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その42 小学校学習指導要領 「書写」も改訂されました

小学校学習指導要領の改訂内容として、英語やプログラミングについてはみなさんご存じの方が多いのですが、「書写」の改訂はご存じない方が多いようです。

実は、小学校学習指導要領の改訂に伴い、2020年より小学1、2 年生の書写の授業に「水書用筆(すいしょようひつ)を使用した運筆指導」が取り入れられました。

今までの「書写」の授業では、1、2年生は硬筆、フェルトペンを、3年生からはそれに加えて毛筆を使用していました。
しかし、今回の改訂により1、2年生は硬筆に加えて「水書用筆」が使用されることになりました。

え?「水書用筆」ってなに?どんな授業なの?
と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

「水書用筆(すいしょようひつ)を使用した運筆指導」について紹介していこうと思います。

【水書って何?】

繰り返し使う事ができる水書き専用用紙と水を入れた水書筆ペンや水をつけた水書用筆を使います。
水書き専用用紙に水書用筆で書くと、濡れた部分の色が変わります。
書いた文字は、水が乾くにつれて消えていくので、繰り返し練習することができるようになっています。

【学習指導要領の改訂箇所、水書用筆導入のねらい】

小学校学習指導要領 比較対照表より
「改定前」

(2) 書写に関する次の事項について指導する。
ア 姿勢や筆記具の持ち方を正しくし,文字の形に注意しながら,丁寧に書くこと。
イ 点画の長短や方向,接し方や交わり方などに注意して,筆順に従って文字を正しく書くこと。

「改訂後」

ウ 書写に関する次の事項を理解し使うこと。
(ア) 姿勢や筆記具の持ち方を正しくして書くこと。
(イ) 点画の書き方や文字の形に注意しながら,筆順に従って丁寧に書くこと。
(ウ) 点画相互の接し方や交わり方,長短や方向などに注意して,文字を正しく書くこと。


つまり、「点画の書き方や文字の形に注意しながら、筆順に従って丁寧に書くこと。」という一文が追加され、文字の形だけでなく、「点画の書き方」に注意しながら書くことが学習指導要領に明記されました。
「点画の書き方」とは、文字を構成する点と画の始筆から送筆、収筆(とめ、はね、はらい)までの筆記具の運び方のことです。

小学校学習指導要領解説では

「点画の書き方や文字の形に注意しながら」書くことの指導について,適切に運筆する能力の向上につながるよう,指導を工夫することを示している。水書用筆等を使用した運筆指導を取り入れるなど,早い段階から硬筆書写の能力を高めるための関連的な指導を工夫することが望ましい。

と明記されています。

つまり、今までは「文字の形」の指導が中心であったのに対し、文字を書く過程の「運筆指導」にも重点を置くよう改訂され、児童の運筆能力の向上につながるとして「水書用筆等」が取り上げられたということになります。

【「点画の書き方」を習うのになぜ水書用筆?】

「児童の運筆能力の向上につながるとして「水書用筆等」」が取り上げられた!と言われても、ピンとこないと思います。
例えば、「はね」と「はらい」など筆圧を変える運筆では、手指の動きの感覚を鉛筆で学習するのはとても難しいのに対して、水書用筆は、柔軟性と弾力性があるため手指の動きの感覚を得やすくなります。

以下の画像は、小学1年生の男の子が4月に硬筆で書いた文字です。

その42-2


「はね、はらい」の運筆がうまくいかず、「はね、はらい」がほぼ「とめ」になっています。このように、硬筆だけでは筆圧を変える運筆を感覚的に学ぶのが難しいということがわかります。
つまり、水書用筆で学習することで、筆圧の変化や点画を正しく理解し、運筆能力を得ることが導入のねらいとなります。
(運筆能力を高めるのが目的のため、毛筆の先取り学習ではありません.)

【水書用筆活用メリット】

○水書用筆は、柔軟性と弾力性があるため、筆圧を変える運筆で手指の動きの感覚を得やすくなる。「はね」「はらい」などの力を抜く感覚が得やすい。
○墨ではなく水を使うため、服や部屋を汚す心配がなく準備や後片付けが簡単である。
○何度も繰り返し練習ができるので、硬筆での正しい運筆が習慣化する。


「水書用筆」が活用され、子どもたちが、「点画の書き方や文字の形に注意しながら」正しく文字が書けるようになることを楽しみにしています。

また、新学習指導要領では、「知識及び技能」の目標において、「(3)我が国の言語文化に関する事項」としての位置づけで書写の指導が示されています。
「我が国の言語文化」の「知識及び技能」を身につけて、「我が国の言語文化」として正しい文字を国際社会で誇りをもって紹介できる子どもが増えるといいなと思っています。

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