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独居老人の家計簿 貯金ゼロでも大丈夫

こんにちは! 老人です。

世界中が、「高齢化が問題だ」と騒いでいます。「高齢化問題」とは、老人にはいやな言葉です。まず「高齢化」ではなく「長寿化」と言え、と思います。それの何が「問題」なのでしょうか。けっこうなことじゃないですか。

とにかくこれを「問題」だと言い立てる人たちは、労働者の退職時期を繰り下げ、年金支給開始年齢を引き上げ、70歳まで、いや75歳までも人を働かせようとしています。男の平均寿命は80歳ですよ。これでは死ぬまで働けと言っているのと同じです。ザケンナと言いたい。

60歳以上働けば、退職後の年金支給額もふえるというインセンティブで、政府もメディアもそっちのほうに誘導しようとしているようですが、何歳まで働けば月単位でいくらふえるというような、あんな複雑な計算式、老人に理解できるわけありません。何歳何カ月で退職すべきか、なんて、老人にそんな難しい決断を押し付けるなよ、とその点でも腹が立ちます。

60歳以上働く選択肢をもうけるのはいいですが、「ご苦労さん、60歳で退職しても老後は大丈夫ですよ」、と安心させるのが、国民のためを思う政府だろう、と思いますね。そして、老後の生活設計のための数式は、できるだけシンプルにすべき。老人に理解できないような数字の提示は、サギ同然の行為です。

こういう風潮に抗して、私は、60歳で完全リタイアし、死ぬまで遊んで暮らすシンプルな生き方を人に勧め、自分でも実践しています。


貯金は要らない

私はふつうの会社員を30数年勤めただけの人間。親の財産などはいっさいありません。

その場合、老後にどのくらいの貯蓄が必要なのか、気になるでしょう。

年金支給開始時点で、2000万円以上の貯金が必要だ、という話が一時、流れました。

それに対し、私は、年金開始時点で200万円あれば十分、最悪ゼロでもいい、という説です。

60歳までの現役時代は、貯金など考えず、得たお金をすべて趣味などに使ってオーケーです。

一つだけ、肝心なことは、リタイアしたら月10万円で暮らせる生活習慣をつける、ということです。


「3」で家計を組み立てよう

月10万円の生活で、贅沢はできません。でも、現に私はそれで生きています。若い人が書いた「年収100万で楽しく生きる方法」みたいな本は、けっこう出ていますよね。

流行りのカフェに毎日行って500円のコーヒーを飲む、という生活はできません。タバコや酒も控えないといけないでしょう(私はタバコは吸わず、酒も滅多に飲みません)。しかし、そういう贅沢を除けば、スマホを使い、インターネットでゲームをする、文化的にも不自由のない楽しい生活が、たしかにできます。

(そんな生活が広まると、外食産業とかの人がやっていけないじゃないか、と思う人がいるかもしれませんが、忘れないでください、私は現役時代はガンガン消費せよ、と言っています。現役世代が現役世代を支えればいいのです。私も、会社員時代にたいがいの贅沢を一通りは経験しました。)

月10万の内訳は、だいたい以下の通りです。

住宅費 3万円

食費  3万円

光熱・通信費 3万円

予備費 1万円

これを私は、「3」の家計、と呼んでいます。3の倍数がわかりやすいのは、食費月3万円であると、1日1000円と計算できるからです。

予備費1万円は生活雑費で、そのなかから洗剤を買ったり、散髪代を払ったりします。独居老人は新しい衣料はほとんど買いません。クリーニング代などもかかりません。

若いときはわかりませんが、歳をとると見栄も欲もなくなって、消費が減るのは自然なことです。それは苦痛ではありません。

さて、私のようにサラリーマンとして人生を送った人の65歳からの年金は、人によるでしょうが、月12万〜18万(年140万〜200万強)だと思います。月10万円(年120万円)で暮らしていけば、月2〜8万円の余裕が生まれます。

その余裕資金から税金や、慶弔費などの突然の出費に対応します。余れば、海外旅行に行くのも、最新型ゲームパソコンを買うのもいいでしょう。贅沢は、たまになら、していいのです。それが習慣化しなければいいだけの話で。


つなぎ資金

問題は、年金支給が始まる65歳までのあいだの資金です。(なお、60歳でリタイアするのは、この歳になると厚生年金を払い終わるからです。)

それまでの5年間に必要なのは、120万円×5で、600万円です。だから、60歳の退職時点で、少なくとも600万円は必要です。それくらいは、ふつうは退職金でまかなえるのではないでしょうか。

ただし、退職直後は、収入がゼロになるのに、働いている時代の年収に見合った健康保険料や、住民税などを、払わなければなりません。このあたり話が複雑で、詳しくは別に調べてほしいのですが、上記の金額にプラス100万円くらいは用意しておくべきです。

そして、65歳時点で、貯金がゼロになっていても、年金支給が始まりますから、大丈夫です。


老後生活の基本

老後の生活で、負担になるのは、よく言われるように、次の3つです。これらを「持たない」のは、私の説でも前提です。

・ローン

・保険(国民健康保険には加入します)

・車


住まいの考え方

月10万円生活で、だいいちに生活の質を決めるのは、「住居費3万円」の部分でしょう。

私は退職金で中古マンションを買いました。だから私の場合、この「住居費3万円」は、マンション管理費です。(築年数が多いと、管理費は高めになります)

独居するので、安全面や管理面から、一軒家よりマンションのほうがいいと考えました。マンションのほうが、駅からの距離や広さに関して、一軒家より同条件で安いのも理由です。

資産価値が減るばかりだから、家は買うより借りるほうがいい、という意見があります。しかし、資産価値は関係ないのです。べつに子孫に残すわけではない。自分が死ぬときに資産価値ゼロでも、かまいません。

60歳で中古マンションを買うなら、築20年くらいの古さで十分です。90歳まで生きるとしても、それまでマンションが崩壊することはないでしょう。

そして築20年の中古マンションなら、地方なら1000万円で買えるでしょうし、2000万円も出せば、いまなら首都圏でもわりにいい場所に買えます。

独居だから広さは必要ない。ただし老人だから、駅や病院に歩いて行けて、しかも道が平坦であることに、こだわりたいものです。3000万出せるなら、広さも設備もかなり確保できるでしょう。

マンションも、退職金から現金で買えるなら、ローンに無縁の人生が送れます。

持ち家を買えない場合、「住居費3万円」は、家賃になります。

地方なら家賃3万円のアパートはふつうにあるでしょうし、首都圏でも古い団地などであるかもしれません。ただ、アクセスや設備面では、妥協しないといけないでしょう。


自炊の歓び

「食費月3万円」は、1日1000円です。おのずと3食自炊が基本になります。

1日のうち、1食くらいは、外食でもいいです。私も、たまには昼にラーメンを食べに行ったり、夜に焼き鳥屋で一杯ひっかけることがあります。でも、少なくとも2食は自炊しないと、1日1000円におさまりません。

食費を減らすというので、3食カップラーメン(カップラーメンもいま高いですが)とかの食事になるのは最悪です。栄養のあるものをしっかりと食べる、それは老後においても、基本中の基本です。

だから、自炊が苦手だと、私の月10万円計画は、ほぼ不可能になります。その場合は、60歳からも働く人生を選んでください。

現役のあなたが、職場の近くの食堂で、ランチに1000円のチキンステーキ定食を食べるとしましょう。都心だと同じものが1500円するかもしれません。それだけで、私の「1日1000円」の予算枠を超えてしまいます。

しかし、そのチキンステーキ定食の原価は350円くらいです。トリのもも肉は250グラム300円くらい、激安スーパーなら200円で買えますから。牛丼などは、これも「肉のハナマサ」などで仕入れれば、たぶん150円くらいで家で作れると思います。

自炊に慣れれば、現役時代と同質かそれ以上の食事を、3分の1のコストでとることができるのです。なにしろ退職老人は時間だけはあるので、食材の入手に時間をかけることも、料理にたっぷりの時間もかけることもできます。外で食べるよりおいしいもの、そして自分がまさに食べたいものを、食べることができるのです。

いまはインターネットで、ほとんどのレシピが手に入ります。Youtubeで動画でも学べます。自炊に慣れれば、次は何を作ろうかと考えるのも楽しみですし、実際に自分にとってのおいしい料理ができますから、生活の喜びになります。

食材の入手から料理の仕上げ、そして最後の片付けまで、炊事は段取りの勝負で、頭を使いますから、脳の訓練にも最適です。(ただし、心身に故障がでたら、火やガスを使うのは危ないからやめましょう。)


光熱・通信費

「光熱費・通信費」の3万円は、電気・ガス・水道代と、携帯電話、インターネット料金、NHK・ケーブルテレビ料金など。私の場合は、NetflixやAmazon Prime料金、ソフトのサブスク料も含まれます。

もし、携帯はあまり使わない、インターネットもあまり使わないということであれば、3万円も必要ないかもしれません。政府の施策で携帯料金が下がれば、さらに余裕が生まれるでしょう。


税の使い道

年金という収入と、月10万円の支出との差額から、医療費や、健康保険料、税金が支払われます。月2〜5万円の見当です。大きな病気や事故がなければ、お金は余るはずですから、先に書いたように贅沢に使えばいいですが、固定資産税などが高い場合、それで足りない場合もあるかもしれません。その場合は、光熱・通信費を節約しなければならないでしょう。

私は、住民税は気持ちよく払っています。老人にとって、公立図書館や、街の公園の整備は、とても大切です。これは現役時代にはわからなかったことでした。図書館や公園は、老人の日中の居場所になります。私の住む自治体は、図書館と公園が充実していて、役所の対応もいいですから、ありがたいです。

ムカつくのは、節約しようのないNHK受信料ですが(私はNHKをまったく見ない)、これも政府が何とかしてくれるよう願っています。


緊急手段

もし大事故を起こしたり、高額な医療費が必要になって、月10万円生活が根本から崩壊した場合、最終手段として持ち家の売却があります。

死ぬときに資産価値はゼロでいいと言いましたが、それまではゼロではないでしょうし、価値がほぼそのまま保たれる場合もあるでしょう(だから資産税を払っている)。不動産の売却で、1000万円くらい工面できれば、緊急時になんとか対応できるはずです。

もし介護が必要になり、施設に入らなければならない場合、2000万円工面できれば、入居料にあてられるでしょう。

持ち家でない場合は、この緊急避難手段が使えないので、その分は不安です。


「利子」に頼らない

なお、いくら貯金があっても、NISAなど含めて、「投資」「利殖」はしません。それは、私に言わせれば「仕事」だからです。どんな種類のものであれ「仕事」をしない、というのが私の老後のポリシーです。

しかし、この部分は私の「哲学」なので、あなたの考え方がちがうなら、それはそれでかまいません。


独居のメリット

以上が、「サラリーマンが60歳で完全リタイアし、65歳時点で貯金ゼロでも大丈夫」説の骨子です。

そして、これはやはり、私が独身だからできる老後計画だと思います。

貧乏がこわいのは、扶養家族がいる場合です。他の人間の生活の責任まで背負い込むところから、たいがいの人生の苦労が始まります。

ビジネスだって、自分一人が破産するのはまだいい。従業員のクビを切らなければならない、下請けを切らなければいけない、というのがつらいのです。

子どもを飢えさせるわけにいかない、とか、世話が必要な同居人がいる、といった場合は、貯金ゼロだとこわいでしょう。できるだけ働いてお金をためようとするでしょう。それは当然です。

しかし、独居老人は、その点が気軽です。他人の責任まで背負い込まないですむように、私は注意深く生きてきたのでした。身一つですから、最後はなんとかなると思えます。


理想の老後

老後になって生活水準を下げるのはつらそうだ、と言う人がいます。そこは、考え方です。

出世などの欲望を断ち、世俗を離れ、わずらいから逃れ、質素な一人暮らしをする、というのは、むかしから、人生後半の理想の生き方の一つであり、無数の日本人、東洋人が実践してきた生き方です。

いま欧米でミニマリズムとか言われているこの生き方は、仏教や神道以前の道教(老荘思想)の教えです。それは、われわれ東アジア文化の古層に脈々と生きています。それを現代でも実践しよう、というのが、私の勧めでもあるのです。

*ただし今後、コロナ禍で雇用や年金などの経済事情が悪化した場合は、上の人生設計が成り立つかどうかわかりません。

(終わり)



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