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シングルマザーの家計。子どもの教育費を助ける制度があります。

 Aさん(40代)は、高校2年生の息子さんと2人暮らし。持病があるため、フルタイムで働くことが難しく、体調のよいときにできる範囲でパートに出ているため、勤労収入は3万5000円前後。現在、生活保護を受けています。
 息子さんの高校進学は公立しか考えていなかったのですが、彼の運動能力を見込んだスポーツ強豪校(私立)から、スポーツ推薦入学の誘いがありました。『かぞくのじかん』(小社発行)で「家計簿」のことを知っていたことから、Aさんは『羽仁もと子案家計簿』をつけ始めました。
 教育費優先で、つましい暮らしながら、役所のケースワーカーから、「意思ある生徒すべてが、安心して教育を受けられるように」との、国と自治体の助成金の制度を教えてもらい、息子さんの希望を叶える目処がたったのです。

受給できる教育資金の助成、支援

 Aさんが頼った「高等学校等修学支援金」は、2010年に国が開始した支援金制度で、世帯年収約910万円未満世帯の生徒が対象です。「高校無償化」といわれるのは、この制度のことを指しています。
「授業料に充てるための就学支援金を支給することにより、高等学校等における教育に係る経済的負担の軽減を図り、もって教育の実質的な機会均等に寄与することを目的としています」。

高校生等への修学支援
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/mushouka/1342674.htm
制度に関するQ&A
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/mushouka/1342600.htm

高校生等奨学給付金」は、「全ての意思ある生徒が安心して教育を受けられるよう、授業料以外の教育費(※)負担を軽減するため、高校生等がいる低所得世帯を対象に支援を行う制度」。
※主に、教科書費、教材費、学用品費、通学用品費、教科外活動費、生徒会費、PTA会費、入学学用品費、修学旅行費等

https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/mushouka/1344089.htm

 上記の制度のほかにも、各地方自治体が支援する私立高等学校へ通うための学費支援制度(特別奨学金補助)などもあります。
「私立高等学校等に通う生徒の保護者の負担軽減を図るため、授業料の負担軽減制度の支援対象拡大や家計急変世帯への支援」を実施しています。

例:東京都「私立高等学校等授業料軽減助成金」
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2021/05/26/19.html
貸与金制度には、「私立・入学支援金貸付制度」「育英資金」「母子福祉資金」「生活福祉資金」などがあります。
東京都の場合
https://www.tcsw.tvac.or.jp/activity/3kanen/H22-24/documents/syougakukin.pdf

奨学金制度には、「あしなが奨学金」「交通遺児育英会奨学金」など、詳しくは、日本学生支援機構のHPを参考にしてください。
https://www.jasso.go.jp/shogakukin/about/index.html

ひとり親家庭への生活面の支援
(野口徳子さんに聞きました)

 ファイナンシャル・プランニング技能士の野口徳子さんに伺いました。
「教育費の支援だけでなく、生活面への支援もあります。安定的な収入は大切ですので、給付金を利用しながら自立に向けた仕事に就くとよいのではないかと思います」とのこと。ただし、ひとり親への公的保障は、離婚と死別によって、異なります。支援を受ける場合、自治体の相談窓口に出向きましょう。各給付にはそれぞれの規定があります。法律相談窓口も利用して、親子が前向きに生活できるようにしたいものです。

児童扶養手当:18歳到達後の3月31日まで支給されます。
 https://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/osirase/100526-1.html

「母子・父子自立支援プログラム策定事業」
 
児童扶養手当受給者に対し、個々のケースに応じた支援メニューを組み合わせた自立支援プログラムを策定し、継続的にフォロー(ハローワークと福祉事務所等とが連携)。

 母子(父子)家庭自立支援給付金:①教育訓練を受講・修了した場合にその経費の60%を支給する「教育訓練給付金」、②資格取得のため、養成機関で修業する場合に、生活の負担軽減のために支給される「高等職業訓練促進給付金」(入学時の負担軽減のため、高等職業訓練修了支援給付金が支給)とがある。
 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000062986.html

居住支援(住宅確保要配慮者円滑入居賃貸住宅)
 https://www.safetynet-jutaku.jp/guest/index.php

・母子父子寡婦福祉資金貸付資金制度:対象は、20歳未満の児童を扶養している配偶者のない女子または男子、寡婦等
https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/law/23.html

・ひとり親家庭等医療費助成:医療機関で保険診療を受けたときに支払う自己負担金の一部または全部を助成する制度。申請は各自治体に。

・ひとり親家庭等日常生活支援事業:修学等や病気などで一時的に生活援助・保育サービスが必要な場合などに、「家庭生活支援員」の派遣等を行う制度。

悩んだときは専門家に相談:養育費や面会交流についての相談は、地方公共団体(市区町村)の窓口に
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00013.html

まわりにいる人も「いつでも助けるから」と声をかけたい

 ひとり親になった生活では、親も子も、こころの問題を乗り越えることが重要です。まわりにいる人は、「いつでも助けるから」と声をかけたいと思います。悩みを声に出して、それを聞いてくれる人がいるだけで、気持ちが救われることがあります。または、困っている方に、「市町村窓口は親切に対応してくれるはず」と話すだけでも、支援となります。誰もが等しく、子育てしやすい暮らしができるよう、声をかけあっていければいいですね。

 現在子育て中の方は、日々の生活に精一杯で、将来のことなど思い及ばないかもしれませんが、それでも子どもの自立とともに親の役割が少なくなり、どのような老後を迎えるかは、誰もがやがて考えなければならないことです。どこで、誰と、何をして生きていきたいか、何に向いているかを、少しずつ考えて、自分の趣味と社会に役立てる活動ができるように、準備していくことも大切です。

 新型コロナウイルスの影響などから共働きであっても収入が減り、教育費に大きな負担がかかる家庭もあります。国や自治体の支援制度をうまく活用して、子どもが望む学生生活を送れるように、自分だけで抱えずこれらの制度を検討、相談をしてみましょう。また、ひとり親になる前でも援助について知っておくとよいのではと、思います。

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