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「ぶどう山椒+X」 のすゝめ

ぶどう山椒農家さんの後継者はほぼいません。
年齢も平均80歳とめちゃくちゃ高齢です。
そもそも、ぶどう山椒の産地は山々に囲まれており、いわゆる条件不利地域ってやつです。
若者たちを外に出し切ってしまったころから域内経済の衰退がずっと続いて、選択できるほど潤沢な就職先はありません。

ですが、そんな山村でしごとをデザインできるってことを提案してるのが「ぶどう山椒+X」です。

和歌山県有田川町清水地域に根付く産業のぶどう山椒は、実のところ繁忙期は年間で約60日間で春・夏です。
それ以外の時期は時間的に余裕があるので、ほかの生業をくっつけることがで、山村でも豊かたにくらしていけます。


ぶどう山椒+X 実践モデル きとら農園 新田 清信さん


それを実証しているのが、きとら農園の新田 清信(しんだ きよのぶ)さんです。

新田さんはぶどう山椒の生産をしながら、農閑期に天然の桑の樹(化学肥料・農薬など一切使用せず自然のまま育った樹)から採取して、桑の葉茶づくりをして販売。収穫したぶどう山椒を加工して販売。そして、庭木を剪定する庭師のお仕事もされて、年間を通して収入を得ています。


新田さんはお子さま2人と奥さまとの4人家族で、ぶどう山椒農家唯一の子育て世帯です。曰く、時間融通が効くので家族との時間を確保しやすいんだとか。



新田さん以外にも、ぶどう山椒をしながら、陶芸作家をして、冬にみかん農家の収穫を手伝い(地元ではみかんバイトと言われている)をされている方もいらっしゃいます。まだ世に作品を出していませんが、写実の作家さんも…。


+Xの最有力候補「林業」


現時点で+Xの最適解と思っているのが林業です。
林業の繁忙期は秋・冬で、ぶどう山椒とは真逆になります。
そして、チェーンソーを用いて樹を倒す伐倒作業、草刈り、植栽などなど作業内容がぶどう山椒の農作業と通じる部分がかなり多いのが特徴です。

地元の林業会社である竹上木材株式会社の竹上社長も「過去にもぶどう山椒+林業を実践していた社員がいた」と言い、また、林業はかつて同地域の主力産業のひとつだったことから、周囲の理解も得やすく、仕事としても成り立つと話します。

林業はハードワークのイメージが強いですが、機械化・自動化が進んでいて、同社でも最先端技術を導入されていて、従業員には女性の方もご活躍されています。



山村のくらしをデザイン

+Xは人によってさまざまです。
自分の「得意」や「好き」に合ったものを探してもらえればと思います。

私個人としては、アーティストに来てもらいたいな、と思っています。
「山村でアート?」思われるかもしれませんが、人工物が少なく山々に囲まれた美しい自然は、国会議事堂の伊藤博文立像を創った彫刻家 建畠大夢という傑人を育てました。

引用:wikipedia

特に東京圏で活躍された大夢さんですが、遺言で「地元に墓を立ててほしい」と切望したようです。美しい自然、少年期に槍の刃で彫刻をした経験など大夢さんのアイデンティティが同地域にはあるのだと勝手に想像しています。

少し山に入ると、鳥の囀り、草木がさらさらと重なり合う音、川がゆっくり岩場を縫って流れる音などなど。
自然音に包まれ、人工物も視界に入りません。
現代人が失った第六感を取り戻せる場所だと思います。


まとめ

同地域はもともと百姓(百の生業を持つ人のこと)で生計を立てている地域でした。夏は農業に従事して、冬は高野山に木材加工や林業関係の仕事をしていたのだとか。

この記事で「ぶどう山椒+X」という山村で豊かにくらす方法を記載しましたが、誰でも成功できるわけではありませんし、万人に「ぜひ来てください!」とメッセージを送りたいとは1ミリも思っていません。

他力本願な人、人付き合いが苦手な人、拝金主義者はまず向いていないと思います。
また、メディアが流す地方移住情報から憧れている人もいるかもしれませんが、田舎ならではのどろどろした人間関係とか不本意と捉えてしまいそうな地域活動とか色々ありますので、覚悟しないといけません。
それに、いきなり住まいや畑を確保できるとも限りません。

マイナス面を重々理解したうえで、山村でのパラレルワークに興味があれば、ぜひ「ぶどう山椒+X」を調べてみてください。



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