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【読書・動画視聴】婦系図(泉鏡花)

 2023年9月、泉鏡花の『婦系図おんなけいず』に触れる機会があったので、記載してみようと思います。
 とは言っても、原作の小説を読み切った訳ではなく、①動画の一場面、②新派についての展示、③漫画のような媒体などで、触れました。
 以下、メモを残します。

■「湯島の境内」の動画と簡単なあらすじ

(1)動画視聴
 国立劇場の裏手にある「芸能資料館」にはシアタースペースがあります。
 そこで、映像の一つとして『婦系図』のモノクロ動画が公開されていました。モノクロの14分、「湯島の境内」の場面とあります。
 おつた(演:水谷八重子)と早瀬主税はやせちから(演:中村吉右衛門)の別れの場面のようで、ちょうど「おれを捨てるか、女を捨てるか」という台詞が出てきていました。
 私は、この場面を見るのが初めてだったこともあり、「どういう人間関係だろう?」と思い、『婦系図』について調べてみました。

(2)『婦系図』のあらすじ

泉鏡花作の長編小説。1907年(明治40)『やまと新聞』に連載され、翌年、前編・後編に分けて春陽堂より刊行。早瀬主税はやせちからはやぶさりきという掏摸すりだったが、ドイツ語学者酒井俊蔵しゅんぞうに拾われて書生となり、更生する。柳橋の芸者蔦吉つたきちとひそかに夫婦になるが、酒井は許さず、2人は別離を命じられる(このくだりは、師尾崎紅葉が認めなかった鏡花とすず夫人の同棲に基づいている)。

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)・インターネット検索

 他にも、静岡の資産家・河野英臣の一族を巡る問題も孕んでいますが、ここでは省略しました。
 先に出ました「おれを捨てるか、女を捨てるか」という台詞は、師匠の酒井から出されたものだったのですね。しかも、師の尾崎紅葉が絡んでいる実際の話に基づいているということは、初めて知りました。すごい三角関係です。

■新派についての展示

 この鏡花の小説は、演劇や映画にもなりました。「芸能資料館」では、現在、閉場に向けての掉尾を飾る展観として、寄贈品を中心とした展示がされていますが、第5章が「新派・喜劇」です。そこから少し紹介します。

 新派は、歌舞伎(旧派)に対して明治に生まれた近代の演劇である。草創期から昭和の戦後まで、女性役は歌舞伎同様、女方によって演じられた。新派における女方芸を確立したのが初代喜多村緑郎で、それを継承したのが弟子の花柳章太郎である。<中略>また、草創期の男役を代表する名優が井伊蓉峰である。<中略>
 井伊蓉峰の遺品には、多くの台本や付帳類があり、明治・大正期の新派の演目に関する貴重な資料となっている。初代喜多村緑郎関係では、代表的な古典演目である『婦系図』(湯島境内)に関するものを紹介する。また、花柳章太郎は美術的才能に恵まれ、自身でデザインした衣裳や書画の作品を残したことで知られる。<以下、省略>

「芸能資料館」の展示パネル「第5章 新派・喜劇」より

 新富座の初演では、井伊蓉峰が主税、喜多村緑郎がお蔦だったようです。
 新派についてあまり詳しくない私は、明治期の小説で、こうした演劇になった分野があることを初めて知りました。

■コミグラフィック日本の文学

 こうして『婦系図』について追ってきた私ですが、最後は「コミグラフィック 日本の文学」(暁教育図書)シリーズのうち、泉鏡花の巻を手にとってみました。
 同シリーズは、「コミックス(まんが)」と「写真・グラフ」が一体となったようなシリーズとあります。『婦系図』のあらすじを追うだけでなく、泉鏡花や尾崎紅葉の写真なども掲載されて、楽しむことが出来ました。
 同書によると、「湯島境内の別れの場」は、原作にはない、戯曲化・映像化される中で出来た場のようです。また、『湯島の白梅』という映画もあるようです。

■最後に

 途中に記載しましたが、『婦系図』は、静岡の資産家・河野英臣の一族を巡る問題なども含め、複雑なストーリーの部分もあるのかな、と思います。一族をあげての結婚に対する批判などを含めて。
 また、「婦系図」という題名にもあるように、当時の女性のあり方などを知ることが出来る作品のようにも思いました。
 泉鏡花の小説はあまり読んだことがないのですが、もう少し他の作品にも触れ、彼がどんな時代を生き、どんな考えを持ち、どんな作品を作ったのか、もう少しつかんでみたいと思いました。

 最後に、今回は、泉鏡花とその作品『婦系図』を、どのように追っていったのかを書いたので、知っていった順になり、まとまりがあまりなくなってしまいました。反省点もありますが、新しく知ることも多く楽しかったです。

 本日は以上です。

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