ある朝目覚めたら
ふと起き上がると、そこはいつもと違う部屋だった。
全てが白の部屋、壁も床も、光沢のある白い家具、白いベッドに白いシーツ。近未来的な、清潔感のある部屋。
「あれ、私って引っ越ししたんだっけ……」とボーッと考えていると、横にいるパートナーらしき人がその思いを察知したのか「うん、そうだよ。いい部屋だよね。」と答えた。けれどもパートナーの顔は靄が掛かったようになっていてはっきり誰かは分からない。よく分からないけれどこの状況をなぜか私は自然に受け入れていた。
よく部屋を見渡してみると窓があり光が差し込んでいる。カーテンはない。さらによく見ると部屋の角をぐるっと囲むように、壁二面分が窓になっている。「ここってすごい大きい窓になってるんだね!」わくわくしてつい嬉しくなって起き上がって外を見てみた。
そこはまるで段々畑のようなベランダがある大型マンションになっており、窓から住人の姿が見えた。
ふと左を見るとベランダでサングラスをかけて水着でビーチチェアに寝そべって日光浴をしている人がいた。ここは?リゾート?
あまりジロジロ見てはいけないような気がしてパッと目を背けた。右に顔を向けると男性がベランダでワイングラスを片手に誰かと談笑をしている。
空を見た。太陽が眩しい。突き抜けるような青。そしてまるで翼のような形の雲。
ああ、こんなに空は青いのか。群青色でもない、水色でもない、でも真っ青な空。こんな空見たことない。空気が澄んでいるのが分かる。
そこで目が覚めた。
現実の朝だ。私はあの青空を思い出していた。
ああ、あんな青空があるなんて。みんなマスクなんてしていない。各々リラックスしてそれぞれの生活を楽しんでいるようだった。あの青空はなんて表現したら良いんだろう。
私は駆け抜けていくような青、と思った。何も疑念もない青。あの空を駆け抜けたい。そう思った。
つづく
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