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「がん」の世界をひらくということ ~CancerX Summit 2019に外の世界から参加して感じたこと~

私は昔から、熱くて想いを持ったリーダーの話を聞いたり、一緒に働くことがけっこうモチベーションの源だったりします。シリコンバレーにきてますますその傾向が強くなりました。仕事の能力や聡明さとは少し違う、社会で解決すべき課題を真っすぐに見つめ、命を燃やしながら一点に向かっていくリーダー。

そんなリーダーの一人として少し前から注目し、リスペクトしていたのが鈴木美穂さんです。元日テレキャスターとしても著名な方ですが、ご自身のがん罹患をきっかけに、がんと向き合い、がんをめぐる問題を見つけては社会を巻きこみながらそれを解決するための仕組みを打っていく。SNSでのコンテクストや文脈の発信をとても丁寧に続けておられます。

今回、そんな鈴木さんが手掛ける「CancerX Summit 2019」というイベントに参加してきました。2/4(今日!)のWorld Cancer Dayを前に、特にがんと遠い世界にいる人々を巻きこみながら、がんと向き合っていくというコンセプトを持ったイベントです。このnoteでは、会の模様を追ったつぶやきのまとめを中心に、「がん」を中心としたコミュニティの広がりについて考えてみたいと思います。

構想期間105日という突貫納期の中で第一線のスピーカーを集め、発信し、素晴らしいテーマで議論を進行した鈴木さんの着想と行動力、ならびに大成功のイベントに最大の敬意を表しつつ。

はじめに:外の世界から参加して感じたこと

私にとっては、学生時代に近い友人が罹患したことがあり、がんは身近に考えた経験はある問題ではあったのですが、それでも日常の自分とは遠いテーマでした。

ちょっとここからは言葉に気をつけつつ、今回参加して一番最初に感じたのは、がんコミュニティ・セクターの同質性と排他性です。外の世界とがんコミュニティがお互いを敬遠しあい、結果として互いが非常に遠い世界になっている印象を受けました。実際に隣に座った方ががん経験者の方で、着席してしょっぱな、「素人に分かった気になられても困るんですよね~」と牽制されてしまいました…!

外の世界からみたがん自分とは遠い病気。生活習慣病?体に気を付けていれば大丈夫?死を連想させる怖い病気。深い知識を持たないし、できれば関わりたくない世界
がんコミュニティから見たがん未経験者にずかずか入ってこられても困る。どうせ治療中、そして再適応の際のつらさは共感してもらえない。深い知識と経験が必要でありながら、未解明の要素が大きい病気であり、患者を受け入れる社会構造の問題。

そして、ここにまさに鈴木美穂さんのすごさ、そして今回のイベントの最大の意義があると感じるのですが、CancerXは「コレクティブインパクト」をうたい、外の世界を積極的に巻きこみつつ、がんを取り巻く課題を総体として社会課題に押し上げていく方針を持った初の試みだったのです。

がんはたんなる罹患と治療の話に閉じず、予防、罹患した際の告知や人間関係の変化、闘病中の緩和や死生観、職業の継続、復帰後の再就職やコミュニティの変化など、非常に長く、多く、かつ深く問題と付き合わなければいけない特性があります。人口の半分ががんにかかる時代、自分たちが将来の患者として、もしくは身近な人が罹患した際に正しく清いサポートができるか?私たち全員に関わる問題であり、私はこのイベントに参加して、自分の無関心・無知を深く恥じました。

このnoteを読んでいてそろそろ「自分ごとでない」感を感じている方もいるかもしれませんが、まさにその無関心・無知を私たち自身のリスクとして定義しようとした試みです。図星の方は、(同じ無知だった私が保証しますので)もう少しお付き合いください(笑)

中の世界から扉を開き、外の世界に「自分ごと」として問題を投げかけた鈴木美穂さん、ご主人で同じく社会活動家の濱松誠さん、そして運営メンバーの皆さんの功績は本当に大きいと思います。私自身が鈴木さんのSNSでの発信に感銘を受け、巻き込まれた張本人だったからです。タイムラインに流れてきた下記のポストに触発されて導かれたように参加しました…笑

最後に、今回は非常に網羅的なテーマをカバーするイベントでしたが、一点、ITテクノロジーに関する議論に少し欠けていたところがあると思います。途中、23andMeやゲノム医療、診療データのビッグデータ解析に関するテーマはあったものの、がんという問題へのテクノロジーリテラシーは向上していますし、次回以降の活動の中で広がってくるといいテーマと感じました。私も専門分野の一人として、かつ今回巻き込まれた当事者として、ここに貢献していきたいと心持ちを新たにしたのでした。

宣伝ではないのですが、参考までに同僚のブログを張っておきます(笑)

それでは当日の様子を、筆者のつぶやきのまとめを追う形でお話していきます。

1. CancerX 社会「 "Cancer, So What?" がんと言われても動揺しない社会へ 」

上野直人(MDアンダーソンがんセンター 乳腺腫瘍内科 教授)岡崎裕子(陶芸家)小泉進次郎(衆議院議員・自民党厚生労働部会長)澤田貴司(株式会社ファミリーマート 代表取締役社長) [モデレーター] 鈴木美穂(認定NPO法人マギーズ東京 共同代表理事)

2. CancerX 情報 ①「がん情報を正しく理解するために、これだけは絶対に知っておいて欲しいこと」

若尾文彦(国立がん研究センター がん対策情報センター センター長) 池野文昭(スタンフォード大学 バイオデザイン・メディカルディレクター)三嶋雄太(京都大学iPS細胞研究所 特別研究員)今村聡(日本医師会 副会長)野田哲生(UICC 日本委員会 委員長・公益財団法人がん研究会がん研究所所長[モデレーター] 市川衛(NHK科学・環境番組部 チーフ・ディレクター)

3. CancerX 情報 ②「がんの世界はどうかわる?未来へのビジョン」

溝田友里(国立がん研究センター 保健社会学研究部 健康増進科学研究室 室長)間野博行(国立がん研究センター がんゲノム情報管理センター センター長)西智弘(川崎市立井田病院かわさき総合ケアセンター腫瘍内科/緩和ケア内科)迫井正深(厚生労働省 大臣官房審議官)天野慎介(一般社団法人全国がん患者連合会 理事長)[モデレーター] 鈴江奈々(日本テレビ アナウンサー)

4. CancerX 若者「"AYA世代のがん経験者のホンネ" 若くしてがんになって思うこと」

岸田徹(NPO法人がんノート 代表理事)清水千佳子(国立国際医療研究センター病院 乳腺腫瘍内科科長)西口洋平(一般社団法人キャンサーペアレンツ 代表理事) 松井基浩(都立小児総合医療センター血液・腫瘍科/STAND UP!代表)水田悠子(オルビス株式会社 商品企画部)御船美絵(若年性乳がんサポートコミュニティPink Ring 代表)矢方美紀(タレント・元SKE48) [モデレーター] 濱松誠(ONE JAPAN 共同発起人・代表)

5. CancerX コミュニティ「がんになっても自分らしく暮らせるコミュニティとは?」

雄谷良成(社会福祉法人佛子園 理事長)佐渡島庸平(株式会社コルク 代表取締役社長)鈴木美穂(認定NPO法人マギーズ東京 共同代表理事)細田満和子(星槎大学 副学長/公益財団法人がん研究会 評議員) [モデレーター] 西智弘 (川崎市立井田病院かわさき総合ケアセンター腫瘍内科/緩和ケア内科)

6. CancerX 働く「がんになったら仕事はどうなるの?私たちにできること」

柿沼歩(NEC 健康管理センター医療主幹・労働衛生コンサルタント)垣見俊之(伊藤忠商事株式会社 人事・総務部長)桜井なおみ (キャンサーソリューションズ株式会社 代表取締役)髙谷誠一(株式会社ポーラ 取締役執行役員)武田雅子(カルビー株式会社 執行役員人事総務本部長) [モデレーター] 高野真(Forbes JAPAN 代表取締役CEO 兼 編集長)

さいごに:メディアでの報道

おことわり:本投稿はあくまで筆者の個人的見解に基づくものであり、筆者が所属する組織の一切の公式な見解を表すものではありません。

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