむ日本の古典」シリーズをまた1冊読み終えました。今回は『おくのほそ道』です。

あとがきで、作者の那須田淳さんが書かれていますが、「芭蕉は、自分の藩(伊賀上野藩)のお家騒動に巻き込まれながら、自分の養子、桃印の行方を追って、隠密の曽良と一緒に旅をする」というストーリーにアレンジされています。副題は「永遠の旅人・芭蕉の隠密ひみつ旅」です。

さて、この本で私が第一に考えた点を2点上げます。
①俗人と俳聖としての顔、三重県の伊賀上野の郷士出身
俳諧師として名高い松尾芭蕉ですが、頭角を表す前は、料理人であったり、事務員をしたり、水道工事の監督をしたり、俗世での仕事もこなしていたそうです。
②旅のお金はどこから出ていたか?
弟子の曽良などが工面していたようです。また、弟子は日本各地にいて、宿を借りたり、路銀を調達したりする姿も伺えました。

①②ともに共通していますが、私自身、会社員生活を送っており、日々の生活のために、仕事や最低限のお金がやはり必要なのだと改めて実感する部分がありました。俳聖の芭蕉を別の角度から、少し身近な存在として見ることが出来たように思います。

さて、こうした少々生々しい話は置いておいて、本作で取り上げられた芭蕉の句を記録しておきたいと思います。『奥の細道』の原典を読めばもっと理解が深まるのかもしれませんが、本作のストーリーや解説でも、各俳句の持つ意味や解釈を考えることが出来ました。
なお、以下の俳句は本書で取り上げられた句で、『奥の細道』に出ていない句もありますし、出て来る順番なども少し異なるようです。いつか原典での記載箇所と比較してみたいと思います。

<江戸・深川>
・古池や 蛙とびこむ 水の音
<千住~草加>
・行春や 鳥啼魚の 目は泪
・草の戸も 住み替はる代ぞ 雛の家
<草加~粕壁>
・もの言えば 唇さむし 秋の風
<室の八島~日光>
・あらたうと 青葉若葉の 日の光
<白河関~那須>
・かさねとは 八重撫子の 名なるべし(曽良)
<黒羽~仙台>
・あやめ草 足に結ばん 草鞋の緒
・木啄(きつつき)も 庵(いお)はやぶらず 夏木立
<松島~平泉>
・夏草や 兵どもが 夢の跡
<尾花沢~山寺>
・閑さや 岩にしみ入る 蝉の声
・まゆはきを 俤(おもかげ)にして 紅粉(べに)の花
<月山~越後路>
・荒海や 佐渡によこたふ 天の河
・五月雨を あつめてはやし 最上川
<金沢~大垣>
・蛤の ふたみにわかれ 行く秋ぞ
<あとがき>
・旅に病んで 夢は枯野を かけ廻る

最後に、本作に登場した伊賀上野藩の藤堂嵐子、伊達藩の綺羅姫、膳所藩の本田康命なども実在の人物と記載されていました。道中に出て来たお弟子さん達も実在する方々のようです。フィクションで組み立てられた部分の面白さを感じるとともに、徳川綱吉・元禄の世で、彼らが実際どんな人たちだったのか、時間があるときに調べてみたいと思います。

杉風(さんぷう)、蝉吟(せんぎん)、北村季吟、小沢太郎兵衛、おてい、桃印、水戸光圀、伊達綱宗、伊達綱村、(高林玄蕃)、西行法師、コノハナサクヤヒメ、左甚五郎、仏の五左衛門、桃雪、翠桃、(西村源三郎)、仏頂禅師、片倉小十郎村長、北野加右衛門、瑞巌寺、藤堂采女、鈴木清風、菅沼曲水、(西村慎吾)

以上です。



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