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配慮と遠慮のあるアドバイスは素敵



相手のためになるアドバイス、できていますか?



よいアドバイスには、「配慮」「遠慮」が必要です。

アドバイスのカギとなる「配慮」と「遠慮」をおぼえれば、あなたはもっとアドバイスがじょうずになります。

わたしが大学で心理学を勉強し、対人支援のお仕事をし、自分自身も支援をうけるなかでまなんだアドバイスのコツをおつたえします。



  • ひとにアドバイスをするのがすき

  • 自分はアドバイスが得意だ

  • 日ごろアドバイスを工夫している

というかたは、これを読めばアドバイスのやりかたの手数を増やし、さらにアドバイスの腕を磨くことができます。

もちろん、アドバイスに自信がないかたにも役だつ内容となっています。


  • 部下、後輩、教え子、クライエントがいて、日ごろアドバイスをする機会があるかた

にもぜひ読んでいただきたいです。


  • ひとからいやなアドバイスを言われてもやもやするかた

は、ここに書いてあるアドバイスのわるい例を読んで、当てはまるアドバイスをうけとり拒否しましょう。






配慮―相手によりそうやさしさ



配慮とは、相手によりそう努力や工夫などのやさしさのことです。

配慮ができれば、相手の役にたち、相手が喜んでくれます。

これから、アドバイスをするときに配慮したほうがよい4つのことについて説明します。




①相手がいやなきもちになっていないか


思いだしてみてください。


アドバイスするとき、相手のやりたいことを否定していませんか?

相手の大切にしているものを傷つけてはいないでしょうか?

否定的なニュアンスを抑えて、より中立的な言いかたができていますか?

「なんでこうしないの?」と直接的・間接的に相手を責めるような言いかたになっていませんか?


あなたが悪意なくアドバイスしたつもりでも、相手がいやなきもちになったら、相手はこころを閉ざし、アドバイスをうけつけなくなります。

相手があなたのことを「このひとは自分を傷つける」と認識するからです。

ひとは精神的ショックをうけるとそちらに意識がひっぱられて、相手の言い分があたまに入らなくなります。

いちどたちどまって、相手がいやなきもちになる表現をしていないかかんがえられるとよいですね。


また、ときには耳の痛いことを言う必要がある場合もあるかもしれません。

その場合でも、なるべく語気に怒りや正義感をこめず中立的な言いかたができるとよいです。

相手の事情を想像してみてください。
相手にはやってはいけないことがわからなかったのかもしれません。
悪気なくうっかり失敗してしまったのかもしれません。
余裕がなかったのかもしれません。
価値観や認識のちがいがあるのかもしれません。


「気をわるくしたらごめんなさい」
「あなたを否定したいわけじゃないんだけど」
「がんばってくれているのはわかるんだけど」
「悪気はなかったと思うんだけど」

など前置きをしてからつたえられると、相手をなるべく傷つけずにつたえられ、相手も聞く耳をもちやすいです。


また、「これはダメ」と相手の問題点を指摘するよりも、

「こうしてもらえると助かる」
「わたしはこうするほうがいいと思う」
「こうすれば相手も喜ぶ」
「こうすると素敵だと思う」

というポジティブな言いかたに変えると、相手にやわらかくつたえることができます。



②言いたいことがつたわっているか


相手の顔を思い浮かべてください。


あなたの言いかたは、誤解をあたえる表現になっていませんか?

言いたいこととちがう意図が相手に読みとられてはいないでしょうか?

説明は具体的ですか?

遠回しな言いかたや、説明が必要な部分を省いた言いかたになっていませんか?

相手ははなしの前提を理解できていますか?

相手のもののとらえかたや知的能力にあわせた言いかたができていますか?


わたしたちがコミュニケーションをとるとき、まずつたえるがわが自分の思考をことばにします。

表現されたことばを、うけとるがわが解釈します。

①あなたの思考がことばになったとき

②ことばを相手が解釈したとき

の2回、あなたのもとの思考がちがうものにおきかわったのがおわかりいただけるでしょうか。


コミュニケーションのやりとり


相手にものをつたえるときは、相手のもののとらえかたや理解度にあわせて表現を工夫する必要があります。

でないと、あなたの言いたいことが相手につたわりません。

うまくつたわっているか、「ここまではわかる?」とはなしの段階ごとに相手に質問をして確認するのもよいでしょう。



③相手の利益になるか


あなたのアドバイスは、相手の欲求を満たしたり、相手の悩みを解決したりするものになっていますか?


この質問に答えるためには、まず相手の欲求や悩みがなにかを正確に理解する必要があります。

そこをとばして

「自分はこれを言ってあげたら相手のためになると思うから」

というきもちでアドバイスをすると、余計なおせっかいだとうけとられるかもしれません。


たとえば、自分が欲しかった時計をもらったら喜んでうけとりますよね。

しかし、自分がまったく興味のないプラモデルをもらったらどうでしょうか。
いらないなあと手放しますよね。

プレゼントをあげるとき、相手がなにをもらったら喜ぶかかんがえたり聞いたりしますよね。

アドバイスもそれとおなじです。
相手の欲求や悩みにあうものを差しだしているか、相手のはなしをよく聞いてかんがえる必要があります。



④相手が希望をもてるか


アドバイスをもらうひとは、アドバイスによってどんな状態になりたいでしょうか。

明るいきもちになったり、未来にたいする前向きな見通しを手にいれたりしたいはずです。

アドバイスによって暗いきもちになったり、未来に絶望したりしたくないはずです。


あなたのアドバイスは、相手を勇気づけているでしょうか。

相手をどん底につき落としていないでしょうか。

相手のモチベーションを削いでいませんか?


ときには、相手の望みが叶わないことをつたえなければならないときもあるかもしれません。

その場合でも、相手が希望をもてるように工夫するのが相手への配慮です。


なにかを否定するときは、「それはダメ」と言うよりも、

「たしかにそういうかんがえかたもできるけど、こういうかんがえかたもできるんじゃないかな」

と言ったほうが相手も希望をもって聞きいれられます。

否定で終わらず代わりの案をだすのも重要です。

可能性を閉じるアドバイス(例:それは無理、あなたにはできない)よりも、
可能性を開くアドバイス(例:こういう方法もある、こっちも検討してみては)をしたほうが、相手は希望をうしなわずにすみます。

自分ができるかぎりサポートすることをつたえるのも、相手が希望をたもつのに役だちます。

相手を絶望させるのであれば、他人事にして相手にひとりで絶望させるのではなく、相手に共感し相手とともに絶望をわかちあうのがよいでしょう。



こんなことがありました。

精神科の診察での出来事です。

うつがなかなかよくならなかったわたしは、当時の主治医に聞きました。

「わたしは、がんばれるようになりますか」

主治医は答えました。

「わからない。けどいまは難しいと思うよ」

わたしは怒りました。主治医の発言が、わたしを絶望させ、回復のために努力する意欲をうしなわせるものだったからです。


振り返ってみて、おなじ内容をつたえるのでも、わたしはこう言ってほしかった。

「よくなるかもしれないし、よくならないかもしれない。なるべくよくなるように、ふたりでがんばりましょう。でもいまのあなたに必要なのは休養だから、休むことに専念してね」

おなじことを言っているのに、まったくニュアンスがちがうのがおわかりいただけますでしょうか。

なぜこんなにちがいがでるのかというと、後者は相手が希望をもてるように配慮してことばを選んでいるからです。




以上、アドバイスに必要な4つの配慮についておつたえしました。


「相手の靴を履く」ということばがあります。

相手の立場にたたないと、よいアドバイスはできません。


 はなしをよく聴いて、
 質問して、
 想像して、
 相手を理解し、
 相手のきもちを確認して、
 共感する。

ここまでできてはじめて、配慮あるよいアドバイスができます。



遠慮―相手を傷つけないようにする慎ましさ



遠慮とは、相手を傷つける行動を控える慎ましさのことです。

遠慮ができれば、いたずらに相手を傷つけることを避けられます。

これから、アドバイスのさいに必要な9つの遠慮について説明します。




①相手に聞かれたことだけ答える


親切なひとは、相手の役にたつことをなんでも教えてあげようとするかもしれません。

しかし、アドバイスを求められたさいは、相手に聞かれたことだけ答えるのが無難です。

よかれと思って聞かれていないことを言うと、
「相手の求めていないプレゼントをあげる」、
つまり相手の利益にならない助言をする行為になりかねないからです。

求めていない余計なことを言われ、地雷を踏まれ、自分にあわないかんがえかたを押しつけられて怒るひともいます。



②恐縮して謙虚につたえる


「こうしたほうがいい」

大事なことは言いきる。
こうすれば、相手に言いたいことがつたわるのではないか。そう思いますよね。


あなたが専門家なら言いきってもいいんです。

しかしそうでない場合、相手から反感をかうかもしれません。


ひとには多様な価値観があります。おかれた状況もひとによってちがいます。

そんななかで自分の意見を言いきると、相手から

「こちらの事情を知りもしないで、自分が絶対ただしいみたいにえらそうに意見しないで」

と思われるかもしれません。


相手のことに踏みこむときは土足でたちいらず、靴を脱ぐ。

相手の価値観に敬意をはらうのがたいせつです。

そのために、恐縮して謙虚につたえてみるといいかもしれません。

「大変おこがましいかもしれませんが」
「いやな思いをしたらごめんなさい」
「出すぎたことを言っていたらごめんなさい」
「えらそうなことを言っていたらごめんなさい」

これらの前置きをつかうと、相手もあなたのこころづかいを汲んでくれます。



③肩書きをもちださない


「社会人として、これはこうしたほうがいい」
「人生の先輩としてアドバイスすると、これはこうだよ」

「社会人として」「おとなとして」「人生の先輩として」「プロとして」「仕事として」「親として」

さまざまな役割に必要な責任ある行動について、相手に教えてあげたくなりますよね。

また、経験のあるあなただからこそ教えられることをつたえたいと思うかもしれません。


しかし、肩書きをもちだすのはおすすめしません。
それにはふたつの理由があります。


Ⅰ. 「○○はこうあるべき」というかんがえかたを押しつけ、そうでない生の相手のありかたを否定している


「○○としてこうしたほうがいい」と言うとき、暗に「そうでないと○○としてダメ」というメッセージをつたえてしまっています。

「社会人失格」「プロ失格」「親失格」「おとなとして未熟」

相手はこんなふうに言われているように感じるかもしれません。

自分がせいいっぱいやって悩んでいるときに、こんなふうに言われたら相手は否定されたと感じます。


「傷つこうがなんだろうがそうするべきものはそうするべきなんだから、それをつたえるべき」

というかんがえをおもちのかたもいるかもしれません。

しかしよくかんがえてみてください。

否定的なニュアンスを含んだこのつたえかたは、相手の悩みを解決していますか?

相手の立場にたってかんがえたときに、相手は納得して行動を変えるでしょうか?

相手がうけとり拒否したい助言になっていませんか?

ただ相手を追いつめるだけで終わっていませんか?


Ⅱ. 肩書きをもつ自分の意見がただしいと上から目線でつたえており、相手の意見を下に見ている


肩書きをもちだして自分の意見をつたえるとき、暗に「肩書きをもつ自分の意見がただしい」というメッセージをつたえています。

これは相手の意見を「自分の意見より劣っている」と軽くあつかう姿勢になっています。

自分の意見を軽んじる相手のはなしを聞きたいと思うでしょうか?

上から目線でものを言われると、反発するきもちが生まれます。


たとえば、「人生の先輩として」ということばがありましたが、年上のひとの意見はかならずしも年下のひとの意見よりすぐれているでしょうか?

そうではない場面もたくさんありますよね。

また、専門家がまちがいを言うこともあるし、素人がただしいことを言うこともあります。

どちらの言い分がただしいかは内容を吟味しないとわかりません。


「人生の先輩として」ということばをつかわなくても、「自分の経験からすると」ということばをつかえば、相手を見下すニュアンスもなくなり対等なつたえかたができます。

肩書きがなくても、言った内容に説得力があれば相手も耳を傾けますよね。


肩書きをつかわずに、「わたしはこう思う」と主語を「わたし」にしたほうが、相手と自分のあいだにおたがいを守る境界線を作り、相手の意見を対等に尊重できます。



④アドバイスを拒否する余地をあたえる


「こうしたほうがいい」
「こうしないとまずい」

相手にそう教えてあげなきゃと思って、自然とこういった表現をつかっていませんか?


価値観やおかれた状況はひとそれぞれです。

やりたいこと、やりたくないこと、できること、できないことはひとによってちがいます。

「こうしたほうがいい」と言いきると、相手は意見を押しつけられたと感じます。


「こうするのもひとつの手です」
「あくまで提案のひとつです」
「わたしの一個人のかんがえなので、ちがうと思ったらスルーしてください」
「あなたにはあてはまらないかもしれませんが」

このように、相手に取捨選択の余地をあたえることばをそえることで、相手の意思を尊重できます。

そうすれば、相手はあなたにたいして謙虚で柔らかい印象をうけます。



⑤攻撃的につたわる表現をつかわない


「べき」「しなければならない」「のほうがいい」

アドバイスするとき、ついこのことばをつかっていませんか?


わたしもじつはそうでした。
しかし、この表現は命令に映り、相手に攻撃的な印象をあたえます。


「わたしはそのほうがよいと思う」

といったように、主語を「わたし」にして、うしろに「と思う」とつければよりマイルドな印象になります。


「〜してみるのもよい」
「~するのもひとつの方法である」

のように、「わたしは選択肢のひとつを提案します」というポーズでつたえる方法もあります。



⑥一般論、正論、精神論を言わない


「親はたいせつにするもの」
「自殺はまわりのひとに迷惑をかける」
「みんないやでも学校に行ってるんだから行きなさい」
「気に病んでも得しないんだから忘れたら?」

「一般的にこう」というはなし、「これがただしい」という正論、「問題を我慢や根性や気のもちかたで解決する」精神論を相手につたえてはいませんか?


相手がこまっているとき、一般論や正論、精神論どおりにうまくできないからこまっています。

そんな相手に一般論、正論、精神論をつたえても、ただ相手を追いつめるだけです。

「こうするべき」をつたえるのではなく、相手のきもちに共感してあげてください。

そのほうが、余計なアドバイスをするよりも相手の役にたちます。


「いま相手にとっての問題はなにで、どうすればうまくいくのか」
という具体的な個別の解決策をともにかんがえる姿勢を見せるといいかもしれません。


あいまいな主語やおおきい主語(例:みんな、おとこ、おとな)など、具体的な顔が見えない主語は避けたほうが無難です。

そういうはなしは一般論、正論、精神論になりがちだからです。

主語は「わたし」か「あなた」か特定の人物・集団にしましょう。



⑦疑問形で相手に問いかけない


「なんでだと思う?」

相手に答えをあたえるのではなく、相手にかんがえさせるのが重要。

相手の成長をかんがえられるかたは、相手に質問を投げかけるかもしれません。


しかしこの問いかけは危険です。

子どもに勉強を教えるときや、ルールの意味についてかんがえさせるときなどは、問いかけは有効なんです。

しかしそうではない場合、問いかけがよくない方向にはたらくことがあります。


質問を問いかけられたがわは、問いかけに答えられないと自信をなくし不安になります。


主張ではなく質問で問いかけられると、

「結局あなたの言いたいことはなんなの」

と、相手は答えを隠されたと感じてイライラします。


問いかけられたとき、ある答えを暗示しているように感じることもあります。

たとえば、

「あのひととあなたの仕事のやりかたのちがいはなんだと思う?」

と聞かれたら、

「わたしの努力が足りないって言いたいんでしょ!」

と感じるひとがいます。


問いかけの内容によっては、相手のあらをつついたとうけとられる場合もあります。

たとえば、

「Aと言っていますが、それではなぜBするのですか?」

と問いかけると、

「おれの行動がおかしいって言いたいのか!」

とうけとるひとがいます。


原則は疑問形で問いかけず、

「わたしは~と思います」

と自分のかんがえを明かすのにとどめたほうがよいです。

疑問形をつかうのであれば、

「わたしは~と思うけど、あなたはどう思う?」

というつたえかたにするとよいでしょう。

もし相手にかんがえさせるために質問を投げかけるのであれば、相手にかんがえさせたあとにかならず自分の思う答えを相手につたえるのが相手への配慮です。



⑧呪いをかけない


「AかBしかない」
「〜しないと〜になる」

ハッキリと物事をつたえたいとき、こういう言いかたをしていませんか?


こういう言いかたはしないほうがいいです。

理由はふたつあります。


ひとつは、相手の選択肢やかんがえかたを狭めるからです。

あなたの視点では「AかBしかない」「~しないと~になる」かもしれませんが、ほんとうのところはどうかわかりません。

Cがあるかもしれないし、~しなくてもおそれていた出来事が起こらないかもしれません。

あなたが提示しているのは、あなたから見た見解でしかありません。

悩んでいるときに可能性を狭めることを言われると、相手は追いこまれているように感じます。


もうひとつは、相手におそれを植えつけるからです。

誰もおそれをかかえていたくはないはずです。


ときにはおそれを感じさせて相手に行動させようとするときもあるかもしれません。

しかし、ひとはおそれで行動させようとするひとを避けたくなります。

あなたのことを「こわい思いをさせてくるひと」と認識するからです。


「AかBしかない」「~しないと~になる」というものの言いかたを、わたしは「呪い」と呼んでいます。こうした表現は相手の可能性を縛るからです。

呪いをつかわなくても、自分の意見をつたえられます。

「AかBしかない」は「わたしがかんがえるなかではAかBがいいと思う」と言いかえられます。

「~しないと~になる」は「こうなるんじゃないかと心配している」に言いかえられます。



⑨命令しない


「○○してください」

下の立場のひとにそう指示することがあるでしょう。

命令は言われるがわからするとあたりがつよく感じられます。

こうした言動は相手の不満のたねになりかねません。


以前、こんなX(旧Twitter)の投稿を見かけました。

警備員をされていたかたが、ルール違反をするひとにたいして、注意をするのではなく腰をひくくしてお願いするようにしていたそうです。

スケボーで遊ぶ若者集団に対して、第一声に「恐縮ですが、失礼いたします!」「こんにちは!」とあいさつをしました。

そして、「お楽しみ中のところ申し訳ございませんが、ここは遊具の利用はご遠慮いただいております。どうぞ、ご協力いただけないでしょうか!」と言って頭をさげました。

若者が移動しはじめたらすかさず「ご協力感謝いたします!」と言いました。


もとの投稿はこちら↓


相手に命令や注意をするのではなく、このくらい腰をひくくして協力をお願いすれば、相手も気分を害さずに言うことを聞くでしょう。

「~してくれるとありがたい」

「~してくれると助かる」

といった表現がつかえるとよいですね。

「~してくれませんか?」と疑問形でお願いするだけでも、柔らかい印象をあたえます。


もしお願いを断られたとしても、無理やりお願いを聞かせようとするのではなく、

  • 相手がなぜお願いを聞くことができないのか

  • なにを解決すればお願いを聞いてくれるのか

をよく聞いてかんがえてみるといいかもしれません。



つよく言って相手に教えてあげる必要はない



「相手がまちがった方向に進んでいるから、つよく言って教えてあげなきゃ」

責任感と思いやりのつよいあなたは、そんなふうに思うかもしれません。


しかし、つよい口調でアドバイスをされると、相手から

「自分のかんがえを尊重してくれない」
「見下されている」
「説教されている」
「批判されている」
「否定されている」
「馬鹿にされている」

とうけとられます。

相手はそういったあつかいを求めていません。


おそらく、あなたの中には

「つよく言えば相手は『自分はまずいことをしてるんだな』と気づく」

というイメージがあるのだと思います。

しかし、相手にそれができるのは

「つらいきもちや反感で乱れたこころをととのえて相手の主張をうけとり、謙虚ですなおになれたとき」

だけです。

ひとは不安を感じさせる相手のはなしをすなおに聞こうと思えません。

相手が負の感情を処理しなくてもすなおにはなしが聞けるよう、こちらが言いかたを工夫する必要があります。


もしかするとあなたには

「つよく言ったら相手が言うことを聞いてくれた」

という経験があるかもしれません。

しかし、相手が恐怖でフリーズし、恐怖にしたがって行動した場合があります。

相手にこわい思いをさせ、つよいストレスをあたえている場合はいますぐやめましょう。


有名人の影響で、

「相談者を"斬って"痛快なことを言えば賞賛される」

という風潮があります。

あれは有名人が、相談者のきもちは二の次で、観衆に「よく言った!」「そのとおり!」とスカッとさせるためにやっています。

一般人があれをやると相手に恥をかかせるだけです。


たまに有名人がびしっと言って相手に響くことがありますが、あれは

「なにを言えば相手にダイレクトに効果的に響くか」

がわかるひとの玄人芸です。

素人がやるとただの「わからせてやったマウント」になります。


こころを鬼にして嫌われ役をひきうけ、きびしいことを言う。

そういうひとってかっこよく見えませんか。あこがれますよね。

でも、気をつけなければなりません。
わたしたちはこういうありかたに酔いやすいんです。

「自分は嫌われ役だから」
「きびしいことを言う役回りだから」

そう思う自分に酔って、相手へのこころづかいを怠っていませんか?

どうしてもきびしくつたえなければならないときもあるかもしれませんが、そうでないならやさしくつたえられるにこしたことはありません。

自分のきびしさに酔って相手への配慮を怠っていないか、自己点検してもいいかもしれませんね。


わたしたちには、相手がまちがった行動をしていると「ちがう」と言ってただしたくなる心理があります。

これを「正したい反射」といいます。

(↓正したい反射についての詳しい解説はこちら)

http://kikukoto.net/2020/10/31/righting_reflex/


自分の身におきかえてかんがえてみてください。

「あなたはまちがっているから直しなさい」

そう言われたらどんなきもちですか?

相手の言い分に納得できればすなおにはなしを聞くかもしれませんが、そうでないならいやなきもちになりますよね。

こんな言いかたをされたら、相手の言い分がただしくても聞く気がうせるかもしれません。


相手がまちがっていても、つよく言って無理に相手を変えようとするのはやめておきましょう。

あなたも相手もいやな思いをするだけです。

相手には失敗から身をもってまなぶ権利があります。

自分で自分の思ったとおりに自己決定して、失敗して生の経験からまなぶ権利があるのです。

自分で自分のことを決めてやってみた経験は、失敗したとしても相手の自信や財産になります。

その貴重な機会を奪わないほうがよいです。


あなたがきびしく対応して相手に気づいてもらおうとしなくても、つたえる必要のあることだけを手渡せば、あとは相手がおのずと相手のタイミングで相手の進むべきほうへ向かいます。

あなたが言い聞かせなくても相手はなんとかなります。

「相手には相手の神さまがいる」ということばがあります。

相手のそばには相手の神さまがいて、そのひとを導くのです。

あなたが無理に相手を変えようとしなくても大丈夫です。



もっともよいアドバイスは、極力求められていないアドバイスをしないことかもしれません。

軽率にアドバイスをしない。

アドバイスをしたいなら、配慮と遠慮を尽くす。

相手を尊重し、相手に敬意をはらい、相手を傷つけないよう気遣ったアドバイスができると素敵ですよね。




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