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【独立する前の基礎知識11】退職後の社会保険はどうなるの?

Question
勤めていた会社を退職して独立することにしました。フリーランスになると、年金や健康保険といった社会保険はどのようになるのでしょうか? また退職の際に手続は必要ですか?


Answer
会社に勤めている間は、①厚生年金、②健康保険、③雇用保険、④労災保険の4つの保険が適用されています。退職してフリーランスになると、①は国民年金に、②は国民健康保険などに、それぞれ切り替えなければなりません。一方、③雇用保険と④労災保険は、労働者のための保険なので、経営者である個人事業主は加入できません。

サラリーマンとフリーランスでは、加入する保険の制度が違っています。下の表をみながら、それぞれの保険の意味を押さえておきましょう。

サラリーマンとフリーランスの公的保険の比較

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まずは、年金について説明しましょう。これは、毎月収入の一部を積み立てておき、老後に備えて将来に「貯金」するという公的な仕組みです。自分が払った保険料に応じて、老後にもらえる年金の額が異なります。日本では、公的年金への加入は義務とされています。

会社員は、「厚生年金」という制度に加入します。厚生年金は、もらう給料に比例して支払う保険料が高くなっていきますが、会社が保険料を半分負担してくれるので、本人の負担は軽くなります。言いかえると、本人が負担する保険料の2倍を積み立てることになるので、そのぶん将来の年金受取額が多くなります。

フリーランスになると、「国民年金」に切り替えることになります。支払う保険料は一定額(平成30年度は、月額1万6340円)ですが、全額自己負担となります。会社が負担してくれないぶん、サラリーマンよりも将来の年金受取額が少なくなります。

国民年金だけだと、20歳から60歳になるまで40年間ずっと保険料を払い続けたとしても、将来もらえる年金は月6万5千円程度です(平成30年度の場合)。

フリーランスは退職金もないので、老後の生活費をどう確保するかについて、いまからきちんと考えておく必要があります。

次に、健康保険です。これも年金と同様に、公的な医療保険への加入は義務とされています。健康保険に加入すると「保険証」を発行してもらえて、病気やケガなどで医療費がかかっても、本人はその3割のみ負担すればいい、という制度です。こうした公的な医療保険がないと、高い医療費を本人が全額負担することになるので、気軽に病院に行けなくなってしまいます。

なお、40歳以上の方は、介護保険も適用になり、そのぶん保険料が上乗せされます。

会社員が加入する健康保険は、先程の厚生年金と同様に、会社が保険料を半分負担してくれます。一方、フリーランスが加入する「国民健康保険」(国保といいます)は、「国民年金」と同じく全額自己負担となります。

さらに、自治体が運営する国保(通称「市町村国保」といいます)の保険料は、前年の所得に応じて高くなるので、一定額の国民年金と比べて、負担が大きいと感じる方も多いと思います。

保険料は、お住まいの市区町村によって異なり、世帯単位で計算されるので、退職する前に、市区町村の役所の国保担当窓口で確認するか、各自治体のウェブサイトで試算してみることをお勧めします。

なお、退職後2年間だけですが、現在勤めている会社の健康保険に「任意継続」という形で引き続き加入することもできます。「任意継続」になると、保険料は全額自己負担となりますが、扶養家族がいる方は、国保よりも保険料が安くなるかもしれません。

ただし、退職した次の日(資格喪失日)から20日以内に手続をしないと、「任意継続」ができなくなるので、退職する前に、どちらが得になるか、事前に検討しておきましょう。

以上、ご説明した「国民年金」と「国民健康保険(市町村国保)」は、いずれもお住まいの市区町村の役所が窓口になっています。退職して切り替えるときは、退職した日の翌日から14日以内に手続をしなければならないので、早めに対応しましょう。

次に、雇用保険と労災保険です。この2つは、会社に雇われている労働者のための公的な保険制度で、2つ合わせて「労働保険」といいます。

雇用保険は、失業中の生活を支えるために「失業手当」を支給したり、次の職場を見つけるために求人紹介や教育訓練の場を提供するなど、労働者の雇用を促進するための制度です。

個人事業主であるフリーランスは、会社に雇われている「労働者」ではないため、雇用保険には加入できません。ただし、退職前の会社で雇用保険に加入していた方は、次の仕事を見つけるまでサポートを受けられる場合があります。
詳しくは次回の「独立後、仕事が無ければ失業保険はもらえる?」で説明します。

最後に、労災保険です。これも雇用保険と同じく、会社に雇われている労働者のための保険制度ですが、会社での業務や通勤途中で、病気や事故などの災害にあった場合に保険金が支給されるという制度です。保険料は全額会社が負担しています。
この制度は、会社に勤めている期間に適用されるので、退職してフリーランスになった方には関係ありません。

▼出典
『駆け出しクリエイターのためのお金と独立準備Q&A』
(桑原清幸・玄光社)
キャラクターデザイン=山内庸資


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