見出し画像

【Netflix】2020老人向け映画ベスト5

こんにちは! 老人です。

老人はヒマだから、NetflixとかYouTubeとか死ぬほど見てます。

今年は「愛の不時着」とかが話題になりましたが、なかなか老人向けのコンテンツがないんですね。それでも、ヒマにあかせていろいろ見ていると、拾いものはあります。私がNetflixで2020年に見た映画から、年寄りに勧めたい映画を5本、選びました!

老人向け映画の3条件

1  エロはいらない(老人は性欲が枯れている)

2  恋愛映画はパス(老人には関係ない)

3 グロはかんべん(老人は心臓が弱い)

Netflixのドラマは、最初のほうにセックスや裸が出てくるのが多い。若い視聴者を惹きつけるためですが、老人にとっては、それが「ああこれは老人向けではないな」というフラグになります。そういうシーンが出てくると、私は見るのをやめます。

あと、老人が主人公であるのが望ましいですが、絶対条件とはしません。

老人向けといっても、退屈であることを意味しません。老人は若者よりたくさんの映画を見ていて、目が肥えています。SNSとかではあまり話題にならない、地味目の映画が多いですが、見応えは保証します。(順位はつけず、5作選びます)

1  「ミスター・ピッグ」

孤独な老人(ダニー・グローバー)が豚をメキシコに運ぶだけの映画です。面白いはずはないと思うでしょうが、老人にはしみじみ来ます。

立ち小便しようとして「あれが縮んで出てこない」とか、「老人あるある」もいろいろ盛り込んでいます。ダニー・グローバーは、いま老人俳優界でアツいですね。私は彼が出ていれば見るようにしています。

ダニー・グローバーと高岡早紀が共演した「Harimaya Bridge (はりまや橋)」という映画をご存知でしょうか。高知のご当地映画です。私はたまたま高知に行ったとき見たんですが、ダニー・グローバーはキティちゃんかと思いました。なかなか心に残る映画でしたよ。

独居老人が主人公といえば「ラッキー」がありますが、センスが若者で、私はつまらなかったですね。また、クリント・イーストウッドの「運び屋」は、残念ながらNetflixで見られなくなったようです。

2  「ズカルスキーの苦悩」

1970年代、ロサンゼルスにズカルスキーという天才老人美術家が突如現れ、当地のサブカル好きの若者たちをとりこにします。

ズカルスキーとは何者か。ファンになった若者の中にレオナルド・デカプリオの父親がいたことから、ズカルスキーの死後に、このドキュメンタリー映画がつくられました。有名なほうのデカプリオ息子がプロデューサーになっています。

老人なのに情熱が衰えないズカルスキーはピカソのようですが、天才の自負と、晩年になっても無名である苦悩が伝わってきます。そんななかで、デカプリオ親子を含む若者たちとの交流には、心がなごみます。

じつはズカルスキーは、戦前のポーランドで有名な彫刻家でした。国家のプロジェクトにかかわるような大物でしたが、その彼がなぜ戦後アメリカに渡り、寂しい老後を送っているのか。

その謎に映画は迫っていきます。たいがいの日本人は知らないだろうポーランドの複雑な歴史、はては20世紀の政治の暗部にかかわってきます。ヨーロッパの文化史や、現代史に興味ある人にもお勧めできます。

3  「最後の正義」

1980年代のペルーで勢力をほこった過激左翼組織「輝ける道(センデロ・ルミノソ)」のリーダー「グスマン」を、男女2人の警官が追い詰めていく。事実を元にしたペルー映画です。

こういう内容では、そうとう観客を選ぶとおもうんですね。「輝ける道」と聞いてピンとくる若者はいないでしょう。でも、老人の中の、ある層には、胸アツの映画です。

「輝ける道」は、「ペルーのクメールルージュ(ポルポト派)」とも言われました。映画のなかでも「いまペルーは南米のカンボジアと言われている」というセリフが出てきます。実際、一時は国土の3分の1を支配しました。ペルーでカンボジアのような革命が起こる可能性は、ゼロではなかったでしょう。

この「輝ける道」に大弾圧をくわえたのが、90年代に登場したアルベルト・フジモリ大統領です。この映画でもフジモリが記録映像で出てきます。当時「グスマン」は、むかしのポルポト同様、所在不明で、生存さえ確認されていませんでした。はたして警察はグスマンを逮捕することができるのか・・・

これが、ある層に胸アツだと言うのは、日本での革命の可能性がなくなったあと、「輝ける道」に最後の希望を託し、ペルーにわたった左翼の日本人もいたからです。いまの75歳以上、団塊以上の層です。もともとこの層は、ゲバラとか、フランツ・ファノンとか読んで、第三世界の革命に希望をもっていました。

フジモリは、日本生まれの日系人であるにもかかわらず、日本でそれほど人気になりませんでした。日本での評価が少し複雑になったのは、マスコミのなかの左翼系の人にとって、フジモリは反革命の右翼であり、敵だったからです。

その時代の記憶がある人には、この映画は感慨深いと思います。当時わからなかったペルーの状況、追う者と追われる者がときに逆転する、迷宮のような複雑な権力関係がわかります。

追う者も追われる者もとにかく貧しい。貧乏人同士が命をかけて対立する。(もっとも、グスマンは、外国からの援助ーーたぶん中国ーーでわりあい優雅に暮らしていたことも映画でほのめかされています)

この映画が描くのは、思想やイデオロギーに関係ない、当時の途上国の哀しみです。ちょっと、かつての船戸与一の小説みたいかな。

その哀しみを全身で体現する、女警官役の二ディア•ベルメホの演技には、だれもが圧倒されるでしょう。日本人的な顔立ちであることも共感を強めます。最後のほうにに少しエログロいシーンがあるのはご勘弁ください。

ちなみに、クメールルージュを描いた、アンジェリーナ・ジョリー監督の「最初に父が殺された」もNetflix で見ることができますが、私は怖くてまだ見ていません。

「シアタープノンペン」は、Amazon Prime Videoで見られるようになりました。タブーをやぶって、カンボジア人自身があの時代を描いた映画です。むしろほのぼのとした映画ですが、私は最後、涙が止まりませんでした。

さらに余談ですが、ポルポトの死体を現地で確認して「ポルポト死す」の世界的大スクープを放ったのは、日本人フリージャーナリストの馬渕直城でした。それがたとえば朝日新聞の記者だったら業界の賞をとって大宣伝されるでしょうが、フリーだったから忘れられた感があります。彼の伝記映画なんかも見てみたいですね。


老人だから話がどうも長く、くどくていけません。疲れてきたので、あとは手短にいきます。

4  「アメリカン・バーニング」

ユアン・マクレガー監督・主演の映画です。

*この映画はNetflixではなく、Amazon Prime Videoの映画でした。削除すべきですが、まあいいかと残します。老人ゆえの粗忽といい加減さをお許しください。

戦後のアメリカ。マクレガー演じる主人公は、社長の御曹司、かつスポーツの学園ヒーローで、美人の同窓生(ジェニファー・コネリー)と結婚し、まずは理想の家庭生活を送るかに思えます。

しかし、ときは1960年代に入り、娘(ダコタ・ファニング)が左翼過激派の思想にかぶれ、爆弾犯として逃走します。マクレガーは半狂乱となって娘を探し、やがて・・・という話。

60年代、左翼にかぶれた若者と、その親との愛憎は、日本でも見られたものですが、あんがい映画やドラマでは描かれていません。かつて若者だった人も、親だった人も、老人になって振り返るには、いい映画だと思います。

原作はフィリップ・ロスで、原題は「American Pastral(アメリカの田園風景)」です。

この映画の評判などは知りませんし、なぜユアン・マクレガーがこの題材で映画を撮ったのかも知りません。マクレガーはイギリス・スコットランド出身で、イギリスの俳優という印象が強いと思いますが、いまは国籍を移してアメリカ人になっています(アップル+で見られる「Long Way Up」でそう語っています)。アメリカの戦後史を、少し離れたイギリス的な冷めた目で見ている感じは、たしかにありますね。

個人的に注目は、私が好きだったサマンサ・マシスが出ていることです。年寄りの映画ファンなら、「ほら、あのリバー・フェニックスの彼女だった、サマンサ・マシスよー。こんなにおばちゃんになっちゃってー。でも元気そうでよかったわー」などと盛り上がれます。

5  「残穢 住んではいけない部屋」

竹内結子を偲んで・・・(最初に断ったように、このベスト5はあくまで2020年に私が見た映画で、今年公開された映画ではありません)

彼女の死が伝えられたとき、青春恋愛映画のヒロインのイメージで語る人が多いようなのは、私は意外でした。彼女は若く美人というだけでなく、「チーム・バチスタの栄光」とか、どちらかというと年寄りくさい、というか、落ち着いた演技力のある女優というイメージが私にはあったので。実際、年寄りのファンも多かった人だと思います。

だから、中年になっても、老年になっても、味のある、いい演技を見せてくれる人だと思っていました。本当に残念です。

「残穢」は特に私の好きな映画で、ホラーとはいえ、竹内の落ち着いた演技と語り口で、じっくり見せてくれます(エロもグロも恋愛もありません)。若者向けのホラーは多いですが、これは珍しい、年寄り向け(年寄りも安心して楽しめる)ホラー映画ですね。

70歳代の老優、不破万作(写真館主人役)と上田耕一(僧侶役)の好演も、老人にはうれしいところです。

竹内や遠藤賢一、佐々木蔵之介など含め、そういう芸達者に囲まれているために、橋本愛と坂口健太郎の未熟がどうしても目につくのがこの映画の欠点です。でも、老人は孫を見るような目で、それを許すことができます。君たちは若いんだから、大丈夫だよ、と。

「残穢」は、Amazon Prime Videoでも見られるようですね。彼女の「チーム・バチスタの栄光」もNetflixで見られます。

以上で終わりですが、

Netfilixで老人映画といえば「アイリッシュマン」だろうが!

という声が聞こえてきそうです。でも残念ながら、あの映画は去年見たんですよね。

老人が演じて老人が撮る。老人の歩みのようにノロノロ進むあの映画は、たしかに今年見ていたなら、老人映画ナンバー1だったでしょう。

老人映画ファンは、アル・パチーノの前に「ホッファ」役を演じたジャック・ニコルソンの演技も覚えています。老人同士なら、どっちがよかったかという比較談義ができるでしょう。

「アイリッシュマン」で描かれるのは裏社会ですが、一般の会社や組織にも汚れ役はいます。組織への忠誠心とか、出世と保身のための決断とか、会社に長年勤めた人しか、本当にはわからないテーマですから、その点でも退職した老人向けです。

(終わり)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?