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【開催前情報まとめ】CES 2019の見どころ

年明けの恒例行事で世界最大のテクノロジー展示会、CESが近づいてきました。といっても私の参加は2回目なのですが。予習した内容をもとに、今年の見どころを考察したいと思います。完全に私見ですし、私の興味によった内容なのはご容赦ください。事後にレポートで答え合わせします!

CESとは?
世界最大のテクノロジー展示会で、2018年の参加者は20万人超と言われています。これまで家電メーカー中心に消費者向け新製品の発表会の要素が強いイベントでしたが、最近は自動運転、スマートホーム、ドローン/ロボティックスなど、最新テクノロジーの見本市の意味合いが濃くなってきました。このため、狭義の家電を想起させるConsumer Electronics Showという名称は認可されておらず、事前の広告等もCESという名称で統一されています。ちなみに昨年から主催団体の名称がCEA(Consumer Electronics Association)からCTA(Consumer Technology Association)に変わり、この流れが顕著です。

ちなみに、個人的に去年のCES 2018のハイライトは以下の3点でした。皆さんはどうだったでしょうか?

1. 自動車サプライヤーとOEMの主従関係の逆転
例えば自動車業界。トヨタe-paletteに代表される、メーカーの自前主義の終焉。サプライヤーがブースのベスポジに位置し、プラットフォームフリーで自動運転のケーパビリティーを誇示する、あたかも彼らが付き合うOEMを選別する位置に立っているかのような展示。OEMが仕様を決めてサプライヤーが追従するという従前の主従関係の逆転に見えました。

2. 中台韓家電メーカーのシナリオセリング
多くの中台韓の家電メーカーは「100点を狙わない」代わりに「全部そろえる」ことを重視した展示でした。アフォーダブルに、全部自分のメーカーでそろえて楽しく新しく豊かな生活を実現しよう、というメッセージ性がリアルに感じられ、訴求力抜群でした。日系メーカーの多くは未だに技術セリング。消費者の技術リテラシーも上がり、「ほらうちの新技術すごいでしょ」では心が動きにくいことを再確認しました。

3. Hey Google
ラスベガス中がGoogle Assistantの宣伝文句「Hey Google」の広告一色でしたね。CES 2017はAlexaイヤーだったようですが、去年はあらゆる家電メーカーがGoogle Assistant対応をアピール。SonyやHaierはブースにわざわざGoogle専任の説明員を配備するほどの力の入れようでした。

本題:CES 2019の見どころ

1. 自動車OEMとサプライヤーの目線の分岐!MaaS前提のエコシステム競争と独自技術の探求
2. 家電各社各様!スマートホーム時代の「ヒトに寄り添うAI」の解釈
3. テレコム各社ほぼ事前情報なし!迫りくる5G時代の実現性とは?
4. J-Startup登場!Eureka Parkで存在感高まるか、日本のスタートアップシーン

1. 自動車OEMとサプライヤーの目線の分岐!MaaS前提のエコシステム競争と独自技術の探求

この1年でMaaS (Mobility as a Service) の実証レベルの取り組みが方々から聞こえてくるようになりました。MaaSについては自動車ジャーナリストの川端由美さんの下記の記事が参考になりますのでどうぞ。

CESでも多くの自動車企業から、クルマを作って売る従来のビジネスモデルから脱皮して、自動運転時代のクルマの儲け方、ひいてはクルマが存在する社会エコシステム全体での自社の役割を定義するような展示方針が多く出ています。面白いのは、昨年の「主従逆転」の文脈にもあったように、OEMメーカーとサプライヤーの展示方針が分岐するトレンドが伺えることです。

OEMメーカーの多くは、昨年の自動運転のコンセプト展示から一歩進み、実証性の高い次世代技術展示をもとに、実証実験や本格展開に向けたパートナー探しの場としてCESを使う方針です。自治体と組みたい、という各社の意図も伺えますが、これは技術の実証ではなく、ユーザビリティや環境性への適用度の実証といった、より事業化に近いレベルのテストを求めていることが想定されます。

ホンダはロボティクス、モビリティー、エネルギーの各領域で開発中の技術を展示し、具体的な事業化パートナーを探す方針を公表しています。

ヤマハ発動機は昨年から低速移動の「パブリック・パーソナル・モビリティ」(PPM)の展示方針を引継ぎ、国内シェア8割(!)のゴルフカートをベースとした自動運転車両を展示。こちらも企業や自治体などの事業パートナーを募るとのこと。昨年の二輪車よりも、より移動経路や路線が決まりやすい車両展示を軸とした背景には、MaaS時代のモビリティ事業者でありたい意図が透けているように感じます。

トヨタは2014年からシリコンバレーのAI研究所で開発していた自動運転車「TRI-P4」の展示に踏み切るようです。コンセプトモデルとは異なり、2019年春の市場投入を前提とした、極めて実証性の高い車両とのこと。2020年代前半にはレベル4の自動運転車を量産すると言っていますから、OEMの雄として、自動運転車の市場へのお披露目を急ぐ格好だと思います。

メルセデス・ベンツは新型CLAのお披露目にCESを選択。トヨタほどではありませんが、自動運転モリモリの機能押しです。

さて他方、特にサプライヤーを中心としたトレンドが、自動運転時代に必要とされる車載、社内体験などのピースの、中長期のコンセプトモデルの展示です。昨年はMaaSや自動運転そのもののコンセプトが多かったのに比べ、よりMaaS時代の到来を前提としたサイロで縦割りな領域競争が起きるのでしょうか。

日産は他のOEMメーカーと異なり、「見えないものが見える」コンセプトを提唱してきました。昨年も脳波判定の技術展示がメインでしたので、面白い新規事業系のチームが展示企画をリードしているんだろうなーという印象です。個人的にはデジタル・ツインという表現がOEMメーカーのニュースリリースに登場するようになったことに胸アツです。

アウディはドライブインシアターという、新しいのか古いのかよくわからないコンセプトを打ち出してきました。確かに自動運転時代の社内空間と時間の使い方(インフォテインメント)はホットなトピックですし、密閉された360度スクリーン空間の活用として、将来実現したらいいですよね。

ボッシュはヤマハと似ていますが、EVシャトルバスの展示です。事前公表の写真を見る限りでは、コンセプトモデル止まりかな?という印象です。サプライヤーがMaaS時代のインフラ車両を作るという観点ではアイコニックでしょうか。

キア・モーターはMITと共同開発した、人間の感情を読み取るAIプラットフォームの展示を公表しています。発表内容を見る限り、ソフトウェアに差別化要素を持って行ったような印象です。AI国家のOEMメーカーらしい取り組みです。

自動運転の実現を前提とした「官民ITS構想」では、2030年までに「世界一安全で円滑な道路交通社会を構築する」と昨年6月に取りまとめました。個人的にはかつての日本のお家芸産業である自動車産業の新しい動きの中で、日本車メーカー、サプライヤーが果たす役割の高まりに期待をしたいと思います。

出典:https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/pdf/20180615/siryou9.pdf

2. 家電各社各様!スマートホーム時代の「ヒトに寄り添うAI」の解釈

家電メーカーの展示はAI一色です。特徴的なのは、各社各様の「AI」の捉え方があり、かつそれを消費者に明示的に、セールスポイントとして主張しようとしているところです。スマートホームの実現において、それだけハードウェアとしての家電、住宅設備はコモディティ化しており、各社がソフトウェア開発で差別化戦略に走らざるを得ない事情が伺えます。

サムスンはAmazonやGoogleに対抗した「Galaxy Home」を発表するのではないか?との予想。これまでのサムスンのスマートホーム戦略は、住設を選ばないポータビリティを売りにしていましたから、これが事実とすれば大きな方向転換です。合わせて市場の97%のシェアを持つスマートスピーカーの二強に立ち向かうわけですから、ソフトウェアの優位性によほど自信があるということだと思います。

LGはキーノートのプレス向けブリーフィングノートを公開しており、LG流のAIの解釈をパク社長自ら発表します、とのことです。詳しい内容は分かりませんが、家電メーカーの枠を超えて、AI企業のイメージをつけたい意向に見えます。

日本企業ではパナソニックに期待しています。昨年のCESでコンセプト発表を行った「Home X」の具体的な展示が予想されているからです。昨年、創業100周年を迎えたパナソニックは、その記念イベントで「くらしのスタンダード」という新たなビジョンを公表しました。事業部横串のイノベーションを志向するビジネスイノベーション本部の馬場本部長が、Home Xの位置づけや意義について明確に語っていますので、ご興味あれば下記の動画を見てください。こちらでも明確にソフトウェア・プラットフォームでの差別化がうたわれています。

3. テレコム各社ほぼ事前情報なし!迫りくる5G時代の実現性とは?

テレコム各社からはほぼ発表内容を伺い知ることはできませんでしたが、一層熱を帯びた展示が予想されています。これは、いよいよ次世代通信規格の5Gの公共レベルでの実現が近づいてきたからです。アメリカ企業を中心に、2019年が「5G元年」と位置づけられています。楽天を除く日本のテレコム各社も、2019年中に5Gの商用サービスを公開する予定です。

通常、テレコム各社の新デバイスの発表などは2月にバルセロナで開催されるMobile World Congressの場が選ばれることが多いのですが、5Gに関してはハードウェアだけの取り組みとは言えませんし、より年初に近くインパクトの期待できるCESで何らかのサービスや施策の発表が集中するのではないか、という予想が多く聞こえてきます。

火曜日のVerizon、水曜日のAT&Tの両CEOのキーノートに注目です。特に5Gの適用ユースケースを各社がどのように打ち出してくるかに興味を持ちたいと思います。2020年の東京オリンピックにもつながる大きな期待ですね。

4. J-Startup登場!Eureka Parkで存在感高まるか、日本のスタートアップシーン

CESは世界最大の家電見本市という性質だけでなく、最大のスタートアップシーンの展示会という側面も持っています。フランス政府が毎年多額のスポンサー費用を拠出しているEureka Parkを中心に、900社以上の世界中から集まったスタートアップが、来場者とのビジネス機会を狙ってしのぎを削ります。

昨年270社以上のスタートアップの展示があったフランスが、今年も最大勢力になることが予想されています。

ここで私が注目しているのが、今回初参戦となる「J-Startup」各社を中心とした、日本のスタートアップシーンの盛り上がりです。J-Startupは経産省 世耕大臣肝入り、官民連携のスタートアップ支援プログラムで、昨年92社のスタートアップが採択されました。今回、JETROの仕切りで、パビリオンの設置、22社が展示を行います。

日本は長らくスタートアップ後進国と言われてきました。この辺りは、私の下記の別エントリも参考にしていただけると嬉しいのですが、言語の問題に加え、受け側の大企業の成熟度など、複数の要因があります。私は、VUCAと呼ばれる近年の産業の変化の激化、これにともなう「イイものを作れば売れる」神話の崩壊は、日本のスタートアップ文化の隆盛の大きなチャンスでもあると考えます。日本代表の看板を背負って世界の部隊に挑む22社が、本質的な事業創造の機会を掴むこと、ひいてはここで得た経験を中長期的に日本市場に還元してくれることに期待し、応援したいと思います。

メディアの視点

主要メディアはCESの注目ポイントをどう捉えているでしょうか?それぞれ細かい解説は省きますが、Tech CrunchとDigital Trendsの予想を下記に載せておきます。

Tech Crunchの視点
1. 実現目前の5Gのリアルな産業応用例
2. AR領域のデバイスの充実
3. MaaS視点での旧来メーカーの提案姿勢
4. 全社全容なスマートホーム領域の隆盛
5. 5Gの可能性を活かす新デバイス
Digital Trendsの視点
1. 生活に浸透するリアルAIの適用例
2. 5G時代の到来
3. 自動運転時代の到来
4. 「女性のためのテック」コンセプト披露
5. 折り畳み式スクリーンと8Kテレビの技術披露

おわりに:注目セッション

豪華なスピーカーによるセッションもCESの楽しみです。下記、私が注目しているセッションです。特に1/9には多数重複があるのですが、何とかここで語られる内容はキャッチアップしたいと思います。どうぞ事後レポートもお楽しみに!

1/7 MON
6:30pm "Keynote with LG" @MGM

1/8 TUE
8:30am "Keynote with IBM" @Venetian
3:00pm "Technology's Innovators and Disruptors" @LVCC
4:00pm "Keynote with Verizon" @Venetian

1/9 WED
9:00am "Keynote with AMD" @Venetian
11:00am "The New Mobility Revolution" @LVCC
11:15am "P&G Session" @ARIA
1:30pm "Top Trends Shaping Global Innovation" @LVCC
1:30pm "NBA Twitter Session with Jack Dorsey" @ARIA
2:00pm "Keynote by AT&T" @MGM
2:15pm "John Deere Session" @LVCC
3:00pm "eSports: Powered by Technology" @LVCC

おことわり:本投稿はあくまで筆者の個人的見解に基づくものであり、筆者が所属する組織の一切の公式な見解を表すものではありません。

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