見出し画像

照れてスカしてWedding

前回の記事にも書いたことだが、週末に親友(新郎)の結婚式に参加してきた。

億劫な気持ちを引き摺ったまま、式場に向かう。あまり早く到着しても手持ち無沙汰だろうから、ちょっとだけ遅く着くようにした。

会場内はたくさんの人がいた。多分、私が最後の招待客なのだろう。
億劫な気持ちになる理由の大部分、それは知らない人に囲まれることだ。
もちろん、馴染みの友人たちも出席しているから過度のストレスにはさらされることはないが、浮いた行動をすればすぐにでも吊るし上げられそうでビクビクする。

本当は誰も自分のことなど見ていないことは知っている。まして、主役のいる舞台だ。実に自意識過剰で困る。
現在進行形で自分の性格の難儀さを恨んでいるが、私自身が周りを細かく観察しまくっているのだから、周囲の人にも細かく見られていると考えてしまう。
本当に難儀な性格だ。

到着したらもうひとりの難儀な男が私を待っていた。この難儀な男も親友で、私と新郎と難儀マンは高校からの付き合いだ。(正確には新郎と私はもっと古い付き合いだが、本格的に親交を深めたのは高校1年の時)

難儀マンは難儀なので、ちょっとトラブルを起こした。そのおかげで私より心細そうな顔をしていた。

他人の不幸は蜜の味だ。その乏しくなっている表情筋は私の心を高揚させる。一気に楽しくなった。
自分より下のやつを見て安心する、というやつだ。

類友というやつで新郎も難儀だ。みんなからは、底抜けに優しくて頭が良くて面倒見のいいお父さんみたいな人、と認識されている。
まあ確かに正しいっちゃ正しいが正確な認識ではない。彼はとても頑固でだらしがなく、バカ正直なやつなのだ。だから、その優しさだけに目を向けるヤツらにとても腹が立つ。

ただでさえ少数精鋭の友達なのに、友達は難儀なヤツしかいない。
ま、難儀なやつらの難儀な部分を面白がっているのだから仕方ない。この上なく素敵なバカたちと思う。

というわけで、式は順調に進んでいった。ご両人はとても輝いていた。3年前くらいに彼らは入籍したのだが、残念なことに式は延期に延期を重ねていたので、生まれたての娘も参加していた。これはこれでとてもいいな、と思う。

友人代表スピーチもなければ、余興等も任されていなかったので式中は気楽なものだった。

飲まないとやってられんと思ってしまい、弱いくせにいっちょ前に飲酒をしたせいで、やや記憶がふわっとしている。
もしくは披露宴の席に柱があって、全く新郎の姿が見えず、下ばっかり向いていたからかもしれない。

式が進んでいくと結婚式恒例、新郎新婦と写真タイムが開催されていた。私はもう照れくさくて仕方がなかった。難儀マンの足取りも重い。
新郎はニコニコしていた。いつも笑みの絶えない男ではあるが、それはそれは笑顔だった。
笑顔を向けるんじゃないよ、照れくさいなあ。

最近、新郎の彼とは半年に1回のスパンで会っている。その都度伝えたいことは言っているつもりだ。ま、基本的にどうでもいいバカ話が多いけれど。

新郎の前に立つとつい照れてしまって「よ~う!」くらいしか言ってないような気がする。写真も撮ったが不自然な顔になっていた。素直じゃない。どうでもいいが難儀マンと並ぶと売れない漫才コンビに見える。
新婦に対しては「いやーおめでとうございます!」くらいは言えていたのだが、新郎とは会話らしい会話をしてない気がする。なんなら難儀マンの方が喋っていたのでは?

そんなこんなで式もいよいよ終盤に差し掛かったところ、司会がテーブルにマイクを渡し始めた。テーブルのひとりがマイクを持ち、新郎新婦に向かって話す。
おや、不味いぞ。これはこっちのテーブルにも来るな?そして恐らくそのマイクは私のところに来そうだ。そう、サプライズスピーチだ。

ほろ酔いのフワフワした頭は使いものにならない。何もワードもフレーズも出てこない。しかも生来からの緊張しいだ。
ついにマイクが私の手に渡った。視界がホワイトアウトする。それでも突き動かされるように立った。
酔いと緊張で頭が働かないから、脳から出た言葉をそのまま話した。とりあえず、アイツに伝わればいいや、という感じで。

が、残念ながらサプライズでのスピーチなんて満足いくような出来では喋れない。
脳から直接喋るというのは、素直な言葉を紡ぐ、ということを意味しない。ノンフィルターで性格通りの言葉が出てくるのだ。

「私の父と新郎のお父様は大学の同期でして、私と彼も物心つく前から交流がありました。まあ、物心ついた途端に交流はなくなるのですが‥
しかし、高校で偶然同じクラスになって、そういう古い付き合いの友達の晴れ着姿を見れてとても嬉しいです。本当におめでとうございます」

名乗りもせずに早口で喋った言葉がこれだ。そこまで悪くはないとは思うが、自分にしかわからない反省があるもので。
まず、気の利いた一言が言いたかった。言おうと考えたが照れてスカして言わなかった。もちろん、頭真っ白なので全くそんな一言出てこないし、終わったあとにいいフレーズを思いつくのは往々にしてある。それでも、スカした自分を許せない。

こっちが大事な方なのだが、スピーチ中、新郎のことを友達と言ってしまった。衆目の中(しかもほぼ全員新郎のことを親友と思ってる)で気安く親友と言うなんて、とスカしたのだ。
本当なら親友と言いたかったのに。
なぜそこでスカす?どうでもいい時にスカさないで、大事な今スカすのか!親友の顔見て親友と言わんかい!ボケナス!

披露宴が終わる。お見送りでも新郎とはあまり喋れず、新郎の両親や新婦と喋ってしまった。ここまできてもスカすのか。
私がちょっと落ち込んだって、とてもいい式だったのは間違いない。そもそも式と私の精神状態関係ないし。

それでも、友達に囲まれるアイツを見るのはとても嬉しかった。私は初めて、心の底から幸せそうなアイツをカッコいいと思った。

その夜は難儀マンとふたりきりの二次会に行った。白ワインを一杯だけ飲んだが、結局4時間は喋っていた。
夜風に当たりながら、ふたりで並んで、ゲラゲラ笑って歩いて帰った。
あーあ、もうひとりのバカも居てほしかったなぁ。



この記事が参加している募集

結婚式の思い出

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?