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鍵穴の奥に

自分には、生来、モノを大切にする心は備わっている、と、そう思っている。その反面、よくモノを失くしてしまうことも、また事実としてある。

小学生の頃、それは、ある日の放課後か。
友人と数名で遊びに出掛け、夕暮れの町。歩いているうちに僕の家の近くまで来たので、僕たちは「水でも飲もうか」ということで一致した。

その時、

遅くも、鍵の紛失に気づいたのだ。
遅い。うん、気づくのが遅い。

遅いが、

遅いとか早いとかじゃなく、それは今問題になく、そう、もう家に入れないのだ。
これが一番の問題として立ち塞がる。

さあどうしたものか。













あ!




鞄の中に、筆箱があった。

中には、鉛筆が、

鉛筆、







そうだ、

鉛筆で、



ピッキングしよう!





僕という少年が捻り出した、とっておきの作戦だった。

鉛筆を鍵穴に差し込み、ピッキングが成功すれば、家に入れるではないか。

僕たちは、満場一致で、鉛筆ピッキングの決行に頷いた。馬鹿だろ。


でも、もしかしたら、
僕には、ピッキングの才能があるかもわからない。
成功するかも、わからない。

やってみなければ、わからない!😡

僕は、鉛筆を鍵穴に差し込
ポキッ、


って、




聞こえた。





えっ、











え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?え、どうしよ!?





そりゃ折れるだろ。


夕焼けのオレンジが、黒く染まったドアを目掛けてすんと伸び行き、影を落とす、

立ち尽くす、


僕たちは、

















この後、普通に身内を呼んで開けてもらった。

ちょっと押し込んだら、折れた鉛筆の黒鉛も、いとも容易く、鍵穴の奥に追いやれた。
鉛筆ピッキングは、無かったことにされた。

僕の、とっておきの作戦は、鍵穴の奥に消えたのだ。

でも、まずは、喜ばねば。
家に入れたことを喜ばねば。


家に入れたんだもん。



家に、入れたんだもん!😡😡😡



このとき飲んだ水が、僕の人生で一番美味しかった。

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